借地権も相続できる!相続手続きの流れやよくあるトラブルを解説

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「親が亡くなったが遺産の中に借地権があるらしい。そもそも借地権は相続できるの?相続するにあたって必要な手続きは?」

例えば、あなたの親が亡くなった場合、その持ち家が建っていた土地上に「借地権」が設定されていることがあります。

故人が借地権を持っていた場合には、借地権も遺産の中に含まれ、相続の対象となります。

借地権を相続するにあたっては、地主の許可を得なければならないケースとそうでないケースがあります。また、借地権の相続に際してよくあるトラブルにも注意しておく必要があります。

この記事では、借地権の相続について、相続手続きの流れやよくあるトラブルなどを解説しています。この記事を読めば、相続財産の中に借地権があった場合でも適切に借地権を取り扱うことができるようになります。

借地権とは

「借地権」とは、単に土地を借りる権利というだけの意味ではありません。

ここからは、借地権の意味や借地権の種類についてご説明します。

借地権と土地の賃借権との違い

「借地権」とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことをいいます。例えば、自分の家を建てようという場合には、土地を購入して所有権を得るパターンのほか、土地を借りて借地権を得るパターンもあります。

土地上に建物を所有する目的で土地を借りた場合の権利のことを「借地権」といい、建物所有目的以外の目的(例えば、駐車場にしたり畑にしたりする目的など)で土地を借りた場合にはその権利を「借地権」とは呼びません(土地の賃借権などといいます)。

借地権は、借地借家法といった特別な法律でルールが定められており、単なる土地の賃借権とは異なるルールが適用されます。

借地権の種類

借地権には、次のようにいくつかの種類があります。

  • 普通借地権
  • 旧借地権
  • 一般定期借地権

通常、単に「借地権」という場合には、「普通借地権」のことを指します。普通借地権は、借地借家法という法律に基づく権利であり、契約期間の更新をすることができるなどの特徴があります。

現行の借地借家法は1992年8月から施行されたものであり、それ以前の借地法に基づいて設定された権利が「旧借地権」です。法律が変わっても、以前から旧借地権の契約を締結していたのであれば、旧借地権が存続することとされています。旧借地権と現行の借地権は、存続期間に関するルールが異なるなどの違いがあります。

「一般定期借地権」とは、あらかじめ権利の存続期間を定めておき、期間経過により契約関係が終了するタイプの借地権です。一般定期借地権は、普通借地権と異なり契約の更新をすることができないことが特徴で、契約終了にあたっては土地を更地に戻すなどしたうえで返さなければなりません。相続をして代々土地や建物を受け継いでいくという目的には適さない権利といえます。

借地権も相続の対象になる

「借地権は他人の土地を借りている権利だから相続で受け継ぐことができるのかな?」と疑問に思われるかもしれません。

相続では、被相続人の全ての権利義務を相続人が受け継ぐので、権利の一つである借地権も当然に相続することができます。

もっとも、ケースに応じて地主(土地の貸主)の許可を得る必要があります。ここからは、地主の許可の要否などについてご説明します。

借地権の相続に地主の許可は不要

単に相続人が借地権を相続するだけであれば、そのこと自体について地主の許可を得る必要はありません。土地の賃貸借契約を結び直す必要もありません。

借地権を相続したことについて、承諾料や名義変更手数料のようなお金を地主に支払う必要もありません。

地主に対しては、相続によって借地権を取得したことを知らせるだけでかまいません。

借地権の遺贈による相続は地主の許可が必要

被相続人が遺言を遺しており、法定相続人以外の第三者に借地権を遺贈するケースがあります。例えば、故人が生前非常に親しくしていた友人に遺言で借地権を遺贈する場合などです。

このような場合には、地主の許可が必要です。なぜなら、遺贈を受けた第三者は法定相続人としての立場で借地権を取得したのではなく第三者としての立場で借地権を譲渡されたのと同様であり、貸主にとってみれば契約当初には想定していなかった人が借主になってしまうからです。

許可の際に地主から求められた場合には、承諾料として一定のお金を支払わなければなりません。

承諾料の相場は、借地権の価格の10%程度です。もっとも、土地を貸しに出している事情は個別のケースで大きく異なるため、あくまでも相場を参考にしつつ最終的に支払う金額を合意することとなります。

承諾料に折り合いがつかないなど、地主の許可が得られなかった場合には、裁判所に対して借地権譲渡の承諾に代わる許可を求める申立てをすることができます。この場合には、裁判所が最終的に譲渡を認めるかどうかを判断します。

