相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税を申告・納付しなければ延滞状態におちいります。
そして、相続税を滞納すると、延滞税や重加算税などの経済的なペナルティを課されるだけではなく、滞納処分や刑事罰のリスクにも晒されます。また、場合によっては、相続税に関する各種控除制度を利用できず、過大な相続税の負担を強いられかねないでしょう。
ですから、遺産相続が発生したときには、相続税の金策に困らないようにするために遺産分割手続きを進める必要がありますし、万が一延滞リスクに晒されているなら早期に延納制度・物納制度などの利用を検討するべきだと考えられます。
そこで、この記事では、相続税の延滞リスクに不安を抱えている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 相続税の申告・納付に関する基本ルール
- 相続税を延滞したときのペナルティ
- 相続税を延滞しそうなときの対処法
- 相続税の連帯納付義務リスク
- 相続税を延滞しそうなときに弁護士へ相談・依頼するメリット
目次
相続税はいつから延滞になる?
被相続人が死亡すると、相続が発生します。
そして、遺産を相続した相続人は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告・納付をしなければいけません。
ですから、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告・納付をしなければ、相続税を滞納したと扱われるので、延滞税が発生します。
第二十七条 相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)に係る第十五条から第十九条まで、第十九条の三から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八までの規定による相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(その者が国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
引用:相続税法|e-Gov法令検索
相続税の延滞が発生するのは申告・納付義務があるときだけ
相続税の申告・納付義務が課されるのは、遺産総額が相続税の基礎控除額を超えるときだけです。
つまり、相続した遺産総額が基礎控除額の範囲に収まる場合には、相続税を申告・納付する必要はないということです。
相続税の基礎控除額は、【3,000万円 + 法定相続人の人数 × 600万円】の計算式で算出されます。
ですから、遺産分割手続きを進めた結果、相続財産が基礎控除額の範囲に収まるなら、相続税の申告・納付や延滞税に怯える必要はありません。
第十五条 相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
引用:相続税法|e-Gov法令検索
相続税を延滞したときに科されるペナルティ
相続税を延滞したときのペナルティを紹介します。
- 相続税本税|延滞の有無にかかわらず相続税自体は常に負担する必要がある
- 延滞税|相続税の滞納日数に応じて加算されるペナルティ
- 無申告加算税|期限までに相続税を申告・納付しなかったときのペナルティ
- 過少申告加算税|本来の税額よりも少なく相続税を申告したときのペナルティ
- 重加算税|悪質な相続税の脱税事案に対して課されるペナルティ
- 滞納処分|財産を差し押さえて延滞している相続税を回収するペナルティ
- 刑事罰
- 相続税の控除制度などを利用できなくなる
【前提】相続税はそれ自体が高額の負担になる
大前提として、延滞の事実のあるなしにかかわらず、基礎控除額を超える遺産を相続した場合には、重い相続税を負担しなければいけません。
相続税の税率や控除額については以下を参考にしてください。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税を延滞した場合には、これらの相続税に延滞税などが上乗せされるので、相当な経済的負担を強いられます。現実的に考えると、相続税が払えない状況で延滞税などが加算された時点で、自力で完納を目指すのは難しいといえるでしょう。
ですから、遺産分割手続きで財産を分けかたを決めるときには、相続したい財産や割合だけではなく、相続税を捻出できるかどうかも考慮するのがおすすめです。
延滞税|相続税の滞納日数に応じて加算されるペナルティ
申告・納付期限までに相続税を申告・納付しないと、期限を徒過した事実に対するペナルティとして、延滞税が発生します。
延滞税は、原則として、法定納付期限の翌日から全額を完納する日までの日数に応じて加算されます。
ですから、相続税の滞納期間が長期化するほど延滞税の負担は重くなるので、納税負担をできるだけ軽減するには、速やかに滞納している相続税を完納する必要があるといえるでしょう。
相続税の延滞税が課される具体例
相続税の延滞税が加算される具体例として、以下のものが挙げられます。
- 申告によって確定した相続税を、法定納付期限までに完納しなかった場合
- 相続税の納付期限が経過したあとに申告書を提出し、かつ、納付しなければいけない相続税が発生している場合
- 相続税の更生や決定などの処分を受けた結果、納付しなければいけない相続税が発生している場合 など
相続税の延滞税を算出するときの利率の考えかた
