「親が亡くなった後の手続きについて詳しく知りたい」
親が亡くなると、行わなければならない手続きがとてもたくさんあります。
親の死亡後の手続きは、やるべき内容や期限をしっかりと押さえたうえで、順番にこなしていくことが重要です。
この記事では、親が亡くなった後の手続きについて詳しく解説しています。
この記事を読むことで、親が亡くなった後にするべき手続きの内容や期限を詳しく把握できます。
目次
親が亡くなった直後に行う手続き(死亡当日〜7日目)
親が亡くなった直後に行う手続きには、次のようなものがあります。
これらの手続きはいずれも死亡当日〜7日目に行うべきものであり、死亡後の手続きとしては最初にしなければならないものです。
2.死亡届の提出(死亡後7日以内)
3.火葬許可証の取得(死亡届提出時)
4.葬儀社への連絡と葬儀の手配(できるだけ早く)
5.近親者や関係者への連絡(できるだけ早く)
1.死亡診断書または死体検案書の取得
まずは死亡当日に、死亡診断書または死体検案書を取得します。
死亡診断書と死体検案書の違いは、亡くなった原因にあります。
死亡診断書は、医師が生前に診療していたけがや病気に関連して亡くなった場合に作成され、死体検案書はそれ以外の場合に作成されます。
死体検案書が作成される場合とは、生前に亡くなった原因となるけがや病気について医師の診療を受けていなかったケースや、亡くなった状態で発見されて死因が分からない場合などです。
死亡診断書も死体検案書も、法律上の効果の違いはなく、医師が亡くなった原因に応じてどちらを作成するかを判断します。
まずは死亡診断書・死体検案書を取得することが、死亡後の手続きの第一歩となります。
2.死亡届の提出
死亡届の提出により、亡くなったことが役所に法的に確認され、戸籍上に亡くなったことが記載されたり住民票が抹消されたりするなどの処理がなされます。
死亡届は、死亡診断書・死体検案書とA3用紙で一体となっています。A3用紙の右側が死亡診断書・死体検案書であり、左側が死亡届です。
死亡届は、親族や同居者、後見人などが作成するものであり、亡くなった事実を知ってから7日以内に提出する必要があります。
ただし、国外で亡くなった場合には亡くなった事実を知ってから3か月以内が提出期限です。
死亡届には、次のことを記入します。
□氏名・生年月日
□死亡したとき
□死亡したところ
□住所
□本籍
□死亡したときの主な仕事
□死亡した人の職業・産業
□届出人
死亡届を提出する際に注意するべきこととして、必ずコピーを複数枚取っておくということがあります。
一方、死亡後の各種手続き(生命保険金の受け取りなど)には死亡届(のコピー)が必要となることがあります。
死亡診断書の再発行には時間とお金がかかってしまいます。役所への提出前に死亡届のコピーを取っておけば、再発行の負担をなくすことができます。
なお、死亡届の提出は、葬儀を依頼した葬儀社が代わりに行ってくれることがあります。葬儀社が決まっているのであれば、死亡届の提出手続について尋ねてみるようにしましょう。
3.火葬許可証の取得
火葬許可証がなければ、火葬を行うことができません。
火葬許可証は、死亡届を提出した際に火葬許可申請書を提出することで、その場で発行されます。
火葬ではなく土葬をすることもでき、土葬をする際の許可証を埋葬許可証といいます。埋葬許可証の取得方法は火葬許可証と同様です。
火葬許可証の取得は、死亡届の提出と合わせて葬儀社が行ってくれることがあります。死亡届とあわせて葬儀社に尋ねてみるようにしましょう。
4.葬儀社への連絡と葬儀の手配
葬儀社への連絡と葬儀の手配は、親が亡くなった後すみやかに行うようにしましょう。
葬儀社に連絡すれば葬儀の手配はできるだけ迅速に行ってくれますが、どのように葬儀を進めるのか打合せは必要となりますし、葬儀社に任せれば死亡届や火葬許可証の手続きを代行してくれることもあります。葬儀社への連絡は親が死亡した後すぐに行うべきです。
葬儀社は、親が亡くなった後から探し始めると、あわただしく十分に検討もできないため、できる限り親が亡くなる前からどこに依頼するか決めておくことが望ましいです。
たとえ親が健在であったとしても、できれば生前に話し合うなどして、健在のうちから葬儀社を選んでおくようにしましょう。
