連帯保証人の地位も相続の対象になる!相続を避ける方法や相続してしまった場合の対処法を解説

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「被相続人が他人の連帯保証人だったらしいが、連帯保証人の地位も相続の対象となる?」

被相続人が生前に他人の連帯保証人になっていることがあります。この場合に、連帯保証人の地位が相続の対象になり、相続人がそれを引き継いで連帯保証人とならなければならないのかが気になるところでしょう。

実は、連帯保証人の地位は相続の対象になります。このため、単に相続してしまうと連帯保証人の地位を引き継がなければなりません。

もっとも、連帯保証人の地位の相続を避ける方法や、もし相続してしまっても適切に対処する方法があります。

この記事では、連帯保証人の地位が相続の対象になるかどうか、連帯保証人の相続を避ける方法、相続してしまった場合の対処法などについて解説しています。

この記事を読むことで、被相続人が連帯保証人だった場合の相続にも適切に対応できるようになります。

目次

連帯保証人の地位は基本的には相続の対象となる

連帯保証人の地位は、基本的には相続の対象になります。

このため、被相続人が連帯保証人であった場合にこれを相続すると、相続人はその地位を引き継いで連帯保証人としての責任を負います。

ここからは、連帯保証人の地位の相続についてご説明します。

連帯保証人の具体例

相続の対象となる連帯保証人には、具体的には次のようなものがあります。

借金の連帯保証人

もっとも典型的な例が、借金の連帯保証人です。

例えば、夫が個人事業を営んでおり、その夫が銀行から事業用の資金を借り入れる際に妻がその借金の連帯保証人となるケースなどがあります。

借金の連帯保証人は、借主と同じくその借金を返済する義務を負います。例えば、借主が1億円を借りたなら連帯保証人も1億円を返済する義務を借主と一緒に負っています。

不動産賃貸借の連帯保証人

不動産賃貸借の際にも連帯保証人が立てられることがあります。

例えば、個人事業を営んでいる妻が事務所物件としてビルの一室を賃貸借する際に、夫がその連帯保証人となるケースなどです。

借金の連帯保証人との違いは、借金の連帯保証人がある特定の借金について連帯保証債務を負うのに対して、不動産賃貸借の連帯保証人は特定の賃貸借契約から生じる債務(毎月発生する賃料債務や設備を壊してしまった際の損害賠償義務など)について連帯保証をするという点にあります。

賃料は月々発生しますし設備を壊したなどの損害賠償義務は発生するか不確実であることから、不動産賃貸借の連帯保証では具体的にいくらの債務について連帯保証義務を負うのかが連帯保証契約の時点では確定していないという特徴があります。

連帯保証人の地位を相続するとどうなる?

連帯保証人の地位を相続するとどのような責任を負うのかについて詳しくご説明します。

連帯保証人の負う責任

連帯保証人は、主債務者(借金などによって本来債務を弁済するべき者)と連帯して主債務(借金など)を弁済する責任を負います。この連帯保証人が負う責任を連帯保証債務といいます。