相続した借地権の売却は地主の許可が必要

相続した借地権は、売却することもできます。

もっとも、借地権を売却するには地主の許可を得なければなりません。これも遺贈の場合と同様で、地主の許可がなければ貸主にとっては予想外の人が借主になってしまいかねないからです。

地主の許可を得て売却する場合でも、許可に際しては地主に承諾料として一定のお金(借地権価格の10%程度が相場)を支払う必要があります。

もし地主の許可を得ないまま勝手に売却してしまうと、契約違反として地主の側から契約を解除される可能性もあります。

相続後の建て替えは契約条項に注意

借地権を土地上の建物と合わせて相続した場合、土地上の建物がすでに古くなっていることも多くあります。相続をきっかけに建物の建て替えをしようと考える方もいるでしょう。

借地権上の建物を建て替える場合には、当初の契約内容をよく確認することが大切です。契約上、借地権上の建物の建て替えを制限する条項が一切なければ、自由に借地権上の建物を建て替えてもかまいません。

これに対し、契約上、借地権上の建物の建て替えを制限する条項があった場合には、その取り決めに従わなければなりません。増改築(建て替えを含む)をするには地主の許可を得なければならないと取り決めているケースが多くあります。

地主の許可が得られない場合には、裁判所に承諾に代わる許可を求める申立てをすることができます。裁判所の許可が得られれば、建て替えをすることができます。

建て替えの許可を得るためには、地主に承諾料を支払うのが一般的です。承諾料の相場は借地権価格の5%程度ですが、個別の事情を考慮して最終的に決定されます。

借地権の相続手続きの流れ

遺産の中に借地権があった場合の相続手続きの流れについてご説明します。

借地上の建物の名義変更を行う

まずは、借地上の建物の名義変更を行いましょう。

相続人の間で遺産分割協議を行い、建物を取得する相続人が誰か決まったら、建物の名義をその相続人の名義に変更します。このことを「相続登記」といいます。

相続登記は、2024年4月以降は義務化され、相続開始から3年以内に相続登記をしなければ10万円以下の過料が課されることがあります。また、相続登記をしないままでいると、時が経つにつれて誰が建物の実際の所有者なのかが分からなくなるなどさまざまなデメリットがあります。

相続登記には必要な書類が多くあり、書類を集めるのが大変だったり正確に書類を提出しなければ登記が完了しなかったりするなど、登記手続きに慣れていない人にとっては難しい面があります。相続登記が難しいなと少しでも思ったら、弁護士や司法書士といった専門家に相談・依頼するようにしましょう。

相続によって借地権を取得したことを地主に連絡する

相続が発生したら、相続が発生したことについて地主に連絡しておくようにしましょう。これは、借地上の建物の名義変更と同時並行で行うとよいでしょう。

また、遺産分割協議が成立して相続人のうち誰が借地権を取得したのかがはっきりしたら、そのことも地主に伝えるようにしましょう。

ここまででもご説明したとおり、相続によって借地権を取得することそのものについて地主の許可は必要ありません。しかし、地主の立場に立ってみれば、自分の土地を借りている人が亡くなったことや借地権の権利者が別の人になったということはしっかりと把握しておきたいはずです。今後貸主として付き合っていくことになる地主との間での無用なトラブルを避けるためにも、地主にはしっかりと相続の状況を報告するようにするとよいでしょう。

借地権についても相続税を納める

相続税は、相続の開始を知った日から10か月以内に申告・納付しなければなりません。借地権もほかの財産と同様、相続税の課税対象となります。ほかの財産と合わせて相続税を計算し、申告・納付するようにしましょう。

普通借地権の場合には、相続税評価額は次の式によって計算されます。

  • 普通借地権の相続税評価額=自用地評価額×借地権割合

自用地評価額は自分だけが利用できる土地の評価額であり、借地権割合は路線価に応じるなどして算出されます。

具体的にどのように計算すればいいのかについては、税の専門家でなければ難しく、素人が計算してみても誤っているということも多くあります。

借地権が受け継ぐ遺産の中にあり、相続税の申告・納付をしなければならない場合には、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

借地権の相続で起こりやすいトラブル

借地権について相続が発生した場合、地主・相続人双方の知識不足などが原因でトラブルになってしまうことがあります。

借地権の相続で起こりやすいトラブルについてご紹介します。

名義変更や承諾の手数料を要求される

相続によって相続人が借地権を受け継いだ場合には、そのこと自体に対しては地主の許可は必要ありません。また、地主に承諾料などのお金を支払う必要もありません。

しかし、それにもかかわらず地主が名義変更の手数料や承諾料などとしてお金を要求してくることがあります。

場合によっては地主がルールを十分に把握しておらず、許可や承諾料の必要がないというルールを説明すれば分かってくれるかもしれません。しかし、中には説明しても「地主としては被相続人に土地を貸したのであって相続人に貸したわけではない」などとして承諾料を要求してくることがあります。