また、この際には、どのような形でどのような規模・費用感で葬儀を行うのかも話し合っておくことが望ましいです。親が亡くなってから葬儀の規模や費用感を一から考えるとなると、とても負担が大きくなります。親の生前に相続準備の一環として、葬儀社、葬儀の規模や内容、かける費用についてもある程度決めておくと、スムーズにトラブルなく手続きを進めることができます。
5.近親者や関係者への連絡
親が亡くなったら、すぐに近親者や関係者に連絡しましょう。
親族、親が住んでいた物件の管理会社、親の勤務先、親の友人などが連絡先として考えられます。
葬儀に参列してもらう親族や友人などは連絡先としてすぐ思い浮かぶかもしれませんが、親が住んでいた物件の管理会社や親の勤務先などにもなるべく早く連絡を入れておくことで、不要な混乱を避けることができます。
親の葬儀後すぐに行わなければならない公的手続(7日目〜14日目)
親の葬儀が終わった後にもすぐに行うべき手続きがあります。
すぐに行わなければならない公的手続として、次のようなものがあります。
2.健康保険の資格喪失届の提出(国民健康保険:死亡後14日以内、健康保険:死亡後5日以内)
3.介護保険資格喪失届の提出(死亡後14日以内)
4.介護保険資格喪失届の提出(死亡後14日以内)
5.住民票の世帯主変更届(死亡後14日以内)
1.年金受給停止の手続き
親が年金を受給していた場合には、亡くなったことで年金を受給する権利がなくなります。
この場合には、年金受給停止の手続きを行う必要があります。役所に死亡届を提出しただけでは自動的に年金受給停止の手続きが行われないので、別途手続きを行う必要があり、注意が必要です。
年金受給停止の手続きは、次の書類を年金事務所や年金相談センターに提出します。
□亡くなったことを証明する書類として、住民票の除票、戸籍抄本、死亡診断書・死体検案書のコピーのいずれか
受給権者死亡届(報告書)の書式は、日本年金機構のウェブサイトに書式があるほか、年金事務所でも受け取れます。どこに何を提出すればいいのか分からなければ、最寄りの年金事務所や年金相談センターに問い合わせるようにしましょう。
年金受給停止手続の期限は、国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内と非常に短い期間に設定されています。親が亡くなってから間もない時期であり、葬儀などさまざまな手続きであわただしいところですが、葬儀が終わったらすぐに手続きを行うことが大切です。
親が亡くなったことにより年金を受け取る権利が亡くなったのにそのことを届け出ずに年金を受け取り続けていると、不正受給となってしまいます。受け取る権利がないのに受け取った年金は返還しなければなりません。
また、故意に長期間にわたって死亡の事実を隠して年金を受け取り続けていると、詐欺罪などの犯罪が成立し、場合によっては検挙される可能性もあります。親が亡くなった後も死亡の事実を隠して年金を受け取りつづけることは絶対にしないようにしましょう。
なお、亡くなった月分までの年金は、手続きをすれば「未支給年金」として遺族が受け取ることができます。
2.健康保険の資格喪失届の提出
親がなくなると、死亡により健康保険の資格を失ったことを届け出なければなりません。
国民健康保険に加入している場合には、14日以内に資格喪失届を市区町村の役所の窓口に提出して、保険証の返還などの手続きを行います。
健康保険に加入している場合(会社員などとして雇用されて社会保険に加入している場合)には、勤務先に連絡すれば勤務先が5日以内に届け出を行います。この場合には、亡くなった方の遺族が役所で手続きを行う必要はありません。
いずれの場合も、期限を過ぎても手続きをすることはできるので、なるべく早く手続きを行うようにしましょう。
3.介護保険資格喪失届の提出
亡くなった方が介護保険の被保険者であった場合には、介護保険の資格喪失の手続きが必要です。
具体的には、次のような方が亡くなった場合に死亡後14日以内を期限として手続きを行う必要があります。
□要介護・要支援認定を受けていた40歳以上65歳未満の方
亡くなった方が40歳以上65歳未満の方であっても、要介護・要支援認定を受けていなければ、介護保険の資格喪失の手続きは不要です。
4.住民票の世帯主変更届
亡くなった方が住民票の世帯主であった場合には、死亡後14日以内に新しい世帯主へと変更するための手続きを行う必要があります。
もっとも、次の場合には世帯主変更の手続きを行う必要はありません。
