生前贈与で相続税対策をする方法とは?メリットや制度改正を解説

生前贈与で相続税対策をする方法とは?メリットや制度改正を解説
生前贈与で相続税対策をする方法とは?メリットや制度改正を解説

「生前贈与で相続税対策をしたい。どうすればいいのかな?」

ご自分の財産を子どもなどに受け継がせるにあたっては、できる限り支払う相続税を減らしたいですよね。相続税対策のひとつの方法として、生前贈与を考えている方もいるでしょう。

生前贈与を上手に行うことで、効果的な相続税対策をすることができます。一方で、上手に生前贈与を行わなければ無用なトラブルを招いてしまうこともあります。

また、生前贈与に関する税制度改正も頻繁に行われているため、生前贈与をする前にしっかりと制度を把握しておくことも大切です。

この記事では、相続税対策をしながら生前贈与をする方法や生前贈与に関する制度の改正などについてご説明します。

目次

生前贈与とは

「生前贈与」とは、財産を受け継がせる方が亡くなるより前に財産を子どもなどに贈与することです。生前贈与は、相続開始前に特定の人に特定の財産を受け継がせる目的で行われることもありますが、相続税対策の目的で行われることも多くあります。

これに対して、亡くなった後に法律や遺言に従って遺産を分けることを「相続」といいます。

生前贈与と相続との最も大きな違いは、亡くなる前に財産を受け継がせるか、亡くなった後に財産を受け継がせるかという点にあります。

あなたが亡くなるよりずっと前から継続して生前贈与をしておけば、その後にあなたが亡くなって相続が発生した時に残っている遺産を減らすことができます。相続税は遺産の額に応じてかかるため、あらかじめ遺産を減らしておくことができれば、相続によって受け継ぐ財産にかかる相続税を少なくすることができます。

生前贈与をすると、基本的には贈与を受けた人に対して贈与税がかかります。もっとも、適切な対策をすることで贈与税がかからないようにしたり、贈与税の額を減らしたりすることができます。贈与税ができるだけかからないように生前贈与を行うことで、贈与税を抑えつつ相続税も減らすことが可能となります。

相続税対策の生前贈与をするための2つの制度

生前贈与をするにあたっては、「暦年課税」と「相続時精算課税制度」という2つの制度を選ぶことができます。

それぞれに特徴があり、使える条件も異なります。それぞれの特徴と使える条件を把握して、ご自分にあった制度を活用するようにすることが大切です。

暦年課税

暦年課税とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間につき110万円までの贈与であれば、贈与を受けた者が納めるべき贈与税が非課税になる制度です。この範囲内の贈与であれば、贈与について税務署に申告する必要もありません。

暦年課税は通常の課税制度であるため、適用のために税務署に事前の届出を出すなどの必要は特にありません。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子どもや孫などに生前贈与をするにあたって選べる制度です。

相続時精算課税制度を選ぶと、条件を満たした子どもなどが親などから贈与を受けた時点ではその贈与について贈与税がかかりません。その代わりに、相続時にそれまでに贈与を受けた額を相続財産に加えて計算し、相続税を算出します。

相続時精算課税制度が適用されていると、贈与を受けた額の合計が2,500万円を超えない範囲であれば相続税がかかりません。2,500万円を超える部分については一律20%の税率をかけて相続税が計算されます。

相続時精算課税制度を使うためには、そのことを税務署に届け出ておかなければなりません。

最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出して、相続時精算課税制度を選択することを届け出ます。

届出の手続きは最初だけでよく、一度届け出ることでそれ以降の贈与全てについて相続時精算課税制度が適用されます。

なお、一度相続時精算課税制度を選択するとその後に暦年課税の方式に戻すことはできません。

どちらを選べばいい?

まず、毎年の贈与額が110万円までであることが見込まれる場合には、暦年課税の方式を選ぶとよいでしょう。暦年課税の方式で年110万円までの贈与であれば贈与税も相続税もかかりませんし、暦年課税の方式であれば税務署に届出をしておくなどの手間が省けます。届出の手間が嫌な場合には暦年課税がおすすめです。

また、相続時精算課税制度を活用できる条件にあてはまらない場合も、暦年課税の方式を選ぶことになるでしょう。贈与をする父母が60歳未満であったり贈与を受ける子どもが18歳未満であったりすると、相続時精算課税制度を使うための条件にあてはまりません。

この場合には、暦年課税の方式で生前贈与をするしかありません。

相続時精算課税制度を使える条件にあてはまっており、年間の贈与額が110万円を超えることも珍しくないという場合には、相続時精算課税制度を活用することも視野に入れてよいでしょう。

