
外貨預金とは、海外の通貨(米ドルやユーロなど)で預金することです。
被相続人に所属していた財産は、一身専属権を除き、すべて遺産相続の対象です。
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
引用:民法|e-Gov法令検索
したがって、被相続人が自分の名義で外貨預金を保有していた場合、遺産分割協議において、相続方法などを決めなければいけません。
しかし、日本円の預貯金とは異なり、遺産相続手続きにおける外貨預金の取り扱いには特有の注意点が存在します。
そこで、この記事では、外貨預金の相続方法について疑問・不安を抱いている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 外貨預金が遺産に含まれているときの相続手続きの流れ
- 遺産分割手続きにおける外貨預金の評価方法とポイント
- 外貨預金を相続するときの注意点
- 遺産に外貨預金が含まれているときに弁護士へ相談・依頼するメリット
目次
外貨預金が相続財産に含まれているときの遺産分割手続きの流れ
まずは、外貨預金に関する遺産分割手続きの流れについて解説します。
- 相続財産調査をおこなって、被相続人が外貨預金を保有していたかを確認する
- 遺産分割協議を実施し、外貨預金を含む遺産の承継方法を決める
- 外貨預金を承継した相続人が、名義変更・解約・払い戻しなどの対応をおこなう
- 必要に応じて、相続税の申告・納付をおこなう
相続財産調査で被相続人が外貨預金を保有していたか確認する
被相続人が死亡したら、すぐに相続財産調査をおこないます。
遺産分割協議を進める段階ですべての遺産内容が明確になっていなければ、公平・公正な遺産相続を実現できないからです。それに、遺産分割手続きが終了したあとに新たな遺産が見つかると、遺産分割協議のやり直しを強いられかねません。
被相続人が外貨預金を保有していたかを調査する方法として、以下のものが挙げられます。
- 金融機関の預金通帳・キャッシュカード・取引明細・郵便物などが自宅などに遺されていないか探す
- 被相続人が普段使用している可能性がある金融機関に問い合わせをする
- 金融機関に問い合わせをして残高証明書を発行してもらう
- 預貯金口座付番制度を利用して、被相続人のマイナンバーに紐づけられた預貯金口座をピックアップする
遺産分割協議で外貨預金を含む遺産を分ける方法を決める
被相続人が所有していたすべての財産の洗い出しが終わったら、遺産分割協議をおこないます。
遺産分割協議とは、相続人全員が遺産の分割方法などについて話し合いをおこなうことです。
外貨預金だけではなく、日本円の預貯金、不動産、株式などの有価証券、借金などの負債を含めて、相続人全員が納得できる形での分割方法を決めましょう。
特に、外貨預金や不動産などの承継しにくい遺産が含まれている場合には、協議が難航する可能性が高いです。なぜなら、外貨預金や不動産などは評価方法や実際の相続手続きのハードルが高いからです(外貨預金の評価方法については後述します)。
遺産分割手続きの長期化を防ぎたいなら、協議段階から弁護士に相談・依頼をするのがおすすめです。
- 遺産分割調停:家庭裁判所の調停委員が紛争当事者の間に入って合意形成を目指す話し合いをサポートする手続きのこと。合意形成に至った場合には調停調書が作成される。
- 遺産分割審判:遺産分割調停を利用しても合意形成に至らない場合、自動的に審判手続きに移行する。裁判官が諸般の事情を総合的に考慮して、遺産分割案を提示し、その内容で遺産分割をおこなわなければいけない。
参照:遺産分割調停|裁判所HP
外貨預金を相続した人が名義変更・解約・払い戻しなどの対応をおこなう
遺産分割協議などを経た結果、外貨預金を相続する人物が決まったら、その相続人が、名義変更などの具体的な対応をおこないます。
まず、被相続人が外貨預金の口座を開設していた金融機関に遺産相続について問い合わせをした時点で、当該口座は凍結されています。
そのため、実際に相続手続きを進めるには、被相続人名義の口座の名義変更もしくは解約をして、払い戻し・振り替えをおこなわなければいけません。
金融機関ごとに、必要書類や手続きの流れは異なります。名義変更・解約などの具体的な進めかたについては、金融機関の窓口まで直接お問い合わせください。
相続税の申告・納付をおこなう
被相続人から相続・遺贈によって取得した財産および相続時精算課税適用財産の価額の合計額が基礎控除額(3,000万円 + 法定相続人の人数 × 600万円)を超えるケースでは、課税遺産総額に対して相続税が課税されます。
被相続人が死亡したことを知った日(通常、被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月以内に、自分で相続税を計算したうえで申告・納付手続きをおこなう必要があります。
期限までに相続税の申告・納付をおこなわなかったり、申告漏れの財産があったりすると、延滞税や重加算税などの金銭的ペナルティを課されます。
外貨預金や不動産のように評価方法が難しい遺産が存在するケースでは、相続人だけで正確な相続税の金額を算出するのが難しいです。追徴課税などのペナルティに対するリスクヘッジをしたいなら、弁護士や税理士のサポートは欠かせないでしょう。
遺産相続手続きにおける外貨預金の評価方法とポイント
遺産相続手続きにおける外貨預金の評価方法などについて解説します。
【前提】外貨預金の評価額は日本円に換算しておこなう
被相続人が外貨預金を保有していたケースにおいて、遺産分割手続きや相続税の申告・納付をおこなうには、外貨預金を日本円に換算するのが決まりです。
外国通貨の単位のままでは法的な手続きを一切進めることができません。
外貨預金を邦価に換算する基準日
外貨預金を日本円に換算する基準日は、相続または遺贈の場合は被相続人が死亡した日、贈与の場合は贈与によって財産を取得した日が原則です。