□亡くなった方以外の世帯の構成員が1人であった場合
□新たな世帯主となる1人以外の世帯の構成員が全て15歳未満である場合章
例えば、亡くなった方が一人暮らしだった場合には、その世帯がなくなるため世帯主変更の手続きは必要ありません。
また、亡くなった方以外に1人しか世帯の構成員がいなければ、その人以外に世帯主となる人がいないため、やはり世帯主変更の手続きは必要ありません。このケースには、夫婦の2人暮らしだったケースなどがあります。
世帯主変更の手続きは、市区町村の役所の窓口で行います。国民健康保険の手続きなどとあわせて行ってしまうようにしましょう。
5.親の葬儀後、期限内に行うべき公的手続
親の葬儀後、ただちにではありませんが、期限内に行うべき公的手続もたくさんあります。
期限内に行うべき公的手続には次のようなものがあります。
□国民年金の死亡一時金の請求(2年以内)
□葬祭費・埋葬料の請求(2年以内)
□高額療養費の支給申請(2年以内)
□未支給年金の請求(5年以内)
□遺族年金の請求(5年以内)
□パスポートの返納(できるだけ早く)
□雇用保険受給資格者証の返還(1か月以内)
雇用保険受給資格者証の返還
亡くなった方が雇用保険を受給していた場合には、死亡後1か月以内に雇用保険受給資格者証を返還します。
「雇用保険受給資格者証」とは、失業手当を受け取る資格があることを証明するための書類です。
雇用保険受給資格者証は、雇用保険を受給していたハローワークに返還します。
国民年金の死亡一時金の請求
国民年金の「死亡一時金」とは、亡くなった日の前日時点で国民年金の第1号被保険者として所定の期間以上保険料を納めた方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取ることなく亡くなった場合に請求できる一時金です。
死亡一時金を受け取るために保険料を納める必要がある所定の期間とは、36か月以上です。
死亡一時金の請求期限は、死亡後2年以内です。
死亡一時金を受け取ることができるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族であり、次の順位で受け取る権利があります。
子ども
父母
孫
祖父母
兄弟姉妹
例えば、亡くなった方に配偶者がなく子どもがいる場合には、その子どもが死亡一時金を受け取ります。
「第1号被保険者」とは、会社員等ではない者であり、例えば自営業者、学生、無職の方などが該当します。
「老齢基礎年金」は、原則として65歳から受け取ることができる年金です。
死亡一時金を受け取ることができるケースとは、例えば、親が自営業者であり、原則65歳から受け取り始めることができる老齢基礎年金も、一定の障害がある場合に受け取れる障害基礎年金も受け取っていない状態で亡くなったケースなどです。
亡くなった親が65歳以上である場合には、基本的には老齢基礎年金を受け取り始めているので、死亡一時金の支給対象とはなりません。また、親がずっと会社員として勤めており自営業などであった期間がない場合も、第1号被保険者として保険料を納めた期間の条件を満たさないため、死亡一時金の支給対象とはなりません。
死亡一時金を受け取るための手続きは、市区町村の役所の窓口、年金事務所または年金相談センターで行います。
受け取ることができる死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて12万円~32万円です。また、付加保険料を納めた月数が36か月以上あるときは、受給額に8,500円が加算されます。
死亡一時金は、遺族が遺族基礎年金を受け取ることができる場合には支給されません。また、遺族が寡婦年金を受け取ることができる場合には、いずれか一方のみを選択して受け取ります。
葬祭費・埋葬料の請求
葬祭費や埋葬料は、葬儀や埋葬にかかった費用を補うために支給される給付金です。
葬祭費・埋葬料の請求期限は、死亡後2年以内です。
「葬祭費」は、国民健康保険に加入していた75歳未満の方が亡くなった場合に国民健康保険から支給される給付金です。国民健康保険には、会社員ではなく主に自営業の方が加入しています。
また、75歳以上の方が亡くなった場合には、その方が加入している後期高齢者医療制度から葬祭費が支給されます。
「埋葬料」は、社会保険に加入していた方が亡くなった場合にその健康保険から支給される給付金です。社会保険に加入しているのは会社員や公務員など組織に勤務している方です。
