「相続税評価額の調べ方が知りたい」
相続税を計算するにあたっては、相続税評価額を調べなければなりません。相続税評価額を正しく把握しておけば、どれくらい相続税がかかるのかの目安を把握できることにつながり、安心です。
相続税評価額は、遺産である財産の項目ごとに計算方法が異なります。例えば、土地、建物、株式などは、それぞれ違う方式で計算しなければなりません。
目次
相続税評価額とは
「相続税評価額」とは、相続税の額を計算する際に基礎としなければならない財産の価額のことをいいます。
相続税評価額の数字に基づいて相続税がいくらになるのかが計算されるため、相続税評価額は相続税計算の上では非常に重要な数字であるということができます。
相続税を計算する流れは、主に次のとおりです。
2.相続税の基礎控除を差し引く
3.相続税の総額を計算する
4.相続人ごとに相続税がいくらになるかを計算する
相続税評価額は、この「正味の遺産総額」を算出する際に用います。相続税計算の出発点で必要になる、重要な数字です。
そして、相続税を公平に課税するために、国税庁が「財産評価基本通達」という形で各種の財産の評価方法を示しています。相続税評価額は、基本的にはこの財産評価基本通達の考え方に従う形で算出します。
不動産の相続税評価額を計算する際のポイント
遺産の中でもよくあるのが不動産です。不動産の相続税評価額を計算する際には、いくつかのポイントがあります。
不動産の相続税で損しないために──土地と建物、別々に評価するルールとは
不動産は、土地と建物を別々に分けて相続税評価額を計算します。
例えば、所有する土地の上に一戸建てが建っているという場合には、その土地と土地上の一戸建ては別々に相続税評価額を計算します。
また、マンションのように土地と土地上の建物が一体となって取引される不動産についても、土地(敷地)と建物は別々に分けてそれぞれ評価をし、相続税評価額を計算します。
建物は自宅と貸家を区別して相続税評価額を計算する
建物を評価する際には、自宅と貸家を区別して相続税評価額を計算しなければなりません。
自分自身で住むために利用しているのであれば自宅として扱い、賃貸に出して誰かに貸しているのであれば貸家として扱い、それぞれ別の方法で相続税評価額を計算することとなります。
一般的には、貸家のほうが自宅よりも相続税評価額が低くなります。これは、貸家であれば自宅と違って所有者が完全に自由には利用できないことが理由です。
貸家は賃貸割合に注意して相続税評価額を計算する
「賃貸割合」とは、いわゆる入居率のことで、貸家のうち空室がどれくらいあるかを示す割合のことです。
土地の相続税評価額の調べ方
ここからは、相続において代表的な財産である土地、建物、株式のそれぞれについて相続税評価額の調べ方を解説していきます。まずは土地の相続税評価額についてご説明します。
土地の相続税評価額は、例えば次のような事情によって左右されます。
- 土地の地目(宅地、山林などのような土地の用途)
- 交通の便が良いか
- 商業施設が充実しているなど土地周辺の状況が良いか
- 土地の形状、道路への接し方などの土地の利用しやすさ
- 土地上に建物があるかどうか、など
土地の相続税評価額は、土地が実際にどのように取引されているかの実情も勘案しながら、毎年1回発表される公示価格よりも約2割程度低くなるように設定されます。
相続した土地を評価するには、次の4つの手順を踏んで順番に進めていきます。
- ステップ1:路線価地域か倍率地域かを確かめる
- ステップ2:評価減ができるかどうかを確かめる
- ステップ3:賃貸されているかどうかを確かめる
- ステップ4:小規模宅地等の特例を適用できるかどうかを確かめる
ステップ1:路線価地域か倍率地域かを確かめる
まずは、その土地が路線価地域か倍率地域かを確かめます。
具体的には、路線価図を確認し、路線価図があれば路線価地域、なければ倍率地域となります。
路線価が公表されている道路に面している土地については、「路線価方式」によって相続税評価額を計算します。基本的には、次のような計算式となります。
これに対して、路線価が公表されていない地域の土地については、「倍率方式」により相続税評価額を計算します。
倍率方式は、次のような計算式となります。
ステップ2:評価減ができるかどうかを確かめる
評価減は、地形や立地など土地の状況や条件に応じてできるかどうかが決まります。
ステップ3:賃貸されているかどうかを確かめる
土地が賃貸されている場合には、所有者がその土地を完全に自由に使えないことなどを理由として、所定の計算式に従って相続税評価額を減額することができます。
ステップ4:小規模宅地等の特例を適用できるかどうかを確かめる