被相続人から連帯保証人の地位を相続すると、被相続人が負っていた連帯保証債務をそのまま引き継ぎます。

これは、平たく言うと、被相続人と同じ立場で連帯保証人になって借金などを返済する責任を負うということです。

「連帯保証人」と単なる「保証人」との違い

「連帯保証人」と単純な「保証人」とは、どのように責任を負うかという点でそれぞれ異なります。

法律上、単純な保証人は、「催告の抗弁」、「検索の抗弁」、「分別の利益」を有しているのに対して、連帯保証人はこれらをいずれも有していません。

「催告の抗弁」とは、まず主債務者に弁済を請求してからでなければ保証人に請求できないという抗弁権(請求を拒める権利)です。

「検索の抗弁」とは、主債務者がまず主債務者に強制執行して弁済のための資力がないことを明らかにしなければ保証人に請求できないという抗弁権です。

「分別の利益」とは、保証人が複数いる場合に、その頭数で割った分の債務のみを弁済すればそれで足りるという利益のことです。

これらにより、保証人は主債務者が弁済できないときに限って二次的に債務を弁済する義務を負う立場にあります。

これに対して、連帯保証人は、上記の抗弁権等をいずれも持たないため、債権者が選択すれば主債務者に請求しなくてもいきなり請求を受けることもあります。

この意味で、連帯保証人は主債務者と同じ立場で責任を負います。「連帯して」責任を負うとは、このように主債務者と同じ立場で責任を負うことを意味しています。

連帯保証人は主債務者と同じレベルで責任を負うことから、最終的に主債務者に対して肩代わりした分を請求する権利を行使できることを除いて、自分自身が借金等をしたのとほとんど同じこととなります。自分自身が借金をしたわけではないのに他人の借金について自分自身が借金をしたのと同じ立場で弁済する責任を負うという連帯保証人の責任は重いものです。

相続の対象となる連帯保証人とは異なるもの

相続の対象となる連帯保証人のほかに、これと似ていつつも異なるものがあります。

これらはしっかりと区別して考えることが大切です。

身元保証人

「身元保証人」とは
主に就職の際などに求められるもので、本人の身元がどのようなものであるかを保証するとともに本人が就業先等に何らかの損害を与えた場合にその損害を賠償する責任を負うものをいいます。

身元保証人には、就職する者の家族など本人に近しい者がなることが一般的です。

身元保証人は連帯保証人と異なるものであり、相続の対象となりません。

身元保証人が相続の対象とならないのは、身元保証人は本人との近しい関係に基づいてなるものであり、また賠償責任の範囲が特に抽象的で広いことから、相続にはなじまないことが理由です。

もっとも、身元保証契約に基づき身元保証人が生前に具体的な損害賠償義務を負っていた場合(例えば、身元保証人となった被相続人の生前に本人が損害を与え、その賠償責任を負うことや賠償の範囲が確定して損害賠償義務が具体的に発生している場合など)には、その損害賠償債務を相続することはあり得ます。

これは、相続時にすでに損害賠償義務が具体化していれば一般的な金銭債務と変わらず、賠償額なども確定していれば予想外の義務を負うことがないことなどが理由です。

根保証

「根保証」とは
特定の原因に基づいて将来発生することが見込まれる債務を包括的に保証することをいいます。

例えば、貸金の根保証では将来にわたって何度も借入れと返済が繰り返されることを前提に、それぞれ発生する貸金債務や利息、遅延損害金をまとめて保証します。

根保証では、根保証契約時にはどの債務を保証するのか具体的に特定されておらず、保証するべき債務が発生していないことが一般的です。

保証や連帯保証では、すでに発生している特定の債務を保証するため、この点で根保証と異なります。

根保証は、極度額(保証する額の上限)や保証期間(この時までの債務に限って保証するという終期)の定めがない場合には保証をする者にとって負担が大きくなること、そのような負担の大きい根保証をするのは主債務者との特別な人間関係があってこそのものであることなどから、相続の対象とはなりません。

これに対して、根保証契約に極度額や期間の定めがある場合には、いくらまでの保証債務を負うかがはっきりしており、相続の対象になることがあります。

根保証は、契約内容に応じて相続の対象となるか否かが変わるため、基本的に常に相続の対象となる連帯保証とは異なります。

連帯保証人の地位を相続する相続人の範囲

連帯保証債務も通常の債務と同様に相続の対象となるため、相続人であれば連帯保証人の地位を相続する可能性があります。

相続人の範囲は、次のとおりです。

□常に相続人となる者:配偶者
□第1順位:子
□第2順位:親、祖父母などの直系尊属
□第3順位:兄弟姉妹

配偶者は常に相続人となり、それ以外の者はこの順位に従って、先順位の者がいない場合に次順位の者が相続人となります。

例えば、被相続人に配偶者と子どもがいる場合には、配偶者と子どもが相続人となります。

また、被相続人に配偶者がおらず兄弟姉妹だけがいる場合には、その兄弟姉妹が相続人となります。

相続人となる限り、被相続人とどれだけ疎遠であったとしても、連帯保証債務があればそれを相続します。

連帯保証人は重い責任を負うことや被相続人と疎遠であったことなどは、連帯保証債務を相続しなくて済む理由にはなりません。

連帯保証人の地位の相続を避ける方法

連帯保証人の地位を相続すると、自分が借金等をしたわけでもなく連帯保証契約を締結したわけでもないのに借金等をした者と同じ立場で弁済する責任を負うことになるため、その責任は非常に重いです。このことから、連帯保証人の地位の相続はできれば避けたいという方も多いでしょう。