本来、原則的な延滞税の税率は以下のとおりです。
- 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年7.3%
- 納期限の翌日から2か月を経過した日以後:年14.6%
ここでのポイントは、相続税の納付期限をどの程度経過したかによって、延滞税の税率が変わるという点です。つまり、相続税の延滞期間が2ヶ月を経過するまでは比較的低利率で延滞税が算出されますが、延滞期間が2ヶ月を経過すると延滞税を算出する際の利率も重くなるということです。
そして、これらの税率を前提に、相続税の延滞税は法定納付期限の翌日から全額を完納する日までの日数に応じて加算されます。
しかし、経済状況が悪化して低金利時代が継続しているため、以下のように、現在の相続税の延滞税を計算するときの利率は期間によって異なるのが実情です。
| 期間 | 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までの年利率 | 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後の年利率 |
|---|---|---|
| 令和8年1月1日から令和8年12月31日まで | 2.8% | 9.1% |
| 令和7年1月1日から令和7年12月31日まで | 2.4% | 8.7% |
| 令和6年1月1日から令和6年12月31日まで | 2.4% | 8.7% |
| 令和5年1月1日から令和5年12月31日まで | 2.4% | 8.7% |
| 令和4年1月1日から令和4年12月31日まで | 2.4% | 8.7% |
| 令和3年1月1日から令和3年12月31日まで | 2.5% | 8.8% |
| 平成30年1月1日から令和2年12月31日まで | 2.6% | 8.9% |
| 平成29年1月1日から平成29年12月31日まで | 2.7% | 9.0% |
| 平成28年1月1日から平成28年12月31日まで | 2.8% | 9.1% |
| 平成27年1月1日から平成27年12月31日まで | 2.8% | 9.1% |
| 平成26年1月1日から平成26年12月31日まで | 2.9% | 9.2% |
なお、相続税の延滞税を計算する基礎になる「納期限」は、以下のように相続税の申告手続きの状況によって異なります。
- 期限内に申告された場合:法定納付期限
- 期限後申告または修正申告の場合:申告書を提出した日
- 更正・決定の場合:更正決定等通知書を発した日から1ヶ月後の日
相続税の延滞税の計算方法
実際に相続税の延滞税を計算するときの流れ・公式を紹介します。
- 本来納付するべき相続税の金額(10,000円未満の端数を切り捨て) × 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までの税率 × 納期限の翌日から完納の日または2ヶ月を経過する日までの日数 ÷ 365日 = 金額①(1円未満の端数を切り捨て)
- 本来納付するべき相続税の金額(10,000円未満の端数を切り捨て) × 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降の税率 × 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日の翌日から完納の日までの日数 ÷ 365日 = 金額②(1円未満の端数を切り捨て)
- 金額① + 金額② = 延滞税の金額(100円未満の端数を切り捨て)
無申告加算税|期限までに相続税を申告・納付しなかったときのペナルティ
無申告加算税は、期限までに相続税の申告・納付をしなかったときに加算されるペナルティです。
相続税の無申告加算税を計算するときの税率は、以下のように延滞金額や延滞時の状況によって異なります。
【令和5年12月31日以前の無申告加算税の税率】
| 相続税額 | 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合 | 税務調査を受けてから申告した場合(過去5年以内に相続税で無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合) |
|---|---|---|---|
| 50万円以下の部分 | 5% | 10% | 15%(25%) |
| 50万円を超える部分 | 5% | 15% | 20%(30%) |
【令和6年1月1日以後の無申告加算税の税率】
| 相続税額 | 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに申告した場合(前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、かつ、同じ税目で無申告があった場合) | 税務調査を受けてから申告した場合(前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、かつ、同じ税目で無申告があった場合/過去5年以内に相続税で無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合) |
|---|---|---|---|
| 50万円以下の部分 | 5% | 10%(20%) | 15%(25%) |
| 50万円を超え300万円以下の部分 | 5% | 15%(25%) | 20%(30%) |