相続時精算課税制度を選ぶ場合には、税務署に届け出る必要があるなど自分だけでは対応することが難しい部分もあります。また、一度相続時精算課税制度を選ぶと後から暦年課税に戻せないので、本当に相続時精算課税制度を選んでよいのかを見極める必要もあります。制度を活用する前に一度弁護士などの専門家に相談してみるのもひとつの方法です。

ほかにもある!生前贈与の非課税制度

相続時精算課税制度以外にも、生前贈与にあたって使える非課税制度として次のようなものなどがあります。

  • 教育資金の贈与税非課税制度
  • 結婚・子育て資金の贈与税非課税制度
  • 住宅取得等資金の贈与税非課税制度
  • 贈与税の配偶者控除
  • 特定障害者等に対する贈与税非課税制度

これらの制度もあわせて活用することで、より多くの生前贈与を非課税で行うことができ、最終的にはよりたくさん相続税を減らすことができます。

教育資金の贈与税非課税制度

父母や祖父母から教育資金の一括贈与を受け、贈与を受けた者が原則30歳になるまでに教育資金として支払ったお金については、1,500万円までであれば贈与税がかかりません。

結婚・子育て資金の贈与税非課税制度

父母や祖父母から18歳以上50歳未満の子どもや孫が結婚・子育て資金の一括贈与を受け、贈与を受けた者が50歳になるまでに結婚・子育て資金として支払ったお金については、1,000万円までであれば贈与税がかかりません。

住宅取得等資金の贈与税非課税制度

父母や祖父母から住宅の新築などのために資金の贈与を受けた場合に、一定の要件を満たした場合には、一定の限度額までは贈与税がかかりません。

一定の省エネ住宅などは1,000万円まで、特定の条件を満たさないそれ以外の住宅は500万円までであれば贈与税がかからないこととされます。

贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除とは、「おしどり贈与」とも呼ばれ、法律上の婚姻期間が20年以上あり、居住用不動産やその購入資金の贈与を受けた場合に最大2,000万円までが非課税となる制度です。

基礎控除110万円も同時に適用されるので、合計2,110万円までの贈与であれば非課税です。

特定障害者等に対する贈与税非課税制度

特定の条件を満たす障害者に対して、特定障害者扶養信託契約に基づく信託を設定した場合、その信託受益権については最大6,000万円までは贈与税が非課税とされます。

これは、障害のある方に対して親などが財産を残すにあたってできるだけ課税しないで財産を残せるようにし、障害のある方の生活を保障しようという趣旨の制度です。

親亡き後の障害がある方の生活費が心配な方は、この制度が利用できないか弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

相続税対策の生前贈与で得られるメリット

生前贈与をすれば、相続税を減らせることを始めとして、さまざまなメリットがあります。生前贈与をすることで得られるメリットをご紹介します。

メリット1:相続税を減らせる

相続税は相続開始時の遺産の総額に応じて課されます。このため、遺産の総額が少なくなっていればいるほど相続税を減らすことができます。

生前贈与をすれば、あなたが亡くなるよりも前からあなたの財産をあなたの子どもなどに贈与して受け継がせることになります。このため、あなたが亡くなった時点での遺産の総額が、贈与を全くしなかった場合と比べると少なくなっています。これにより、受け継ぐ遺産の額に応じてかかる相続税を減らせるのです。

生前贈与に対しては、全く税金がかからないわけではなく、一定の範囲で贈与を受けた人が贈与税を支払わなくてはなりません。

しかし、一定の範囲であれば贈与税を支払わなくても済むため、そのような贈与を毎年積み重ねるなどの方法で贈与税を減らすこともできます。

これにより、支払う相続税を減らしつつ贈与税も最低限に抑えられ、結果的に節税につなげることができます。

メリット2:どの人にどの財産を残すか選べる

生前贈与では、どの人にどの財産を残すか自分で選ぶことが可能です。このため、特定の財産を特定の人に対して確実に残したいと考えている場合には、生前贈与がおすすめです。

相続の場合でも、遺言を残すことでどの人にどの財産を残すのかを指定することはできます。しかし、遺言の内容に不満がある相続人がいた場合には、遺言の有効性などをめぐってトラブルが発生する可能性もあります。

また、相続人全員が合意すれば遺言と異なる内容の遺産分割をすることも許されているので、遺言を残せば必ず思い通りに財産を受け継がせることができるわけではありません。

生前贈与であれば、ご自身が存命のうちに特定の人に対して財産を贈与して受け継がせます。このため、どのような意図で特定の人に特定の財産を受け継がせるのかを十分に説明して関係者に分かってもらえることも期待できます。