連帯保証人の地位の相続を避けるには、「相続放棄」という方法があります。このことについてご説明します。

相続放棄とは

 

「相続放棄」とは
相続の際に取ることのできる手続きで、相続人としての地位を放棄して被相続人の遺産を全て受け継がないこととする手続きのことです。

相続の対象となる遺産には、現金・預貯金、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や債務などのマイナスの財産も含まれます。連帯保証人の地位に基づく連帯保証債務も相続の対象となる債務の一つです。

もし相続をすれば、プラスの財産だけでなく連帯保証債務を含むマイナスの財産も全て受け継がなくてはなりません。

これに対し、相続放棄をすれば全ての遺産を受け継がないこととなるので、連帯保証債務も受け継がずに済ませることができます。

相続放棄をするかどうかの判断基準

相続放棄をするかどうかは、遺産を調査したうえで適切に判断することが大切です。

もし連帯保証債務を含めたマイナスの財産が大きいためにその額が受け継げるプラスの財産を上回っているのであれば、相続放棄を検討すると良いでしょう。

例えば、プラスの財産として1,000万円の預金を受け継げる一方、被相続人が3,000万円の借金の連帯保証債務を負っていたのであれば、マイナスの財産の額がプラスの財産の額よりも大きいということになります。

もっとも、このような場合でも、主債務者に十分な資力があって主債務者が支払ってくれるために実際には連帯保証人として借金を肩代わりして返すことになる可能性が十分に低い場合などには、相続放棄をしないで連帯保証債務とともにプラスの財産を受け継いだほうが結果的にはよいというケースもあります。

相続放棄をするかの判断にあたっては、主債務者の資力も考慮したうえで決めることが必要です。

これに対し、連帯保証債務を含めたマイナスの財産がプラスの財産より少ない場合には、基本的には相続をしたほうが経済的にはプラスになるといえます。

また、たとえマイナスの財産のほうがプラスの財産より大きくても、プラスの財産の中にどうしても受け継ぎたい財産がある場合には相続放棄という選択肢を取ることはできません。

例えば、遺産の中に先祖伝来の土地や一族が経営する会社の株式などが含まれるケースなどが考えられます。

このように、相続放棄をするかの判断をするにあたっては、マイナスの財産がプラスの財産を上回っているかどうか、主債務者が主債務を弁済する見込みがあるかどうか、プラスの財産の中に絶対に受け継ぎたい財産があるかどうかなどの観点から総合的に判断することが必要です。

相続放棄の期限

相続放棄はいつまででもできるわけではなく、期限があります。

相続放棄の期限は、「自己のために相続が開始したことを知った時から3か月」です。

例えば、被相続人が亡くなった当日にそのことを知っており自己が相続人となることを把握していた場合には、原則として亡くなった日の翌日から3か月以内に相続放棄をしなければなりません。

3か月以内という短い期間制限があるため、相続が発生した場合にはすみやかに遺産を調査して相続放棄すべきかどうかを判断する必要があります。

なお、期限内に相続放棄をするかどうか判断できない場合や相続放棄の期限を過ぎてしまった場合であっても、適切な手続きを取ることなどによって相続放棄ができることがあります。

相続放棄の期限を延ばす方法

遺産の内容が多かったり複雑だったりして3か月以内に相続放棄をするか判断できないことがあります。この場合には、裁判所で「相続放棄の期間の伸長」の手続きをすることにより相続放棄ができる期間を伸ばすことができます。

