相続で多くの財産を受け継ぐと、相続税を納めなければならないことがあります。
相続税は、何もしなくても税務署が計算して通知してくれるわけではなく、自分で申告・納付しなければなりません。また、相続税の申告には期限があります。
目次
相続税の申告期限・納付期限は原則「10ヶ月以内」
相続をして財産を受け継ぎ、相続税が発生したら、自分で相続税の申告をしなければなりません。
相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。相続税の納付も同じ時までに行う必要があります。
申告には必要な書類があることもあるため、必要な書類はこの10ヶ月という期間のうちに集めなければなりません。
10ヶ月という期間は長いようにも思えますが、被相続人が亡くなってからのことであり故人の死後事務を処理するために慌ただしくしていることも多いため、想像以上にすぐに10ヶ月が過ぎてしまいます。段取りよく準備を行い相続税の申告を進めることが大切です。
相続税の申告期限を過ぎたらどうなる?
相続税の申告期限を過ぎても申告をしなかった場合には、ペナルティとして「延滞税」がかかります。延滞税は利息に相当するペナルティとしての税金で、日が経つごとに加算されていきます。
令和8年中であれば、申告・納付期限の翌日から2か月が経つ日までは年2.8%の割合で、申告・納付期限の翌日から2か月が経つ日以降は年9.1%の割合で、延滞税が課されます(割合は年によって変わります)。
このほかにも、相続税をあえて申告しないままでいると、「無申告加算税」という税金がかかることもあります。無申告加算税はルールどおりに期限までに申告をしなかった場合に課されることがあるペナルティとしての税金で、原則として、15%〜30%の割合をかけて計算した金額が無申告加算税とされます。
ただし、期限後でも税務署の調査の通知を受ける前の段階で自主的に申告を行った場合には、無申告加算税が5%まで軽減されます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
このことから、たとえ期限後であってもできる限り速やかに相続税の申告・納付を行うようにするべきです。
相続税の申告期限・納付期限に間に合わない場合の対処法
相続税は期限どおりに申告・納付しようと思っていても様々な事情でそのようにできないことが多くあります。期限どおりに申告・納付できなかったとしても、適切な対処法をとることでデメリットを最小限にすることができます。
相続税の申告期限に間に合わない場合の対処法
相続税の申告期限に間に合わない場合には、「未分割申告」を行うという方法があります。
未分割申告を行う際には、「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を申告書に添付します。
未分割申告を行っておけば、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられることを防ぐことができます。
また、相続税の申告期限に遅れてしまうと相続税を軽減するための特例が適用できなくなってしまいますが、未分割申告を行った上で「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、相続税の申告期限後であっても相続税を軽減するための特例を適用できます。
相続税の納付期限に間に合わない場合の対処法
相続税を期限までに申告できたとしても、納付するための現金を用意できないことがあります。相続税は原則として現金で一括にて納付しなければなりません。このため、相続税の額が多くなれば、一括納付のための現金を用意することが難しくなることがあるのです。
このような場合の対策として、まず、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を活用するという方法があります。この制度は、遺産分割協議がまとまって預金を自由に使えるようになる前の段階であっても、相続人が単独で故人の預金を一定の額までであれば金融機関から引き出せる制度です。
遺産分割協議を一部についてのみ先に成立させて預金を引き出すという方法
この方法では相続人全員の同意が必要となりますが、同意さえ得られるのであれば遺産分割協議が成立した分については自由に預金を使うことができるようになるため、それを使って相続税を納めることができます。
クレジットカードで納付する方法
現在、相続税はクレジットカードで納付することが認められています。クレジットカードであれば現金が手元になくても高額に上ることもある相続税を納めることが可能となります。
また、クレジットカードの契約内容次第ですが、納めた相続税を一括で引き落とされるのではなく分割などで引き落とされるように設定できることもあり、手持ちの現金に限りがある場合には使える方法です。
延納や物納という方法
相続税の申告期限は延長できる?