| 300万円を超える部分 | 5% | 25%(35%) | 30%(40%) |
過少申告加算税|本来の税額よりも少なく相続税を申告したときのペナルティ
過少申告加算税とは、期限までに申告をしたものの、申告額が本来の税額よりも少なかったときに課されるペナルティのことです。
過少申告加算税を計算するときの税率は以下のとおりです。
| 追加で納める税額 | 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合 | 税務調査の事前通知を受けてから税務調査を受けるまでに修正申告した場合 | 税務調査を受けてから修正申告した場合または更正を受けた場合 |
|---|---|---|---|
| 当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下の部分 | なし | 5% | 10% |
| 当初の納税額と50万円のいずれか多い方を超える部分 | なし | 10% | 15% |
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に相続税を計算し直して修正申告をすれば過少申告加算税は課されずに済むので、できるだけ早いタイミングで修正申告の作業をするのがおすすめです。
なお、この場合でも延滞税は発生するので注意をしてください。
重加算税|悪質な脱税事案に対して課されるペナルティ
重加算税とは、財産の隠匿や証拠の偽造などの悪質な行為態様によって相続税を脱税したときに課されるペナルティのことです。
たとえば、税務調査を免れる目的で他人名義の預貯金口座にお金を移した場合や、遺産分割協議書を偽造して相続財産を過小に偽ったりした場合などが挙げられます。
重加算税を算出する際の税率は以下のとおりです。
| 申告書提出の有無 | 税率 |
|---|---|
| 申告書を提出していた場合(過少申告) | 35% |
| 申告書を提出していなかった場合(無申告) | 40% |
※過去5年以内に相続税で無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合:税率が10%さらに加算
※前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課された、かつ、同じ税目で無申告があった場合:税率が10%さらに加算
滞納処分|財産を差し押さえて延滞している相続税を回収するペナルティ
相続税を滞納し、延滞税や重加算税が課されたにもかかわらず、これらを完納しないと、最終的には滞納処分が実行されます。
滞納処分とは、相続税の納付義務がある人物の所有する財産を差し押さえて競売にかけて換価する処分のことです。基本的には相続財産を対象に滞納処分は実施されますが、事案によっては、相続人の固有の財産である不動産、預貯金、現金、自動車、給与など、あらゆるプラスの財産が滞納処分の対象になる可能性があります。
相続税を滞納してから滞納処分が実行されるまでの一般的な流れは以下のとおりです。
- 相続税の滞納が発生する
- 滞納後、約50日を目安に、国税庁から督促状が送付される
- 電話や訪問などによる催告が繰り返される
- 督促状が送付されて10日以上が経過すると、いつ滞納処分が実施されて財産が差し押さえられるかわからない
第三十七条
2 前項の督促状は、国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、その国税の納期限から五十日以内に発するものとする。
3 第一項の督促をする場合において、その督促に係る国税についての延滞税又は利子税があるときは、その延滞税又は利子税につき、あわせて督促しなければならない。
引用:国税通則法|e-Gov法令検索
第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
二 納税者が国税通則法第三十七条第一項各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、当該請求に係る期限)までに完納しないとき。
2 国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項各号(繰上請求)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
3 第二次納税義務者又は保証人について第一項の規定を適用する場合には、同項中「督促状」とあるのは、「納付催告書」とする。
(相続があつた場合の差押)
第五十一条 徴収職員は、被相続人の国税につきその相続人の財産を差し押える場合には、滞納処分の執行に支障がない限り、まず相続財産を差し押えるように努めなければならない。
2 被相続人の国税につき相続人の固有財産が差し押えられた場合には、その相続人は、税務署長に対し、他に換価が容易な相続財産で第三者の権利の目的となつていないものを有しており、かつ、その財産により当該国税の全額を徴収することができることを理由として、その差押換を請求することができる。
3 税務署長は、前項の請求があつた場合において、その請求を相当と認めるときは、その差押換をしなければならないものとし、その請求を相当と認めないときは、その旨を当該相続人に通知しなければならない。この場合においては、前条第五項の規定を準用する。
引用:国税徴収法|e-Gov法令検索
督促状の送付や差し押さえが実施されるタイミングは事案によって異なります。