ただし、この原則的な基準日に為替相場が存在しない場合には、被相続人の死亡日よりも前に為替相場が存在する直近の日が基準日になります。
例えば、年末年始や祝日に被相続人が死亡した場合、その直前の為替相場が存在する日を基準に換算します。
外貨預金を邦価に換算するときの基準
外貨預金を日本円に換算するときには、納税義務者の取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場が基準になります。
外貨預金を日本円に換算するときに採用する代表的な基準には以下3つが挙げられますが、外貨を売却するときの為替相場が参考とされます。
- 対顧客直物電信売相場(TTS / Telegraphic Transfer Selling rate):顧客が外貨を購入するときの為替相場。TTMに手数料分が上乗せされる。
- 対顧客直物電信買相場(TTB / Telegraphic Transfer Buying rate):顧客が外貨を売却するときの為替相場。TTMから手数料分が差し引かれる。
- 対顧客直物電信相場仲値(TTM / Telegraphic Transfer Middle rate):金融機関と顧客が外国為替取引をするときの当日受け渡し用の基準為替相場。TTSとTTBの平均値。
なお、金融機関によって公表している対顧客直物電信買相場(TTB)は異なるので注意が必要です。
相続税の申告・納付の際の対顧客直物電信買相場(TTB)は、被相続人が口座を開設している金融機関ではなく、相続人が取引をしていた金融機関のものを利用するのが一般的です。
また、1日のなかに複数のレートがある場合は、その日の最終の相場(終値ベースのTTB)を選択しましょう。
外貨預金の相続に関する注意点
外貨預金の相続に関する注意点を紹介します。
外貨預金を相続しても相続税は日本円で納付しなければいけない
相続税の納付は、原則として日本円の現金一括払いでおこなう必要があります。
ですから、外貨預金を相続した場合も、相続税は日本円で支払わなければいけません。
例えば、遺産分割協議をおこなった結果、ある相続人が外貨預金だけを承継した場面について考えてみましょう。外貨預金を日本円に交換せずにそのままの状態で保持しつづけた場合、当該相続人が自己資金から相続税の費用を捻出する必要があります。
相続税の支払いに耐えられるだけの預貯金などが手元になく、期限までに相続税の申告・納付ができなかった場合には、追徴課税という金銭的なペナルティが下されるだけではなく、不動産などが差し押さえられるリスクに晒されるので注意をしてください。
為替レート次第では外貨預金を日本円に換金すると損する可能性がある
為替レートは時々刻々と変化をします。
すると、外貨預金を相続したときから実際に日本円に換金するタイミングに至るまでに円高が進んでしまうと、不利なレートでの相続税の申告・納付を強いられたり、手元に入ってくる日本円が目減りしてしまったりしかねません。
ですから、外貨預金を相続するときには、為替レートをチェックしながら日本円に換金するタイミングを精査するべきだと考えられます。
被相続人が海外の金融機関に外貨預金を保有している可能性もある
被相続人が日本の金融機関だけで取引をしているとは限りません。
例えば、海外の金融機関に外貨預金を保有している可能性もゼロではないでしょう。
そして、被相続人が海外の金融機関に保有している外貨預金も当然に遺産分割手続きの対象に含まれるので、海外の預貯金口座を見落として遺産分割協議をおこなうと、遺産分割手続きのやり直しなどのトラブルが発生してしまいます。
したがって、外貨預金を保有しているような被相続人が亡くなったときには、海外の金融機関との取引があるかどうか、仮想通貨や株式などにも手を出していなかったなどについて、丁寧に相続財産調査をおこないましょう。
外貨預金を相続して為替差益が生じたら確定申告が必要になる
外貨預金を相続しただけなら確定申告は不要です。
これに対して、相続人が外貨預金を日本円に交換した場合において、相続時よりも円安が進んでいれば、為替差益が発生します。そして、給与以外の為替差益が年間20万円以上になると、確定申告が必要になります。
なお、円高によって為替差損が生じた場合や、為替差益が20万円以下なら、確定申告は必要ありません。
外貨預金のような複雑な遺産が存在する場合には早期に弁護士へ相談したほうがよい
遺産に外貨預金のような複雑な財産が含まれている場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士の力を借りることで、遺産分割手続きにおいて以下のようなメリットが生じるでしょう。
- 丁寧に相続財産調査を尽くしてくれるので、外貨預金だけではなく、不動産や株式などの遺産をすべて洗い出してくれる
- 遺産の内容やほかの相続人の状況・意向などを総合的に考慮して、外貨預金に関する遺産分割協議がすぐに成立するような分割案を提示してくれる
- 外貨預金の名義変更や解約手続きなども代理してくれる
- 相続税の申告・納付に必要な邦価への算定などを正確におこなってくれる
- その他、遺産分割調停や審判などの法的手続きにも対応してくれる
外貨預金の相続について不安があるときは弁護士へ相談しよう
被相続人が外貨預金を保有していたときや、遺産が多岐にわたるせいで相続財産調査が大変そうなときには、すぐに遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に相談・依頼をしてください。
弁護士のサポートがあれば相続財産調査の段階から丁寧に遺産分割手続きを進めることができるので、ミスなくすべての手続きを終わらせられるでしょう。
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