不当利得返還請求とは?遺産使い込みなどの相続トラブルが発生したときの解決方法や弁護士に相談するメリットを解説

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不当利得制度とは、ある者が利益を保持しているものの、その者による利益の保持が法的に正当化されない場合に、この利益を本来保持するべき者に変換するべき義務を受益者に負わせる制度のことです。

受益者の利益保持によって損失を被った者は、受益者に対して、不当利得返還請求権を行使して、一定範囲の財産などを取り戻すことができます。

不当利得返還請求は私法上のさまざまな場面で問題になりますが、特に、遺産相続の場面でトラブルになることが多いです。

たとえば、一部の法定相続人による遺産使い込みが発覚したケース、被相続人名義の賃貸物件の賃料が着服されたケースなどが挙げられます。

そこで、この記事では、不当利得返還請求が問題になる遺産相続トラブルに巻き込まれた人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。

  • 不当利得返還請求権の要件
  • 不当利得返還請求で取り戻すことができる財産などの範囲
  • 不当利得返還請求をするときの流れ
  • 不当利得返還請求をする際に弁護士へ相談・依頼するメリット

不当利得返還請求権の4要件

不当利得返還請求権とは、法律上の原因がないのに他人の財産・労務によって利益を得た受益者に対して、損害を受けた者が、不正によって得た利益の返還を求める権利のことです。

(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
引用:民法|e-Gov法令検索

そのため、不当利得返還請求権を行使するときには、以下4要件を主張・立証する必要があると考えられます。

  1. 受益(不当利得返還請求をされた側が、他人の財産や労務によって利益を受けていること)
  2. 損失(不当利得返還請求をする側が、財産や労務によって損失を強いられていること)
  3. 受益と損失との間の因果関係
  4. 受益について法律上の原因がないこと

たとえば、相続人Aが、被相続人名義の預金口座から自分の預金口座に、無断で送金をしたケースについて考えてみましょう。

まず、相続人Aは自分の預金口座に送金してお金を手にしているので、受益があると考えられます。

次に、被相続人名義の預貯金は遺産分割手続きの対象になるものなので、相続人Aによる無断送金によって遺産が流出しており、A以外の相続人には損失が生じています。

さらに、相続人Aの受益と、A以外の相続人の損失は、相続人Aによる無断送金という手段によって繋がっているため、受益と損失との間の因果関係も肯定されます。

そして、遺産分割手続きが終了していない段階で相続人Aが無断で被相続人名義の預貯金口座からお金を持ち出す行為には法的根拠がない以上、相続人Aの受益には法律上の原因がないと判断されます。

相続で不当利得返還請求権が問題になる事案

不当利得返還請求権は私法上のさまざまなシチュエーションで問題になりますが、特に、遺産相続の場面でもトラブルになることが多いです。

たとえば、遺産相続の場面で不当利得返還請求が問題になる事例として、以下のものが挙げられます。

  • 相続財産の使い込み
  • 不動産の売却代金や賃料などの着服
  • 生命保険の無断解約
  • 株式の無断売却
  • 誤振込されたお金の着服 など

不当利得返還請求権を行使できる範囲

不当利得返還請求権を行使して取り戻すことができる財産の範囲は、受益者側の主観や第三者の関与などの事情によって異なります

善意|利益が現存する限度

善意とは、法律上の原因なく利得を受け取ったことを知らないことを意味します。

そして、受益者が善意の場合、不当利得返還請求をしても、取り戻すことができるのは現存利益に限られるのが原則です。

たとえば、相続人のひとりが被相続人名義の口座から現金を引き出したケースにおいて、引き出した現金を1円も使わずにそのまま自宅に保管していた場合、引き出した現金全額が現存利益になるので、不当利得返還請求によって全額を取り戻すことができます。

これに対して、引き出した現金の大半を使い込んでしまった場合、もしその相続人の主観が善意であるならば、不当利得返還請求権を行使しても、受益者の手元に残っている金額しか取り戻すことができません。つまり、受益者が善意の場合、無断で費消されたお金は取り戻せないということです。

受益者が利得を得た当時は善意であったとしても、その後、その利得に法律上の原因がないことを認識した場合には、認識をした以降は悪意の受益者と扱われます。ですから、認識後の利得の減少・消滅については、不当利得返還義務の範囲を減少させません(最判平成3年11月19日)。
受益者の手元に利益が現存しないように見えても、受益者に出費の節約が認められる場合(減るはずの財産が減らずに残っている場合)には、出費の節約相当分については現存利益として返還の対象になります。たとえば、本来であれば自己の財産から支出をすることでその財産が減少したはずのところ、獲得した利得をこの出費に充てることによって、自己の財産からの支出を免れたような場合が挙げられます。