また、贈与は財産を贈る側と贈られる側がそれぞれ納得して合意の上で行うものなので、財産を贈るあなたが納得しないような内容であれば贈与を取りやめることもできます。

メリット3:相続時のトラブルを予防できる

生前贈与には、生前にあなたの意向をしっかりと伝えて、のちにあなたが亡くなった後にあなたの相続人の間で相続トラブルが起こることをできるだけ予防できる効果があります。

相続の場合でも、遺言によってあなたの意向を伝える方法があります。しかし、相続人が遺言の解釈でもめてしまったり遺言の内容に納得できないなどとしてトラブルが発生してしまったりすることも少なくありません。

生前贈与では、あなたが生きているうちに相続人となる予定の者に対してあなたの意向を直接伝えたうえで財産を受け継がせることができます。

これにより、ただ遺言を残すだけの場合よりもいっそう財産の承継に関して誤解やもめごとが発生する可能性が低くなります。

また、仮に生前贈与の内容について相続人となる予定の者がもめたとしても、あなたが直接の間に入って対応することができるので財産をめぐるトラブルが大きくなりにくいともいえます。

相続税対策の生前贈与でよくあるトラブル

相続税対策のために生前贈与をしようとしたものの、上手に生前贈与を行わなければ思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。

せっかく生前贈与で相続税を減らそうとしているのに、トラブルに対応するために余計なお金を使うことになってしまっては何の意味もなくなってしまいますよね。生前贈与でありがちなトラブルをしっかり把握して、うまく回避するようにしましょう。

トラブル1:「名義預金」とみなされて相続税が課される

「名義預金」とは、贈与をする人(親など)が贈与を受ける人(子どもなど)の名義の預金口座を開設し、その預金口座にお金を預け入れる方法で財産の贈与をする場合の預金のことをいいます。

名義預金では贈与を受ける人がその預金の存在を知らず、または具体的にいくらが預け入れられているかを知らず、お互いの贈与の合意がないものとして贈与が成立しないと認定されてしまうことがあります。

ある預金が名義預金とみなされ、贈与が成立していないとされた場合には、その預金は贈与を受ける人の財産ではなく贈与をする人の財産として扱われます。その結果、贈与をする人が亡くなった時に、その預金が遺産の一部として扱われて相続税の対象となるのです。

財産を贈るつもりで名義預金の口座にお金を預け入れていた贈与者にとっては生前贈与をしていたつもりなのに、結果的にそれが実現できていなかったことになります。

これにより、贈与者が想定していなかった相続税がかかることにもなりかねません。

名義預金とみなされないためには、確実に贈与を成立させることが必要です。

まずは、贈与を受ける人に預金口座の存在をしっかり知らせておくことが大切です。

また、贈与をするごとに、誰が誰に対していくらを預金口座に預け入れて贈与するのかなどのことをはっきりと記載した贈与契約書を作成しておくことも有効です。これにより、間違いなくその都度贈与が成立していたことを証明することも可能となります。

トラブル2:「定期贈与」と認定されて毎年の贈与とみなされなくなる

暦年課税の方式を選択した場合などで問題となり得るのが「定期贈与」です。

「定期贈与」とは、あらかじめ一定の期間をかけて決まった額を分割して定期的に贈与することいいます。定期贈与とみなされると、年ごとに分割した贈与額について毎年贈与税が計算されるのではなく、分割して贈与をするその総額に対して贈与税が計算されます。これにより、想定よりも贈与税の額が高くなってしまう可能性があります。

例えば、1,500万円を15年にわたって毎年100万円ずつ贈与するとします。暦年課税であれば毎年110万円の枠内であれば非課税のため、15年にかけて100万円ずつ贈与すれば全額非課税で贈与できると思うかもしれません。

しかし、このような計画的な贈与は定期贈与とみなされるおそれがあります。

定期贈与とみなされると、総額である1,500万円を一括で贈与したのと同じ贈与税が課せられます。これにより、予期しない贈与税の負担が発生することがあるのです。

定期贈与とみなされないためには、毎年贈与の契約を結ぶことが大切です。年ごとに贈与額を変えて決めることとし、かつ、その毎年の贈与ごとに贈与契約書を作成しておくようにしましょう。このようにすれば、事前に一括して贈与額を決めたものを分割して渡しているだけだとはみなされづらくなるため、定期贈与と認定されるリスクを低減できます。