ただし、相続税を延滞している以上、いつ差し押さえが実行されてもおかしくない状況に置かれているので、せっかく相続した財産や自分の資産を手放したくないなら、できるだけ早いタイミングで滞納処分などが実施されないような対策を講じる必要があるといえるでしょう。
刑事罰
相続税を延滞したときの行為態様次第では、刑事罰が科される可能性があります。
たとえば、偽造などの不正な手段によって相続税の支払いを免れた場合には、「10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(併科あり)」の範囲で処断されます。
また、期限までに申告書・修正申告書を提出せずに相続税の支払いを逃れたときには、「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(併科あり)」の範囲で刑事罰が科されます。
2 前項の免れた相続税額又は贈与税額が千万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、千万円を超えその免れた相続税額又は贈与税額に相当する金額以下とすることができる。
3 第一項に規定するもののほか、期限内申告書又は第三十一条第二項の規定による修正申告書をこれらの申告書の提出期限までに提出しないことにより相続税又は贈与税を免れた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 前項の免れた相続税額又は贈与税額が五百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円を超えその免れた相続税額又は贈与税額に相当する金額以下とすることができる。
引用:相続税法|e-Gov法令検索
相続税の控除制度などを利用できなくなる
被相続人が死亡して遺産相続が発生した場合、相続税の負担を軽減する目的から、さまざまな控除制度が用意されています。
しかし、これらの相続税の控除制度を利用するには、原則として、期限までに相続税の申告・納付を済ませなければいけません。
ですから、相続税を延滞すると、控除制度による節税効果を享受できなくなると理解しておきましょう。
相続税に対して適用される控除制度として、以下のものが挙げられます。
相続税の延滞税が免除される場合3つ
相続税の申告期限に納付が間に合わなかったとしても、以下のような場合には、延滞税などのペナルティが免除される可能性があります。
- 延滞税の免除期間の要件を満たす場合
- 災害などのやむを得ない理由がある場合
- 消滅時効が完成した場合
延滞税の免除期間の要件を満たす場合
延滞税が発生したとしても、以下の状況にある場合には、一定範囲で延滞税が免除されます(国税通則法第61条)。
- 期限内に申告をしたのち、自主的に修正申告した場合:法定納期限から1年を経過した日の翌日から修正申告書などの提出日までの期間は延滞税が免除される
- 期限後に申告をしたのち、自主的に修正申告した場合:期限後申告日から1年を経過した日の翌日から修正進行書などの提出日までの期間は延滞税が免除される
- 期限内に申告をしたのち、税務署による更正・決定を受けた場合:法定納期限から1年を経過した日の翌日から更正通知書が発された日までの期間は延滞税が免除される
- 期限後に申告をしたのち、税務署による更正・決定を受けた場合:期限後申告日から1年を経過した日の翌日から更正通知書が発された日までの期間は延滞税が免除される
- 申告後に職権で減額更正があり、その後にさらに修正申告・増額更正があった場合:修正申告・増額更正があるまでの期間は延滞税が免除される
- 申告後に更正の請求があり、その後にさらに修正申告・増額正があった場合:減額更正から1年間に限り延滞税が課され、修正申告・増額更正があるまでは延滞税は課されない
ただし、偽造などの不正の手段などによって相続税の支払いを免れようとした事情がある場合には、これらの延滞税の免除制度は適用されません。
災害などやむを得ない理由がある場合
災害などのやむを得ない理由によって相続税の申告・納付が難しい場合には、災害などの原因がなくなった日から2ヶ月に限って、期間を延長できます。
第十一条 国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる。
引用:国税通則法|e-Gov法令検索
(1) 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通途絶その他の人為による異常な災害
(3) 申告等をする者の重傷病、申告等に用いる電子情報処理組織(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第6条第1項《電子情報処理組織による申請》に規定する電子情報処理組織をいう。)で国税庁が運用するものの期限間際の使用不能その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実
引用:国税通則法基本通達 第11条関係 災害等による期限の延長|国税庁
なお、災害などの理由によって相続税の申告・納付期限が延長されたときには、申告書を提出した日が納付期限と扱われるので、遅くとも申告と同時に納付をするか、申告の前に納付を済ませてしまう必要があります。
というのも、もし、申告をしてから納付をするまでの間に一定期間が生じると、たとえ数日であったとしても、その期間分の延滞税が加算されるからです。
相続税・延滞税が消滅時効にかかった場合