例えば、1億8千万円の自宅の宅地を相続で取得した場合には、小規模宅地等の特例が使えれば、その8割減の3,600万円が相続税評価額となります。
また、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、決められた期限までに相続税の申告をきちんと行っておくことも必要です。税理士に依頼して相続税申告を代行してもらえることもあるので、相続が開始したらなるべく早めに相談するようにするとよいでしょう。
建物の相続税評価額の調べ方
建物の相続税評価額の計算方法は、土地よりは簡単です。次の手順で順番に検討していきます。
- ステップ1:固定資産税評価額がいくらかを確かめる
- ステップ2:賃貸されているかを確かめる
ステップ1:固定資産税評価額がいくらかを確かめる
まずは、建物の固定資産税評価額がいくらかを確認します。
建物の固定資産税評価額は、毎年4月頃に届く固定資産税課税明細書(納税通知書)に記載されているため、これを確認するのが簡単です。
固定資産税評価額が分かれば、次の計算式で建物の相続税評価額を算出します。
そして、この「評価倍率」は、建物の相続税評価額を算出する際には「1.0」とされます。
ステップ2:賃貸されているかを確かめる
建物が賃貸されていれば、所定の計算式に従い減額することができます。
その建物を被相続人が利用していた場合には、次の計算式によります。
その建物を被相続人が賃貸アパートとして貸していた場合には、次の計算式によります。
その建物を一軒家として所有し、建物全てをそのまま賃貸に出していた場合には、次の計算式によります。
株式の相続税評価額の調べ方
相続した株式の相続税評価額の計算方法は、その株式が上場している株式なのかそうでないのかによって変わります。
上場している株式であれば、その株式を公開の株式市場で売却することができます。上場している株式は、大きな企業の株式であることも多いです。これに対し、上場していない株式は、公開の株式市場では自由に売却することができません。中小規模の企業の株式の多くは、非上場株式です。
相続財産調査の際には、遺産の中に株式がないか、見落としていないかを注意して確認することが大切です。
上場株式
上場株式の相続税評価額の計算方法は、次のとおりです。
ただし、1株あたりの金額は常に変動しています。そこで、相続税評価額の算出にあたっては、1株あたりの金額は原則として次のそれぞれの価格の中から最も低い価格を採用することとされています。
- 被相続人が亡くなった日の終値
- 被相続人が亡くなった月の毎日の終値を平均した価格
- 被相続人が亡くなる前月の毎日の終値を平均した価格
- 被相続人が亡くなる前々月の毎日の終値を平均した価格
なお、被相続人が亡くなった日と株式市場の休場日が重なってしまった場合には、亡くなった日に最も近い日の終値を採用することとし、連休の中日に亡くなってそれに該当する終値が2つある場合には、終値の平均値を採用することとされています。
非上場株式
非上場株式の相続税評価額を算出するには、高度な専門知識が必要であり、通常は専門的な知識を有する税理士に依頼して算出してもらいます。
基本的な考え方としては、純資産価額方式、類似業種比準方式、配当還元方式などがあります。
純資産価額方式は、会社の総資産や負債など有している財産の内容に基づいて株式の評価額を決める方法です。この方式は、比較的規模の小さな会社の株式を評価する際に用います。
類似業種比準方式は、評価しようとする会社と似た業種の上場企業と一定の項目を比較することによって評価額を決める方法です。この方式は、主に大きな規模の会社を評価する際に用います。中程度の規模の会社を評価する際には、純資産価額方式と類似業種比準方式を併せて用います。
配当還元方式は、株式を有していることによって1年間に受け取れる配当金額の10倍を株式の評価額とみなす方法です。
不動産等の相続税評価額の算出だけを専門家に依頼することはできる?
「相続税の申告は自分でやりたい。でも不動産等の相続税評価額は難しくて算出できない」という場合には、相続税評価額の算出だけを専門家に依頼することも可能です。
この場合には、相続税に詳しい税理士に依頼するようにしましょう。
相続税評価額の算出は、相続税の専門家である税理士に依頼するのがおすすめです。
まとめ:相続税評価額の調べ方は財産の内容ごとに異なる
相続税を算出するためには相続税評価額を計算しなければなりません。そして、相続税評価額の計算方法は、土地・建物、株式、その他の財産など、財産ごとに異なります。
相続税評価額は、自分だけで計算することが難しい専門的なものです。また、正確に計算しなければ正しく相続税を納めることができません。
相続税評価額を算出しなければならなくなったら、相続税に詳しい税理士に相談するようにしましょう。