トラブル3:他の相続人ともめてしまう

あなたに子どもなどの相続人が1人しかいなければ生前贈与でもめてしまう可能性は低いですが、相続人が複数いる場合には生前贈与でもめてしまわないように注意が必要です。

もし生前贈与を特定の相続人にかたよって行ってしまえば、他の相続人は本来の自分の取り分よりも少ない財産しか受け継ぐことができないことに不満を抱くかもしれません。そうなれば、あなたが亡くなった後、生前贈与された財産や遺産の分け方をめぐって相続人の間でトラブルが発生するリスクもあります。

他の相続人ともめることがないようにするには、全ての相続人が納得できる形で生前贈与を進めることが大切です。特定の相続人に過度にかたよって生前贈与をしないようにしたり、もし特定の相続人に多く生前贈与をするのであれば他の相続人の納得と了解を得ておくようにしたりしましょう。

生前贈与はあくまでも節税のために行うものです。それが原因で相続人間の相続トラブルが発生してしまっては、トラブル対応の費用や手間などで節税効果以上のマイナスになってしまいます。

生前贈与をするにあたっては、生前贈与を受ける相続人が他の相続人ともめてしまわないように十分に配慮するようにしましょう。

トラブル4:老後の生活費や介護費用が足りなくなる

人は誰しも亡くなりますが、いつ亡くなるかを知ることはできません。場合によっては、想定以上に長生きすることもあります。

あなたが70歳頃に亡くなるつもりで財産を生前贈与していても、実際には90歳頃まで長生きし、亡くなる前の数年間は介護が必要になる可能性もあります。この場合に、70歳の頃までにあなたの財産の多くを生前贈与してしまっていれば、あなたがそれ以降を生活するための老後の生活費や介護費用が足りなくなってしまう可能性もあります。

こうなってしまうと、子どもや孫のために生前贈与をして節税をしたつもりが、かえって自己資金が足りなくなってしまって子どもや孫に生活費や介護費用を頼ることにもなりかねません。

生前贈与をするにあたっては、老後の生活設計とあわせて行うことが大切です。

特に、最近は医療の進歩などにより長生きしやすくなっているので、長生きした場合のことも考えつつ生前贈与をするようにしましょう。

トラブル5:亡くなる直前の駆け込み生前贈与に贈与税ではなく相続税が課せられる

亡くなる直前に駆け込みで生前贈与をしても、その贈与については持ち戻し(贈与した財産を遺産に加算して相続税を課すこと)が行われて贈与税ではなく相続税の課税対象とされます。これは、駆け込み生前贈与での相続税逃れを防ぐための制度です。

これまでは亡くなった日以前3年間の贈与が相続税の課税対象とされていましたが、2024年1月1日以降の贈与については亡くなった日以前7年間の贈与が相続税の課税対象とされることとなり、持ち戻しの対象が広がりました。

持ち戻しにより生前贈与の節税効果が得られなくなる時期が広がったため、これまで以上により早い時期から生前贈与による相続税対策を始める必要があります。

生前贈与で相続税対策をしたいと思ったら、すぐに弁護士などの専門家に相談して生前贈与を具体的に開始するようにしましょう。

相続税対策の生前贈与を成功させるために相談できる専門家

せっかく相続税対策のために生前贈与を行おうとしているのに、失敗してしまってうまく節税できなかったり逆にたくさんのお金を払うことになってしまったりすれば、それはとても悲しいことですよね。

相続税対策の生前贈与を上手に成功させるためには、生前贈与をどのように進めていけばいいのか、あらかじめ専門家に相談することもおすすめです。

相続税対策の生前贈与を上手に成功させるために相談できる専門家についてご紹介します。

税理士

税理士は、税に特化した専門家です。相続税や贈与税を含めた各種の税について相談することができるほか、税の申告手続きも代行してくれます。

税理士は、あなたのために税の相談に乗ってくれるので、一般的な税の制度しか教えてくれない税務署とは異なり個別具体的な事情に応じた相続税対策や節税方法も教えてくれます。

また、税理士は弁護士よりは比較的安い費用で対応してくれることも多いので、費用を節約したい方は税理士を検討するのもよいでしょう。

弁護士

弁護士は、税法も含めたすべての法律の専門家です。税に関する知識はもちろん、相続の法制度などにも詳しいため、税だけでなく相続全般について相談したいときには弁護士であればより充実した回答をくれる可能性があります。

弁護士も、税理士と同様に相続税対策や節税方法についてアドバイスしてくれます。細かな税の知識については税理士のほうが詳しいこともありますが、弁護士は相続の法制度全体を把握しており、必要に応じて税理士と連携して対応しつつ相続税対策に関するアドバイスを行います。

税の知識が豊富な税理士と連携しつつ弁護士の相続を含めた各種法的専門知識も活かしてアドバイスをしてくれるので、相続税対策のために最適な方法を得ることができます。

税理士よりも弁護士を選んだほうがいい場合とは?