相続放棄の期間の伸長は、相続放棄の期限までに家庭裁判所に申立書その他の必要書類を提出し、相続放棄の期間を伸ばしてもらうように申し立てて行います。

少しでも相続放棄の期限を過ぎる可能性があると思ったら、期限を過ぎる前に適切に手続きを行い、相続放棄の期間を伸ばしてもらうことが大切です。

相続放棄の期限を過ぎた場合の対処法

相続放棄の期限を過ぎてしまった場合でも、なお相続放棄ができることがあります。

実務上は相続放棄の期間制限はある程度柔軟に扱われており、一定の事情がある場合には相続放棄の期限を過ぎても相続放棄が受け付けられることがあります。

期限を過ぎた相続放棄が認められる一定の事情がある場合とは、相続財産が全くないと信じたり、認識していない相続財産があることが後から判明したりしたケースで、そのように信じたり相続財産を把握していなかったことについて相当な理由があるときなどです。

この場合には、その相続財産を認識した時から3か月以内に相続放棄の手続きを行えば相続放棄が認められることがあります。

例えば、十分に遺産調査を尽くしたうえで連帯保証債務は存在しないと思って相続放棄の手続きをしないでいたところ、相続放棄の期限を過ぎてから債権者から連絡があり、被相続人が連帯保証債務を負っていたことを知ったケースなどが考えられます。

このようなケースでは、期限を過ぎても相続放棄が認められる可能性があるため、諦めずに相続放棄の手続きを進めることが大切です。

また、このような場合でも、連帯保証債務の存在を知ってから3か月以内という期間制限があるため、すみやかに手続きを進めなければなりません。

相続放棄の3つの注意点

相続放棄をするうえで押さえておきたい注意点3つをご説明します。

注意点1:相続放棄をするとプラスの財産も受け継がないこととなる

相続放棄は、遺産の全てを受け継がないこととする手続きです。

遺産の一部だけを選択して受け取ったり放棄したりすることはできません。

連帯保証債務だけを放棄することはできず、必ずプラスの財産も含めた全ての遺産とあわせて放棄する必要があります。

相続放棄によって連帯保証債務を放棄できても、他の重要な財産や価値の高い財産も放棄することで不利益な結果となってしまっては意味がありません。相続放棄をするにあたっては、必ず全ての遺産を放棄しても問題がないのかを検討するようにしましょう。

注意点2:相続放棄は基本的に取り消せない

いったん相続放棄をしてしまうと、相続放棄は基本的に取り消せません。

相続放棄を取り消すことができるのは、錯誤(思い違いがあったこと)や詐欺(欺かれたこと)、強迫(無理矢理迫られたこと)に基づいて相続放棄がなされた場合などに限られます。また、錯誤などを理由とした相続放棄の取消しが認められるハードルは非常に高く、裁判所が取消しを認めるケースは限られています。基本的には取消しが認められないと思っておいたほうがよいです。

相続放棄は自由に取り消したり撤回したりできないため、特に受け継ぎたいプラスの財産がある場合などには、相続放棄をするかどうかの判断は慎重に行いましょう。

注意点3:相続放棄をするとその代わりに他の相続人が相続することになる

相続放棄をすると、相続放棄をした人は初めから相続人とならなかったものとして扱われ、その代わりに放棄した分を他の相続人が相続します。

例えば、配偶者と子どもがともに相続放棄をしたとしても、被相続人に親や兄弟姉妹といった次順位の相続人がいれば、それらの者が相続順位に従って代わりに相続することとなります。

もし連帯保証債務が遺産の中にあることを理由として相続放棄をするのであれば、代わりに相続をすることとなる他の相続人にそのことを知らせるべきです。他の相続人は、何も知らなければ相続放棄をしないまま相続人として連帯保証債務を引き継ぐこととなります。こうなると、なぜ知らせてくれないまま相続放棄をしたのかなどとトラブルになるリスクがあります。