相続税の申告・納付期限は、原則として延長することができません。
申告・納付期限が延長されるのは、最大で2ヶ月です。
具体的に申告・納付期限の延長が認められるケースには、主に次のようなものがあります。
- 災害などのやむを得ない理由があるケース
- 申告期限から1ヶ月以内に退職金などの支給額が確定したケース
- 相続人となる胎児がいるケース
- 認知や相続人廃除、相続回復その他の事由により相続人に異動が生じたケース
- 遺贈に関する遺言書が発見されたり遺贈の放棄があったりしたケース
- 相続人の失踪宣告があったケース
- 相続等により取得した財産について権利の帰属に対する訴えの判決があったケース
これらは、いずれも期限内に相続税の申告・納付を終えられなくてもしかたがないと考えられるケースです。これらのケースに該当しても、最大2ヶ月延長されるにとどまるため、それ以上に大幅な延長を求めることはできません。
相続税の申告・納付期限を延長するためには、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を作成・提出して税務署に申請します。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/kosei/annai/2834.htm
このような方法で相続税の申告期限を延長したときは、申告書を提出した日が相続税の納付期限となります。このため、申告から納付までが遅れてしまうと延滞税がかかってしまいます。申告と同時に相続税を納付するようにしましょう。また、申告書を提出するのに先立って相続税を納付しても構いません。
相続税の申告は自分でできる?
相続税の申告は、自分でもできます。相続税申告を必ず税理士に任せなければならないというルールはありません。
もっとも、現実的には相続税申告を自分で行っている人はそれほど多くありません。あるデータによれば、相続税申告のうち80%以上のケースで税理士が関与しているとされています。自分だけで最後まで相続税申告を行う人は全体の20%未満であり、圧倒的に少数派であると考えることができます。
相続税申告を自分でやる最大のリスク
相続税申告を自分でやる最大のリスクは、相続した財産の申告漏れとそれに伴う追加の課税です。
相続税申告についての知識が十分になければ、「この財産は相続税申告の際に相続財産に計上しなくてもいい」と誤った判断をしてしまうことがあり、そのような誤った判断は相続税の過少申告につながってしまいます。
相続税の申告を自分だけでもできるケース
もっとも、比較的単純な事案など相続税の申告を自分だけでもできるケースがないわけではありません。
例えば、相続税の申告を自分だけでもできるケースには、次のようなものがあります。
- 相続人が1人など比較的単純な事案であるケース
- 相続税評価を比較的簡単に行える財産だけで相続財産が構成されているケース
- 相続税申告のためにたくさんの時間と労力を確保できるケース
逆に、これらのケースに該当しないのであれば、相続税申告を税理士に任せたほうがよい可能性が高まります。
相続税の申告を税理士に任せるメリット
相続税の申告を税理士に任せることには様々なメリットがあります。
自分ではできない難しい書類作成や財産評価を任せられる
相続税の申告を税理士に任せれば、難しい書類作成や財産評価を代わりに行ってもらえます。
相続財産が現金や預金だけなら評価は難しくないかもしれませんが、上場していない株式や不動産が相続財産に含まれる場合には財産評価が難しくなってしまいます。
また、相続税の申告書には記入すべきところがたくさんあり、申告書を読めばどう書いたらいいのかわかるわけではない部分も多いため、自分だけでは申告書を正確に作成するのは難しいことも多いです。
手間や時間を節約できて相続税申告の負担を大幅に軽減できる
相続税申告のためには、必要な書類を集めたり相続財産を評価したり、遺産分割協議書を作成したり申告書を作成・提出したりするなど、様々な作業を行わなければなりません。
これらの作業を行うためには、場合によっては数十時間から100時間以上もの時間を費やす必要が生じることもあります。このような作業を相続直後に相続人だけで行うことは、労力がとてもかかって負担になることはもちろん、精神的にも非常につらいものです。
使える控除や特例の適用を検討してくれる
相続税の申告を税理士に依頼すれば、申告時に使える控除や特例の適用を検討してくれます。これにより、不必要に多く相続税を支払わなくても済む可能性が高まります。
自分で申告をしていれば見落としていた可能性のある相続税申告の際に使える控除や特例も、税理士に依頼をすれば見落とすことなく検討してくれます。
まとめ:相続税の申告・納付の期限は原則「10ヶ月」
相続税の申告・納付の期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月です。この期限までに相続税の申告・納付を行わなければなりません。
そのような場合には、放置せずに税理士のような専門家に依頼するべきです。
相続税の申告で少しでも困ったら、税理士のような専門家に依頼しましょう。