葬祭費の額は、市区町村によって異なります。
基本的には3万円~7万円の範囲内でその市区町村が額を定めています。
多くの市町村では5万円が支給されることとされており、東京都の区部であれば7万円が支給されます。
埋葬料の額は、加入していたのがどの健康保険組合かにかかわらず一律5万円です。もっとも、健康保険組合によっては組合独自の給付金として付加給付(埋葬料付加金)を追加で支給してくれることもあります。
葬祭費も埋葬料も、亡くなった方の葬祭・埋葬を行った遺族が受け取れます。
高額療養費の支給申請
高額療養費の支給申請期限は、死亡後2年以内です。
高額療養費制度は、国民健康保険、後期高齢者医療制度、社会保険(健康保険)のいずれに加入している人も対象となるため、自営業者や会社員等を問わず利用できます。
高額療養費のうち、医療を受けていた本人が亡くなった後にまだ支給されていないものがある場合には、相続人である遺族が高額療養費の支給を請求できます。
高額療養費の支給申請先は、亡くなった方が住んでいた市区町村の役所の窓口(国民健康保険、後期高齢者医療制度の加入者だった場合)、または加入していた健康保険組合(健康保険の加入者だった場合)です。
高額療養費の自己負担限度額は、所得または標準報酬月額に応じて決まります。
もっとも低い区分(住民税非課税の者)では、自己負担限度額は約3万円です。また、一般的な所得や給与額(給与がおおむね月50万円以下など)の方は、自己負担限度額は約5万円または約8万円となることが多いです。
遺族の方が高額療養費を支給申請するケースは、例えば、亡くなった方が亡くなる1か月前から急病で入院して手術を受けるなどし、その医療費が何十万円にものぼったケースなどです。このようなケースでは、生前に高額療養費の申請手続を行っておくことが難しいことも多く、亡くなってから高額療養費の支給申請をすることとなります。
未支給年金の請求
未支給年金の申請期限は、死亡後5年以内です。
年金は、亡くなった月の分まで受け取る権利があります。例えば、8月10日に亡くなった場合には、その8月分まで受け取る権利があります。
年金は、原則として、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日(その日が土日休日である場合にはその直前の平日)に支給されることとされており、支給される分はその前月と前々月の2か月分です。
例えば、8月15日には、6月分と7月分の2か月分が支給されます。
このことから、例えば8月10日に亡くなった場合には、まだ支給されていない6月分、7月分、8月分の3か月分が未支給年金となります。
これに対し、例えば8月20日に亡くなった場合には、8月15日時点で6月分と7月分の年金が支給されているため、8月分の1か月分だけが未支給年金となります。
このように、通常は1か月分~3か月分の年金が未支給年金となります。
未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた3親等内の親族です。この3親等内の親族は、次の順位で未支給年金を受け取ることができます。
□子
□父母
□孫
□祖父母
□兄弟姉妹
□その他の3親等内の親族
未支給年金の請求窓口は、年金事務所または年金相談センターです。
未支給年金を請求する権利がある遺族は、亡くなった方の代理としてではなく、自分自身の権利として未支給年金を請求することができます。
これにより、未支給年金は相続財産の一部を構成せず遺族が固有の財産として有するものとなるため、遺産分割の対象とはなりません。また、未支給年金を受け取ったからといって相続放棄ができなくなるということもありません。
遺族年金の請求
遺族年金の請求期限は、死亡後5年以内です。
遺族年金には、次の2種類があります。
◆遺族基礎年金
◆ 遺族厚生年金
支給のための条件を満たしている場合には、亡くなった方がどのような年金に加入していたかに応じて、このいずれか一方または両方の年金が支給されます。
「遺族基礎年金」を受け取ることができるのは、「子どものいる配偶者」または「子ども」であって、条件を満たす者です。
「遺族厚生年金」を受け取ることができるのは、次の遺族のうち最も優先順位が高い遺族です。
□第2順位:子ども(原則、18歳になった年度の3月31日までの者)
