遺産分割協議は相続人全員の参加が必須なので、相続人の一人だけ反対の意思を表明しているだけで、遺産分割協議は進められなくなってしまいます。
そして、遺産分割協議がまとまらない状態がつづくと、いつまでも被相続人の財産を処分・有効活用できなかったり、遺産の隠蔽・使い込みのリスクが高まったりしかねません。
ですから、遺産分割協議がなかなか進まないなら、一人の相続人が遺産分割協議に反対している理由を明らかにして、遺産分割調停の申し立てや弁護士への相談・依頼などの対策を講じるべきでしょう。
そこで、この記事では、相続人の一人だけ遺産分割協議に反対して困っている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 相続人の一人が遺産分割協議に反対する理由
- 相続人の一人が遺産分割協議に反対したときに生じるデメリット
- 相続人の一人が遺産分割協議に反対したときの対処法
- 一人の相続人が遺産分割協議に反対したときに弁護士へ相談・依頼するメリット
目次
相続人の一人だけ遺産分割協議に反対する原因
まずは、相続人の一人が遺産分割協議に反対する代表的な原因・理由を紹介します。
- 相続人同士の仲が悪い
- 相続財産の内容が不明瞭、遺産隠しの疑いがある
- 遺言書が偽造・変造された疑いがある
- 遺産分割協議の内容に不満な点がある
相続人同士の仲が悪いせいで相続人の一人が遺産分割協議に反対している
相続人同士や親族同士の仲が悪いと、一部の相続人が遺産分割協議に反対することがあります。
たとえば、遺産分割協議の内容自体には納得していても、ほかの相続人に対する嫌がらせ目的で、一人の相続人が遺産分割協議案へのサインを反対することもあるでしょう。
また、遺産分割協議を進めるには相続人全員の参加が必要ですが、関係性が悪いと、相続人の一人が顔を合わせたり連絡を取り合ったりすること自体を拒否して、遺産分割協議が進まないケースも少なくありません。
遺産隠しなどがされた疑いがあるので相続人の一人が遺産分割協議に反対している
遺産分割協議を進めるには、遺産にどのような財産が含まれているかを正確にリストアップしなければいけません。
しかし、実際には、相続財産調査を尽くしても遺産を正確に把握しきれない場合や、被相続人の財産を管理していた人物が遺産隠しをした疑いがある場合が多いです。
このように、相続財産の内容に不明瞭な点があったり遺産隠しの疑いがあったりするために、相続人の一人が遺産分割協議へ反対を表明する可能性があります。
遺言書が偽造・変造された疑いがあるせいで相続人の一人が遺産分割協議に反対している
被相続人が遺言書を残していると、ほとんどの場合、遺言書の内容に基づいて遺産分割手続きが進められます。
しかし、遺言書の内容や状態などに以下のような不審な点があると、遺言書が偽造・変造されたり、第三者による不当な介入によって遺言書の内容が歪められたりした危険性があります。
- 本人の筆跡とは異なる文字で遺言書が作成されていた
- 遺言書に記載された文字の筆圧に不自然な点がある
- 遺言書に記載された日付の当時、被相続人が認知症を患っていたり、怪我や病気などで入院していた
- 被相続人が生前話していた内容とまったく異なる遺言書が作成されていた
- 被相続人が死亡してから長期間が経過して遺言書が見つかった
- 自筆証書遺言の形式的な要件を満たしていなかった など
相続人の一人が遺言書の不自然な点に気付くと、遺産分割協議に反対をして、遺言無効確認訴訟などの法的措置に出る可能性があるでしょう。
遺産分割協議の内容に不満な点があるので相続人の一人が遺産分割協議に反対している
遺産分割協議の内容に不満な点があるせいで、相続人の一人が遺産分割協議に反対する可能性があります。
遺産分割協議の内容に対する不満として、以下のようなものが挙げられます。
- ほかの相続人と意見が合わなくて希望する遺産を相続できそうにない
- 一部の相続人だけが生前贈与を受けており不平等感が生まれている
- 生前、被相続人の世話・介護などをした寄与度が遺産分割協議に反映されていない
- 遺言書や生前贈与などによって遺留分が侵害されている など
相続人の一人だけが遺産分割協議に反対するとどうなる?