税の専門家といえば税理士が思い浮かぶため、相続税対策の生前贈与を相談するならまずは税理士と考えるかもしれません。

しかし、税理士よりも弁護士を選んだほうがいい場合があります。

たとえば、生前贈与にあたって発生するかもしれないトラブルを予防したいと思っている場合や、すでに生前贈与をめぐるトラブルが発生しつつある場合です。

弁護士はトラブル解決の専門家なので、トラブルを予防したりすでに発生しているトラブルを大きくせずに解決したりすることが得意です。これに対して、税理士はトラブル対応をすることはできません。

少しでもトラブルの予兆がある場合などには、税理士ではなく弁護士に相談・依頼するようにしましょう。

税務署は生前贈与の相談に乗ってくれる?

税に関する相談といえば、税務署が思い浮かぶ方もいるでしょう。たしかに、税務署は税に関する一般的な制度について無料で相談に乗ってくれます。

しかし、相続税対策の生前贈与について相談するのであれば、税務署はあまり適切な相談先ではありません。

税務署は、税を徴収する立場の役所であるため、節税のための具体的な方法について丁寧に教えてくれることはありません。また、税務署がアドバイスしてくれるのは税に関する一般的な制度までであり、あなた個人の個別的な事情に即した情報を教えてくれることは基本的にはありません。

相続税対策の生前贈与について相談するのであれば、税務署ではなく税理士や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

生前贈与に関する2023年の制度改正

2023年の税制度改正により、2024年以降の生前贈与に関する税制が新しくなりました。2024年以降に適用される生前贈与に関する税制度について解説します。

生前贈与の持ち戻し期間が7年間に延長される

生前贈与の持ち戻しとは、被相続人が亡くなった時までに相続人に生前贈与されていた財産について、一定期間まで遡ったものを相続財産に加算して相続税を課すものをいいます。

これまでは、亡くなった日より前の3年間の生前贈与が持ち戻しの対象とされていました。

しかし、2023年の改正により、2024年1月1日以降に受けた生前贈与については亡くなった日より前の7年間の生前贈与が持ち戻しの対象とされ、対象範囲が拡大されます。

なお、延長した4年間については、その間に受けた生前贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算されない扱いとされます。

このような持ち戻し期間の拡大により、今まで以上に相続直前の駆け込みでの生前贈与が相続税軽減につながらないこととなります。生前贈与は、相続開始の7年以上前から計画的に準備して行うことが大切です。生前贈与で相続税の負担軽減を考えている方は、なるべく早く弁護士などの専門家に相談して相続税対策を始めるとよいでしょう。

相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設される

これまでは相続時精算課税制度の下では暦年課税のような基礎控除はありませんでした。

しかし、2023年の税制度改正により、2024年1月1日以降の贈与については相続時精算課税制度の下でも毎年110万円以下の贈与については基礎控除の対象とされ、この部分については非課税とされることとなりました。

これまでは、相続時精算課税制度の下では課税の先送りが可能となるものの暦年課税のような年110万円の基礎控除がなかったため、その点の節税効果が少なく弱点とされていました。

しかし、2024年1月1日以降の贈与については相続時精算課税制度を選択したとしても年110万円までの部分は非課税となるため、暦年課税と比べても納める税額を抑えられるケースが増えるものと考えられます。

まとめ:相続税対策の生前贈与を上手に行なって相続税を減らそう

相続税対策の生前贈与の方法には、暦年課税と相続時精算課税制度の2種類の方式があります。相続時精算課税制度は誰でも使えるわけではないものの、2023年の税制度改正により節税できる幅が広がりました。

また、相続時精算課税制度以外の非課税制度をあわせて活用することも有効です。

あなたのケースに合った生前贈与の方法を選ぶことで、最大限の節税効果を得られるようにしましょう。適切な方法で生前贈与を行えば、相続税対策も上手に行えます。

生前贈与で相続税対策をするには、弁護士などの専門家に相談することが重要です。専門家に相談すれば、あなたのケースに最も合った生前贈与の方法を提案してくれます。

生前贈与で相続税対策をしようと思ったら、なるべく早く弁護士などに相談して生前贈与を始めるようにしましょう。

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