□第3順位:子どものいない配偶者
□第4順位:父母
□第5順位:孫(原則、18歳になった年度の3月31日までの者)
□第6順位:祖父母
いずれの遺族年金でも、年金を受給するためには亡くなった方に生計を維持されていたことが必要です。
「生計を維持されていた」といえるためには、原則として次の要件を両方満たす必要があります。
◆ 生計を同じくしていること(原則として同居していること。別居している場合には、仕送りを受けていることや健康保険上の扶養親族であるなどの事情があること)
◆ 前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5千円未満であること
遺族基礎年金の年金額は、受け取る年や受け取る方によって少しずつ異なりますが、例えば遺族が子ども1人であり、その子どもが受け取る場合には、年額81万6千円です(2024年4月分から)。
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
老齢厚生年金の報酬比例部分はその方の給与・賞与の額と年金の加入期間に応じて決まります。
2003年4月以降に厚生年金に加入した場合、「報酬比例部分」は次の計算式に基づき計算されます。
例えば、亡くなった方に配偶者と子ども1人があり、平均標準報酬月額が50万円、年金の加入期間が300か月(25年)である場合には、遺族厚生年金の年額は約61万6千円(月額約5万1千円)、遺族基礎年金の年額は約105万円(81万6千円+1人目の子の加算額23万4,800円)です。これらをあわせて受給すると年額約166万67千円(月額約13万8千円)となります。
パスポートの返納
亡くなった方の家族は、できるだけ早くパスポートを返納しなければなりません。
パスポートの申請窓口まで亡くなったことを届け出て返納します。
返納手続をしたことにより、パスポートの失効手続が行われます。
なお、これに対し、運転免許証やマイナンバーカードは返納の手続きをする義務はありません。これらは死亡の届出によって自動的に失効します。
親が亡くなってから行う税金関係の手続き
親が亡くなってから行う手続きには税金関係の手続きもあります。
税金関係の手続きには次のようなものがあります。
□相続税の申告・納付(10か月以内)
□固定資産税の納付
所得税の準確定申告
所得税の準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。
亡くなった方が給与のみを受け取っていたなど、元々確定申告義務者ではなかった場合には、準確定申告をする義務は生じません。亡くなった方が自営業やフリーランス、副業収入が20万円を超えていた給与所得者、公的年金の支給額が年400万円を超えていた場合などには、確定申告義務者であり、準確定申告の義務も生じます。
準確定申告は、準確定申告書を税務署の窓口に提出することによって行います。相続人が複数いる場合にはそのうちの一人が行えばよく、準確定申告書に付表をつけ、全ての相続人が連署します。
相続税の申告・納付
相続人は、遺産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税の申告・納付を行う義務を負います。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
例えば、親が亡くなり子ども1人が法定相続人として相続をする場合には、相続税の基礎控除額は3,600万円となり、遺産総額が3,600万円未満であれば相続税の申告・納付義務はありません。
相続税の申告・納付期限は、亡くなった方が死亡した事実を知った日の翌日から10か月以内です。例えば、1月4日に亡くなり、その日のうちに死亡の事実を知っていた場合には、同年11月4日が申告期限となります。
申告手続は、亡くなった方の住所地を管轄する税務署にて行います。
相続税には、さまざまな控除や特例の制度があり、これらを受けるためには相続税の申告が必要です。
相続税の計算や、控除・特例制度の適用を受けられるかどうかの判断、適用を受けるために必要な書類などは、複雑であり、準備も大変です。
相続税の申告に関しては、まずは税理士に相談してみるとよいでしょう。
固定資産税の納付
年の途中で建物や土地などの固定資産の所有者が亡くなった場合には、その年の固定資産税を納める義務は相続人が受け継ぎます。