悪意|利益に利息を付する

悪意とは、利得に法律上の原因がないことを知っていたことを意味します。

受益者が悪意の場合、不当利得返還請求によって、受益全額だけではなく利息も受け取ることができます。また、損害が発生しているときには、賠償責任を追求することも可能です。

たとえば、被相続人の預貯金を無断で持ち出した事案では、持ち出した金額に加えて、利息の支払い義務も生じます。法定利率は原則として3%ですが、3年に一度見直されます。

(法定利率)
第四百四条
2 法定利率は、年三パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
引用:民法|e-Gov法令検索

また、無断で持ち出した預貯金を使い切ってしまった場合には、費消した金額についての賠償責任も問われるのが実情です。

悪意の受益者が他人の財産を無断で使用収益している場合には、その天然果実・法定果実も返還義務の対象になります。たとえば、被相続人名義の不動産を勝手に賃貸して家賃を得ていた場合、家賃相当分についても返還しなければいけません

第三者に譲渡されたらどうなる?

被相続人の財産を相続人Aが無断で引き出して、その現金を使って自分の借金を債権者Bに返済したような事案では、損失者と第三者との関係が問題になります。

現在の判例は、受益と損失との間に社会観念上の因果関係があるかどうかについて、個別具体的な事情を総合的に考慮して、不当利得返還請求を認めるかどうかを判断しています(最判昭和49年9月26日)。

たとえば、相続人Aが横領したお金を使って借金を返済した事実を債権者Bが知っていた場合(悪意)、資金繰りが難しかった相続人Aがいきなり借金を完済した点から金策方法に違法性がある疑いが生じた場合(有過失)などでは、第三者に対する不当利得返還請求権が認められる可能性があります。

不当利得返還請求権はいつまで行使できる?

不当利得返還請求権には消滅時効制度が適用されるので、いつまでも金銭などを取り戻すことができるわけではありません。

不当利得返還請求権の消滅時効

不当利得返還請求権は、権利を行使できることを知ったときから5年間、もしくは、権利を行使できるときから10年間で消滅時効が完成します。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用:民法|e-Gov法令検索

民法改正によって不当利得返還請求権の消滅時効期間は短くなったので、遺産の使い込みなどが発覚したときには、できるだけ早いタイミングで法的措置に踏み出す必要があるといえるでしょう。

不当利得返還請求権の消滅時効完成を防ぐ方法

不当利得返還請求権が消滅時効にかかりそうなときには、時効の完成猶予・時効の更新という対抗手段を講じる必要があります。

  • 時効の完成猶予:時効の完成猶予事由の発生によって、消滅時効の完成が先延ばしにされること
  • 時効の更新:時効の更新事由の発生によって、今まで進行してきた時効期間がすべてリセットされること

時効の完成猶予・時効の更新に該当する事由として、以下のものが挙げられます。

時効の完成猶予 ・裁判上の請求等(訴訟の提起、支払督促、調停の申し立て、破産手続参加など)
・強制執行の申し立て
・仮差し押さえ、仮処分
・催告
・協議をおこなう旨の合意
時効の更新 ・判決の確定など
・債務の承認
・支払い猶予の申込み
・利息の支払い
・一部弁済

ですから、遺産の使い込みなどが発覚して消滅時効期間が迫っているなら、速やかに内容証明郵便を送付するなどの法的措置をとってください

遺産相続トラブルで不当利得返還請求権を行使する方法

遺産の使い込みなどが発覚して不当利得返還請求権を行使するときの一般的な流れについて解説します。

  1. 内容証明郵便を送付する
  2. 当事者間で協議をおこなう
  3. 民事訴訟を提起する

内容証明郵便を送付する

まずは、遺産を使い込むなどして不当に利得を得た人物にに対して、内容証明郵便を送付します。

内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容の文書を、誰が誰に差し出したのか」という事実を、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明する制度のことです。

内容証明郵便の形式で不当利得返還請求をすれば、郵便物を送付したときから6ヶ月を経過するまでは、消滅時効の完成を猶予できます

(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
引用:民法|e-Gov法令検索

なお、内容証明郵便を送付する際には、その前の段階で、遺産の使い込みなどを立証できる客観的証拠をできるだけ確保しておきましょう。

証拠を確保する前に内容証明郵便を送ってしまうと、不当利得返還請求を根拠づける証拠を隠滅されてしまうからです。

遺産の使い込みなどを証明するには、被相続人名義の預貯金口座のお金の流れを把握するなどの入念な調査が欠かせません。素人の調査には限界があるので、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