たしかに、法律上のルールとして承諾料を支払う義務があるわけではありません。しかし、貸主との関係を今後も円満に進めていきたいというのであれば、払える額であれば支払っておくほうがトラブルに発展せずに済むという考え方もできます。要求されている承諾料の額にもよりますが、常識的な範囲内の額であれば法律上の義務の有無にかかわらず支払ってしまってトラブルを回避するということも賢い選択の一つでしょう。

立退きを要求される

借地権を相続によって受け継ぐにあたって地主の許可は不要であり、相続によって借地権を受け継いだ相続人は土地から立ち退く義務がありません。それにもかかわらず、地主に立退きを要求されることがあります。

この場合には、まず地主に対し相続によって借地権を受け継いだので土地を利用する権利があることを説明しましょう。

話し合いによっても地主が納得してくれず、立退きを要求され続けるようであれば、弁護士に相談してトラブルを解決することも検討してみてください。

地代の値上げを要求される

相続によって土地の利用者が変わったことをきっかけに、地代の値上げを要求されることがあります。

原則として、相続によって借地権を受け継いだからといって、常に地代の値上げに応じなければならないわけではありません。

もっとも、中には何十年も昔に土地を借り始めてその時の地代のまま変わっておらず、周辺の賃料相場と比べても極端に安い地代になってしまっているなど、地代の値上げにも相応の理由があるケースがあります。

このような場合には、周辺の賃料相場なども参考にしつつ、どの程度までなら地代の値上げに応じてもいいのか考えてみるとよいでしょう。全く応じないとなるとトラブルに発展しやすくなりますが、根拠を示してこの程度までなら応じてもよいと提案するとうまく合意できる可能性が高まります。

地代の値上げをめぐってどうしても折り合いがつかずトラブルになるようであれば、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

建物の売却を許可してもらえない

借地権と土地上の建物を相続したものの、自分では住まずに借地権と合わせて建物を売却したいというケースがあります。

借地権や土地上の建物を第三者に売却するには、地主の許可が必要です。地主との間で承諾料の額も含めて話し合い、許可を得るようにしましょう。

承諾料の額や許可について話し合いを重ねてもどうしても折り合いがつかないという場合には、裁判所の手続きを通して許可を得ることもできます。

裁判所の手続きを自分だけで行うことは難しいため、弁護士に相談・依頼するとよいでしょう。

建物の建て替えを許可してもらえない

相続によって受け継いだ借地上の建物が古く建て替えをしたいというケースで、当初の契約に増改築や建て替えには地主の許可が必要とされており、地主が立替えの許可を出してくれないということがあります。

契約の中で地主の許可を必要とする条項がある以上は、承諾料を支払うなどして許可を得なければなりません。支払う承諾料を上げるなどの対応ができるのであれば、より高い承諾料を提示して許可を求めてみましょう。

どうしても話し合いでは折り合いがつかない場合には、裁判所の手続きを通して許可を得ることもできます。この場合にも、弁護士に相談・依頼したうえで手続きを進めるとよいでしょう。

まとめ:借地権は相続できるがトラブルに巻き込まれないように注意

借地権はほかの財産権と同様に相続で受け継ぐことのできる権利です。

借地権を受け継ぐにあたっては地主の許可や承諾料の支払いなどは必要がありませんが、トラブル予防のため地主に対して相続の状況や誰が借地権を受け継ぐことになったのかなどについてしっかりと連絡しておくことが大切です。

借地権は、売却など一定の場合には地主の許可が必要です。また、一定額の承諾料を支払うことも必要になります。

借地権をめぐっては、売却などに際して地主が許可してくれない、承諾料の額について折り合わないなどのトラブルがあり、どうしても話し合いで解決しない場合には裁判所を通して許可を得るという方法もあります。

借地権をめぐってトラブルになったら、すぐに弁護士に相談・依頼するようにしましょう。弁護士であれば法律のルールを十分に理解しているため、地主に対して適切な提案をすることができたり裁判所の手続きも代わりに進めてくれたりするなど、あなたの助けになってくれます。

弁護士の力を借りて借地権をめぐるトラブルを解決し、受け継いだ借地権を上手に活用していきましょう。

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