固定資産税の納付先は、建物や土地などが所在する市町村の役所の窓口です。
親が亡くなってから行う遺産相続関係の手続き
親が亡くなると、必ず遺産相続が発生します。この手続きも行わなければなりません。
遺産相続関係の手続きには次のようなものがあります。
□遺産分割協議
□不動産の相続登記(3年以内)
□株式・有価証券の名義変更
□自動車の名義変更
これらのうち、相続放棄や遺産分割協議の前提としては次のことを行う必要があります。
◆相続人の調査
◆遺産の調査
◆遺言書の調査・検認
相続放棄または限定承認の申立て
親が多額の借金を残して亡くなった場合には、まずは相続放棄を検討します。限定承認はさまざまな制約があったりデメリットも大きかったりするため、選択されることはあまり多くありません。
相続放棄や限定承認をしたほうがいいかもと思ったら、まずはご自身だけで判断してしまうのではなく、専門家である弁護士に相談してみましょう。
相続放棄の期限は、自己のために相続が開始したことを知ってから3か月以内です。
相続放棄は、亡くなった方の住所地の家庭裁判所に申述の手続きをすることによって行います。
相続放棄は、弁護士などの専門家に依頼して手続きを代行してもらうこともできます。相続放棄が適しているケースなのか判断してもらったり書類を代わりに集めてもらったり、弁護士に依頼するメリットは多くあります。
遺産分割協議
複数の相続人がいる場合に遺産の分け方を話し合いで決める手続きが「遺産分割協議」です。
遺産分割協議は、遺言書が残されていない場合はもちろん、遺言書が残されていてそれとは異なる遺産の分け方をする場合にも行えます。
基本的には話し合いで遺産分割を行いますが、話し合いが成立しない場合には家庭裁判所における調停・審判の手続きにより遺産分割を行います。
相続人だけで遺産分割の話し合いがうまくできない場合には、弁護士に依頼して代理人となってもらうことができます。弁護士が代理人となれば、本人が直接相手方と話し合う必要がなくなりストレスが軽減されるほか、専門的知見に基づくアドバイスも受けられます。
遺産分割協議で困ったら、弁護士に相談しましょう。
遺産分割協議に期限はなく、いつまででもできますが、通常は相続税の申告・納付期限である被相続人死亡後10か月を目安にして協議を成立させるように目指します。
不動産の相続登記
遺産の中に不動産がある場合には、相続登記をしてその不動産の名義を相続人のものへと変更します。
相続登記は義務であり、原則として相続開始の時から3年以内に行わなければなりません。
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
相続登記は、ご自身だけで行うのは難しいことも多いです。相続登記の専門家は司法書士なので、少しでも困ったことがあれば司法書士に相談し、依頼して代わりに行ってもらうとよいでしょう。
株式・自動車の名義変更
遺産の中に株式や自動車が含まれていた場合には、それらの名義変更も行わなければなりません。
株式の名義変更は、証券会社に問い合わせて行います。
自動車の名義変更は、運輸支局または軽自動車検査協会に申請して行います。
親が亡くなってから行う契約関係の手続き
親が亡くなった後には、契約関係の手続きも忘れずに行うようにしましょう。
契約関係の手続きには次のようなものがあります。
□クレジットカードの解約手続
□携帯電話やインターネットの名義変更・解約手続
□サブスクリプションなどの名義変更・解約手続
□生命保険の保険金請求(3年以内)
□団体信用生命保険の請求
契約関係の手続きは、請求書や通帳の記載などからひとつずつ契約先を見つけ出して解約などを進めていきます。
生命保険金の請求には亡くなってから3年という期限があるので、受け取る権利があるならばなるべく早く手続きを済ませましょう。
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ時などに加入するもので、死亡時の生命保険金で住宅ローンを完済できるというものです。遺族が住宅ローンを代わりに支払う必要がなくなり負担が大きく軽減されるので、速やかに金融機関に連絡しましょう。
親が亡くなってから行う手続きに関するよくある質問
親が亡くなってから行う手続きに関するよくある質問をご紹介します。
親が亡くなると銀行口座はどうなる?