相続税は、法定納付期限(自己のために相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月)から5年間が経過すると、消滅時効にかかります。
ですから、相続税の消滅時効が完成した場合には、相続税や延滞税などの納付義務は消滅します。
第七十二条 国税の徴収を目的とする国の権利(以下この節において「国税の徴収権」という。)は、その国税の法定納期限(第七十条第三項(国税の更正、決定等の期間制限)の規定による更正若しくは賦課決定、同条第四項の規定による賦課決定、前条第一項第一号の規定による更正決定等、同項第三号の規定による更正若しくは賦課決定又は同項第四号の規定による更正決定等により納付すべきものについては、第七十条第三項若しくは前条第一項第一号若しくは第三号に規定する更正、第七十条第四項に規定する賦課決定、前条第一項第一号に規定する裁決等又は同項第四号に規定する更正決定等があつた日とし、還付請求申告書に係る還付金の額に相当する税額が過大であることにより納付すべきもの及び国税の滞納処分費については、これらにつき徴収権を行使することができる日とし、過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第三項において同じ。)から五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。
2 国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。
3 国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する。
引用:国税通則法|e-Gov法令検索
ただし、国税庁は相続税の申告漏れや過少申告などを適切に管理しているので、相続税や延滞税が消滅時効にかかる可能性は極めてゼロに近いです。
たとえば、相続税の申告・納付期限が経過しても納税義務者が適切に履行をしない場合には、更正や決定、賦課決定・納税に関する告知・督促・交付要求などの手段を尽くして、消滅時効の完成猶予や更新を狙ってくるでしょう。そして、申告・納付するタイミングが遅れるほど、最終的に加算される延滞税などは高額になってしまいます。
ですから、相続税の申告・納付期限から一定期間が経過したとしても、消滅時効完成を狙うのではなく、速やかに相続税を支払うための対策を講じるべきだと考えられます。
ほかの相続人が延滞すると連帯納付義務が科される
本来、相続税は、遺産を相続した本人が自分で申告・納付をするのが原則です。
しかし、相続人の一部が相続税を滞納した場合には、ほかの相続人が代わりに滞納している相続税の納付を強いられます。これを、相続税の連帯納付義務と呼びます。相続税の連帯納付義務によって支払いを命じられるのは、相続によって受けた利益の価額に相当する金額が限度です。
第三十四条 同一の被相続人から相続又は遺贈(第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下この項及び次項において同じ。)により財産を取得した全ての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。
引用:相続税法|e-Gov法令検索
相続税の連帯納付義務に基づいて納付を求められるときの一般的な流れは以下のとおりです。
- 相続人Aが期限までに相続税を納付せずに延滞状況におちいる
- 申告期限から50日以内に、税務署が相続人Aに対して督促状を送付する
- 督促状が送付されたにもかかわらず相続人Aが1ヶ月以上延滞をつづけると、連帯納付義務者である相続人Bに対して「完納されていない旨等のお知らせ」が送付される
- 相続人Aの延滞状況がさらに継続すると、連帯納付義務者である相続人Bに対して「納付通知書」が送付される
- 連帯納付義務者である相続人Bが「納付通知書」を受け取ってから2ヶ月以上延滞すると、督促状が送付される
- 連帯納付義務者である相続人Bも滞納処分の対象になる
相続税の連帯納付義務は、相続税の申告期限から5年間経過しないと消滅しません。そして、税務署の処理ミスによって相続税の連帯納付義務が消滅時効にかかる可能性は極めてゼロに近いです。
ですから、自分の分の相続税を申告・納付をしても、ほかの相続人が適切に相続税を申告・納付したかを必ず確認するようにしてください。
相続税を延滞しそうなときの対処法6つ
さいごに、相続税を延滞しそうなときの対処法を6つ紹介します。
- 相続税の申告期限・納付期限の延長を求める
- 相続税の延納制度の利用を検討する
- 相続税の物納制度の利用を検討する
- 所有不動産の現金化や借金などの金策を検討する
- 相続税を納付できるかも考慮して遺産分割協議をおこなう
- 遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に相談・依頼する
相続税の申告期限・納付期限を延長できるか相談する
原則として、相続税の申告期限・納付期限は延長できません。
しかし、以下のような事由がある場合には、相続税の申告期限・納付期限を2ヶ月延長できるとされています。
- 認知、相続人の廃除、相続の回復、出産などによって相続人に異動が生じたとき
- 遺贈に関する遺言書が見つかったとき、遺贈の放棄があったとき
- 申告期限の1ヶ月前に相続人の失踪宣告があったとき
- 相続などによって取得した財産の権利の帰属に対する訴えの判決が確定したとき
- 災害などのやむを得ない理由があるとき