相続人の全員が連帯保証債務を含めた遺産を全く引き継がないようにしたいのであれば、相続人となる全員がそれぞれ相続放棄の手続きをしなければなりません。

相続放棄をする場合に相続人となるべき親族が複数いる場合には、相互に連絡を取り合って計画的に相続放棄の手続きを進めることが重要です。

被相続人が連帯保証人であることを知らなかった場合の対処法

被相続人が連帯保証人であることを知らなかったものの、後から連帯保証人であることが発覚したというケースもあるでしょう。

このような場合には、発覚した時期に応じて取るべき対応が異なります。

まず、3か月という相続放棄の期限までに発覚した場合には、相続放棄を検討します。この場合、相続放棄の期限までに相続放棄するかどうかを決められないのであれば、速やかに相続放棄期間の伸長の手続きを行って相続放棄するかどうかを決めるための時間をつくりましょう。
これに対し、相続放棄の期限を過ぎてから被相続人が連帯保証人であったことが発覚した場合には、先ほど相続放棄の期限を過ぎてしまった場合の対処法としてご説明したとおりに対応します。裁判所に事情を詳しく説明して相続放棄の期限を過ぎてしまったものの相続放棄を認めるべきケースであることを伝え、相続放棄を認めてもらえるように努めます。

被相続人が連帯保証人であることを知らず、後から発覚した場合でも、相続放棄が認められる可能性は十分にあります。諦めたり放置したりせずに適切に対応しましょう。

被相続人が連帯保証人かどうかを調べる方法

被相続人が連帯保証人だったかどうかを調べるには、遺産調査の段階で連帯保証人であることを示す事情や資料などがないかを疑いながらしっかりとチェックすることが重要です。

例えば、被相続人の所持品を調べる中で連帯保証人となることが記載された契約書が見つかれば、被相続人が相続開始時に連帯保証人として債務を負っていた可能性があります。契約書等の書類の記載内容を確認すると同時にそこから分かる債権者に問い合わせることで、被相続人が連帯保証人だったかどうかを確認することができます。

このほかにも、被相続人の所持品の中に被相続人が連帯保証人であることを示す内容の書類やメール等があれば、被相続人が連帯保証人だったかもしれないと気づくことができます。

被相続人が連帯保証人かどうかを遺産調査の段階で把握するためには、「被相続人が連帯保証人だったのではないか?」と疑いながら調査することが大切です。被相続人の生前の会話内容なども思い出しながら、少しでも連帯保証人だった可能性があるならばそのことを疑いながら遺産調査をするようにしましょう。

連帯保証人の地位を相続してしまった場合の対処法3つ

相続放棄をせずに連帯保証人の地位を相続してしまった場合には、連帯保証債務を負わなければなりません。

この場合でも、適切に対処することで少しでも負担を減らすことができます。

連帯保証人の地位を相続してしまった場合の対処法についてご説明します。

対処法1:連帯保証人として債務を弁済したうえで求償権を行使する

一つ目の対処法は、連帯保証人として債務を弁済したうえで主債務者に対して求償権を行使するというものです。

連帯保証人の「求償権」とは
連帯保証人が主債務者に対して肩代わりしたお金を支払うように求めることができる権利のことです。

連帯保証人は債権者から請求される限り主債務者と同様に弁済をする義務を負っていますが、弁済した分を全て自分で負担する必要はありません。主債務者に対して求償権を行使することで、最終的には経済的な負担をゼロにすることができます。

主債務者に資力が十分にあって肩代わりしてもその分を後で支払ってくれそうな場合には、債権者の請求に応じて連帯保証人として債務を弁済してから主債務者に対して求償権を行使するとよいでしょう。

求償権を行使するうえで注意しなければならないのが、主債務者に資力がないケースや支払いに応じてくれないケースなどでは必ずしも肩代わりした分のお金を回収できるとは限らないということです。

そもそも、主債務者にお金があって弁済する意思がある場合には、債権者が連帯保証人に請求することはあまりありません。実際には、債権者が連帯保証人に請求するケースでは主債務者に求償に応じるだけの十分な資力がないこともそれなりにあります。

もっとも、このような場合でも求償権が発生することには代わりないので、主債務者に分割で支払ってもらったり、その後に主債務者の資力が回復した段階でまとめて支払うよう求めたりすることなどが考えられます。