銀座口座が凍結されると、預金の引き出しなどは基本的にできなくなります。また、公共料金の自動引き落としなどもできなくなります。
遺産分割協議が終わるなどして誰がどのように預金を引き継ぐかが確定したら、銀行で手続きをすることにより預金の払戻しを受けることができます。
親の銀行口座凍結前にATMから預金を引き出しても大丈夫?
親が亡くなって銀行口座が凍結される前にATMで預金を引き出してしまうことは、現実的には可能です。親が亡くなったとしても、その事実が役所などから自動的に銀行などへと通知されることは基本的にはありません。そのため、遺族が知らせない限りは銀行口座が凍結されません。
しかしもっとも、銀行口座凍結前にATMで預金を引き出すのは基本的にはおすすめできません。
亡くなった方の預金を正規の手続きを踏まずに勝手に引き出すことで、場合によっては他の相続人との間でトラブルに発展することもあります。
もっとも、遺産分割協議を成立させて正規の手続きを踏む前でも、必要があって預金の払戻しを受けたいこともあるでしょう。
この場合、一定の範囲内の金額であれば遺産分割協議成立前でも単独で預金の払戻しを受けられるため、この制度を活用するという方法もあります。
単独で払戻しを受けられる金額は、預金残高の3分の1に法定相続分を掛けた額です。ただし、金融機関1つごとに150万円が上限です。
銀行口座凍結中にお金が必要になったら、できる限りこの制度を用いることとしましょう。銀行口座凍結前にATMから預金を引き出すことにはリスクが伴うため、できる限り避け、トラブルが生じないように努めることが大切です。
親の死亡後の手続きを相談できる専門家
親の死亡後の手続きを全てご自身だけで行うことは負担が大きく、場合によっては専門家に相談したほうがよいこともあります。
親の死亡後の手続きを相談できる専門家には、次のようなものがあります。
◆弁護士
◆税理士
◆司法書士
◆行政書士
これらの専門家のうち、死亡後の手続きは弁護士に相談するのが最もおすすめです。
死亡後の手続きを弁護士に相談するメリットには、次のようなものがあります。
◆死亡後の手続きに関する法律問題全般に総合的に対応できる
◆紛争になっても解決できる権限と専門知識がある
◆代理人となって交渉や裁判手続を行える
弁護士は、法律問題全般のプロフェッショナルであるという点で他の士業にない特徴があります。
これに対して、弁護士以外の専門家の主な役割は、次のとおりです。
◆税理士:相続税の申告・納付など税に関する手続き
◆司法書士:不動産の相続登記など登記に関する手続き
◆行政書士:役所への届出・申請など行政に関する手続き
弁護士以外の専門家は、それぞれ取り扱う分野が限定されており、その分野に限定されたプロフェッショナルです。
弁護士以外の専門家は、弁護士と異なり、死亡後の手続きに関して次のような限界があります。
◆自己の役割として取り扱える分野を除き、法律上、代理人として手続きに関与できない
弁護士とは異なり、他の専門家では対応できるのがその専門家が取り扱える分野に限定されるので、場合によっては分野ごとに専門家を探す必要が生じることもあります。また、弁護士以外の専門家は、万が一相続などをめぐって紛争になっても対応できません。
これらのことから、親の死亡後の手続きについては弁護士に相談するのが最も良いといえます。
なお、弁護士も他の専門家も、相続分野を専門的に扱っていればそれぞれの専門家と相互に協力する対応体制を準備していることが多いです。そのような専門家であれば、必要に応じて各士業との間で連携して手続きを進めてくれるため、弁護士でもそうでなくても、安心して手続きを任せることができます。
まとめ:親の死亡後の手続きは期限を守って順番にこなすことが大切
親の死亡後の手続きにはさまざまなものがあります。
中には期限が厳格に決まっているものも多くあり、期限を過ぎるともはや権利が行使できなくなったり義務が確定してしまったりするなど、大変なことになるものも少なくありません。
親の死亡後の手続きは、期限を守って順番にこなしていくことが大切です。
手続きの中には、弁護士や司法書士などの専門家に相談・依頼したほうがいいものもいくつかあります。
親の死亡後の手続きに困ったら、まずは弁護士や司法書士などに相談してみるようにしましょう。