当事者間で協議をおこなう

内容証明郵便を送付したあとは、当事者間で不当利得トラブルについて協議をおこないます

遺産分割手続きを進めている段階で遺産の使い込みなどが発覚したときには、遺産分割協議を進めるなかで遺産の返還などについて話し合うことも可能です。

また、遺産分割手続きが終了したあとに遺産の使い込みなどが発覚した事案では、使い込んだ遺産を返還させたうえで、遺産分割協議をやり直しする必要があります。

民事訴訟を提起する

当事者間で協議をしても不当利得トラブルが解決しない場合には、民事訴訟を提起して、不当利得返還請求をする必要があります

遺産の使い込みなどについて民事訴訟で争う場合には、裁判所に提出するための証拠や書面を用意したり、尋問準備をしたりしなければいけません。また、定期的に開催される口頭弁論期日への出席にも追われます。

不当利得返還請求を認容する判決が確定すると、相手方が判決の内容を履行します。もし、遺産の使い込みをした人物が判決を履行しないときには、強制執行によって相手方の預貯金・不動産・給与などを差し押さえなければいけません

遺産相続で不当利得返還請求が問題になったときに弁護士に相談・依頼するメリット4つ

遺産の使い込みなどが発覚して不当利得返還請求をする必要があるときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

というのも、遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士の力を借りることで、以下4つのメリットを得られるからです。

  1. 不当利得返還請求を根拠づけるための客観的証拠を確保してくれる
  2. 遺産の使い込みをした相続人などとの交渉を代理してくれる
  3. 民事訴訟などの裁判所関係の手続きを代理してくれる
  4. 遺産分割手続きのやり直しなどをサポートしてくれる

相続財産の使い込みなどを調査してくれる

遺産の使い込みなどについて相手方の法的責任を追求する際には、証拠の確保が不可欠です。

しかし、遺産の使い込みなどを立証するのは簡単ではありません

たとえば、被相続人名義の預貯金口座の入出金履歴を精査したり、遺産の使い込みが疑われる人物が何にお金を使ったのかを調査したりしなければいけませんが、素人の調査権限では限界があるでしょう。

弁護士に相談・依頼をすれば、不当利得返還請求権を立証するのに役立つ証拠の種類や確保方法についてアドバイスをくれたり、弁護士会照会制度を活用してさまざまな証拠を確保してくれたりするでしょう。

相続財産を使い込んだ相手方と交渉してくれる

遺産の使い込みなどが発覚すると、不当利得の返還について相手方との交渉が必要です。

しかし、相続人同士だけで協議を進めようとしても、感情的になって話し合いが進まない可能性があります。たとえば、返還できる資金が手元に残っていたとしても、感情的な軋轢が原因でお金が戻ってこないというケースも少なくありません。

遺産相続トラブルの経験豊富な弁護士に依頼をすれば、代理人として交渉を進めてくれるので、不当利得返還請求トラブルの早期解決を期待しやすくなるでしょう。

民事訴訟の手続きに対応してくれる

協議段階で相手方が不当利得返還請求に応じない場合には、民事訴訟を提起するしかありません。

また、遺産分割協議がまとまらないときには、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用せざるを得ません。

遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に依頼をすれば、これらの裁判所関係の手続きをすべて代理してくれるので、依頼者は提起的に弁護士と打ち合わせをするだけで遺産の使い込みなどの紛争の解決を目指せるでしょう。

必要であれば遺産分割手続きのやり直しをサポートしてくれる

遺産分割手続きが終了したあとに遺産の使い込みなどが発覚した場合、使い込まれた遺産を取り戻したうえで、遺産分割について再協議をする必要があります。

特に、使い込みが発覚した遺産が重要なものであった場合、先行する遺産分割協議を取り消したうえで、遺産分割手続き全体をやり直さなければいけません。

遺産相続事案の経験豊富な弁護士に相談・依頼をすれば、遺産分割手続きのやり直しのサポートも期待できるでしょう。

相続人に不当利得返還請求権を行使するときには弁護士へ相談しよう

遺産相続の際に不当利得返還請求が問題になった事案では、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をするのがおすすめです

遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士の力を借りることで、遺産使い込みなどの証拠を確保したり、不当利得返還請求権を行使する手続きを代理してくれたりするでしょう。

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