連帯保証人であっても最終的には求償権を行使して肩代わりしたお金を主債務者に請求できるので、このことはしっかりと押さえておきましょう。

なお、2020年4月1日以降に発生した求償権の時効は、原則5年です。

求償権があるからと安心して何もせずに放置していると原則5年で時効により権利が消滅してしまうので、そのようなことがないように注意する必要があります。

対処法2:債権者と任意での交渉をする

債権者が連帯保証人としての弁済を求めてきた場合、求められたとおりに支払えないのであれば債権者と任意での交渉をすることが考えられます。

「任意での交渉」とは
裁判手続を利用しないで直接交渉するということです。

債権者に事情を話して、求められたとおりには支払えない事情を伝えます。そのうえで、減額や分割、支払期限の猶予などをしてもらえないか交渉してみましょう。

債権者も、無理な請求をして全く債権が回収できなければ損をするだけなので、事情があれば減額や分割に応じてくれる可能性があります。

債権者との交渉はあくまでも任意に行うものなので、債権者が減額や分割に応じてくれなければそこまでとなります。債権者との交渉がうまくいかず、債権者の請求どおりに支払うこともできないのであれば、次にご説明する裁判手続を利用する方法を取ることになります。

対処法3:債務の減額・免除ができる裁判手続を利用する

債務整理の裁判手続を利用することで、債権者との交渉がうまくいかなくても債務の減額・免除ができることがあります。

このような裁判手続には、主に次の2つがあります。
個人再生
自己破産

「個人再生」は、弁済の計画を立てたうえで借金などの債務を減額し、減額後の債務を原則3年かけて弁済していくものです。

「自己破産」は、財産が足りずに借金などの債務を弁済できないことを理由として、原則として全ての債務の免除を裁判所に認めてもらうものです。

個人再生や自己破産は裁判所を通した手続きであり、法律の規定に従って進められます。法律に定められた要件を満たせば、債務の減額や免除という大きな効果を得ることができます。

もっとも、自己破産などの手続きにはデメリットもあります。

例えば、自己破産をする際には一定の価値のある財産は手放して弁済に充てなければなりません。また、自己破産などをして債務を減額・免除してもらったことが一定期間信用情報として民間の機関に記録され、その間はクレジットカードを作ったりローンを組んだりすることが難しくなることもあります。

連帯保証債務を自分の力で弁済していく負担と自己破産などの手続きを取るメリット・デメリットとを比較しながら、自己破産などの裁判手続を利用するかどうかを適切に判断することが重要です。

連帯保証人の相続や相続放棄などについて相談できる専門家

実際に相続放棄の手続きを行ったり債権者からの請求に対応したりすることは、ご自身だけでは難しいことも多いです。また、連帯保証人の相続に関していったいどのように判断すればいいのか分からないという場面も多くあるでしょう。

ご自身だけで対応できないような連帯保証人の相続に関する手続きや対処法などについては、弁護士のような専門家に相談することがおすすめです。

弁護士は、連帯保証制度や相続なども含めた法律全般に詳しい専門家です。弁護士に相談すれば、専門家としての知識と経験に基づいて適切なアドバイスをしてくれます。

また、弁護士は代理人としてあなたに代わって活動する法律上の権限を有しているため、弁護士に代理人となってもらえばあなた自身が対応する負担を減らせます。

連帯保証人の相続や相続放棄などに関して少しでも分からないことがあれば、すぐに相続に詳しい弁護士に相談・依頼するようにしましょう。

まとめ:連帯保証人の地位は相続の対象!適切な対応が大切

連帯保証人の地位は、相続の対象です。

被相続人が連帯保証人であった場合には、何もしなければその相続人が連帯保証債務を相続により受け継いで連帯保証人としての責任を負うことになります。

連帯保証債務を相続したくない場合には、相続放棄をすることが有効です。

相続放棄をすれば、連帯保証債務を受け継がなくても済みます。

また、連帯保証債務を相続してしまった場合でも、主債務者に対する求償権を行使するなどの対処法を取ることで、最終的にご自身が負担する分をゼロにできる可能性があります。

相続の手続きを進める中で被相続人が連帯保証人であったことが判明し、連帯保証人の地位を相続するかもしれないという状況になったら、すぐに相続に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談・依頼すれば、弁護士が適切なアドバイスをくれたりあなたの代理人として対応してくれたりします。

連帯保証人の相続で困ったら、すぐに相続に詳しい弁護士に相談しましょう。

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