- 申告期限の1ヶ月前に退職金などの支給額が確定したとき など
相続税の申告期限・納付期限を延長するには、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出が必要です。
当初の期限までに「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しなければ延滞税が加算されるので、期限の延長を希望する場合には、速やかに所定の手続きを履践してください。
【参照】C1-15、H1-22 災害による申告、納付等の期限延長申請|国税庁
相続税の延納制度の利用を検討する
相続税は、期限までに現金で一括払いするのが原則です。
しかし、以下のような要件を満たす場合には、納付が困難とされる金額を限度に、年賦の分割払いでの納付が認められます。これを、相続税の延納制度と呼びます。
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保不要)
- 延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること
延納制度利用時の担保は、国債、地方債、社債などの有価証券、土地、建物、税務署長が認める保証人による保証などが挙げられます。
なお、延納期間中は利子税の納付が必要になるので注意をしてください。
相続税の物納制度の利用を検討する
相続税は金銭納付が原則です。
しかし、延納制度を利用しても金銭での納付が難しい場合には、その納付が困難とされる金額を限度に、一定の相続財産による納付が認められています。これを相続税の物納制度と呼びます。
相続税の物納制度を利用するときの要件は以下のとおりです。
- 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること
- 不動産や上場株式などの有価証券、動産などの物納制度の適用を受ける相続財産に該当すること
- 管理処分不適格財産に該当しないこと(担保が設定されている、権利関係に争いがあるなど)
- 物納申請期限までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること
所有不動産の現金化や借金などの金策を検討する
相続税の延滞を防ぐ現実的な手段を紹介します。
たとえば、相続税を納付するだけの現金はないものの、不動産や自動車、貴金属類などの財産は手元にあるなら、これらを売却して現金化する方法が考えられます。
また、消費者金融や銀行からの借入を相続税資金に充てるのも選択肢のひとつです。ただし、利息などの返済条件に注意が必要です。
さらに、家族や親族から相続税を立て替えてもらえるかも検討してください。カードローンやキャッシングなどとは異なり、利息や返済期間についてある程度融通してもらえる可能性があります。
相続税を納付できるかを踏まえて遺産分割協議を進める
遺産分割協議をおこなうときには、数ヶ月後にやってくる相続税の申告・納付にも対応できるかという視点も加味するのがポイントです。
たとえば、相続人が十分な預貯金を有しておらず、かつ、遺産が土地・建物だけの場合、土地・建物をそのままの状態で相続すると、間違いなく相続税を支払うときの金策に困るはずです。それならば、遺産分割協議の段階で土地・建物を換価分割して現金の形で相続して相続税の申告・納付に備えるのが合理的でしょう。
被相続人が死亡すると一定範囲の遺産を取得できるので経済的なメリットは大きいですが、同時に、相続税の納付という支出面にも配慮が必要です。遺産分割協議の段階で相続税のこともしっかり考えておけば、相続税の延滞リスクを大幅に軽減できるでしょう。
遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に相談・依頼する
遺産相続が発生したときには、念のために一度は弁護士に相談・依頼をするのがおすすめです。
遺産相続実務に詳しい弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得ることができるでしょう。
- 丁寧に相続財産調査をおこない、相続税の納付義務が生じる状況かを判断してくれる
- 相続税の納付で困らないような遺産分割協議案を提案してくれる
- ほかの相続人との協議を代理してくれるので、スムーズな遺産分割協議の成立を期待できる
- 遺産分割協議が不成立に終わっても、遺産分割調停・審判といった家庭裁判所関係の手続きを代理してくれる
- 相続税の申告や延納制度・物納制度の申立てなどの各種手続きをサポートしてくれる
- 連帯納付義務に基づいてほかの相続人の相続税を肩代わりしたときには速やかに求償権を行使してくれる など
相続税の延滞が不安なときには弁護士に相談・依頼をしよう
相続税は、所定の期日までに現金一括払いで申告・納付するのが原則です。
万が一滞納すると延滞税などのペナルティを課されるだけではなく、滞納処分によって財産が差し押さえられたり刑事罰を科されたりしかねない状況におちいってしまいます。
ですから、遺産相続が発生したときには、将来的な相続税の申告・納付を見据えて遺産分割手続きを進めるのが重要だと考えられます。
遺産相続相続弁護士ほっとラインでは、相続税の延滞トラブルなどの遺産相続問題への対応が得意な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほど有利な解決を期待しやすくなるので、できるだけ早いタイミングで信頼できる法律事務所までお問い合わせください。