相続人の一人だけが遺産分割協議に反対したままだと、以下のようなデメリットが生じます。
- いつまでも遺産分割手続きが進まない
- 遺産の使い込みや隠蔽リスクが高まる
- 協議がまとまらないうちに相続人のうち誰かが死亡すると相続関係が複雑になる
- 相続税や相続登記などの手続き期限に間に合わなくなる
いつまでも遺産分割手続きを進めることができない
遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ無効と扱われます。
ですから、相続人の大多数が遺産分割協議に賛成をしていたとしても、一人でも反対の意思を表明していたり協議に参加しなかったりすると、いつまでも遺産分割協議は成立せず、遺産分割手続きを進めることができません。
なお、どうしても直接話し合いに参加できない相続人がいる場合には、代理人を立てたり郵送でのやり取りをしたりすることで、遺産分割協議を進めることも可能です。
遺産の使い込みや隠蔽リスクが高まる
遺産分割協議に反対する相続人が一人でもいると、相続財産が被相続人名義のままの状態がつづきます。
すると、たとえば、被相続人の預貯金口座の名義変更をしないままだと、被相続人の預金通帳を勝手に持ち出せる相続人が無断で預金を引き出したりするリスクが高まるでしょう。
また、不動産が被相続人名義の状態で放置をされていると、相続人のひとりが委任状などを悪用して第三者に売却する可能性もあります。
以上のように、相続人の一人が遺産分割協議に反対をして遺産相続手続きが進まないと、遺産の使い込みや隠蔽・流出リスクが高まるので、将来的に公平・公正な遺産相続を実現しにくくなってしまうでしょう。
相続人のうちの誰かが死亡するとさらに相続が複雑になる
相続人の一人が遺産分割協議に反対すると、被相続人名義の財産が宙に浮いたままの状態がつづきます。
そして、被相続人名義の財産が宙に浮いた状態が長期化すると、遺産分割協議が成立してない段階で、相続人の一人が死亡することもあるでしょう。
遺産分割協議が終了しない段階で被相続人の相続人が死亡した場合、「死亡した相続人の相続人」が遺産分割協議に参加をしなければいけません。
すると、遺産分割協議の当事者が増える可能性が高いため、意見がまとまりにくくなったり、「死亡した相続人の相続人」の連絡先がわからず遺産分割協議を進めることができなくなったりするでしょう。
相続税や相続登記などの期限に間に合わなくなる
遺産分割協議自体には期間制限は設けられていないので、相続人の一人が反対をしていたとしても、それだけで法的なペナルティが科されることはありません。
しかし、遺産相続が発生したあとの各種手続きには期間制限が設けられているものも存在する点に注意が必要です。
相続人の一人が遺産分割協議に反対の意思を表明し、各種遺産相続手続きを進められない状態がつづくと、期限徒過を理由にさまざまなペナルティが課される可能性があります。
たとえば、相続手続きにおける代表的な手続き期限と期限を徒過したときのペナルティは以下のとおりです。
| 項目 | 期限 | 生じるデメリット |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内 | 単純承認したとみなされて、被相続人の借金やローンなどのマイナス財産も承継せざるを得なくなる |
| 準確定申告 | 自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 | 延滞税や加算税などの金銭的ペナルティが課されたり滞納処分による差し押さえの対象になったりする |
| 相続税の申告・納付 | 自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内 | 延滞税や加算税などの金銭的ペナルティが課されたり滞納処分による差し押さえの対象になったりする |
| 遺留分侵害額請求権 | 相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間、もしくは、相続開始のときから10年間 | 遺留分侵害額請求権が消滅時効にかかって侵害された遺留分を取り戻せなくなる |
| 不動産の相続登記 | 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内 | 10万円以下の過料 |
| 生命保険金の請求 | 被保険者の死亡日の翌日から3年以内(例外あり) | 生命保険金請求権が消滅時効にかかるので死亡保険金を受け取れなくなる |
| 相続税の還付請求 | 相続の開始を知った日の翌日から5年10ヶ月以内 | 払い過ぎた相続税の還付を受けられなくなる |
| 特別寄与料の主張 | 相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月、もしくは、相続開始のときから1年間 | 遺産分割手続きで特別の寄与を主張が受け入れられなくなる |
| 寄与分の主張 | 相続開始の時から10年以内 | 遺産分割手続きで寄与分の主張が受け入れられなくなる |
相続人の一人だけが遺産分割協議に反対したときの対処法3つ
さいごに、相続人のうち一人だけが遺産分割協議に反対したときの対処法を3つ紹介します。
- 遺産分割調停を利用する
- 遺産分割審判を利用する
- 遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に相談・依頼する
相続人の一人が協議に反対しているなら遺産分割調停を申し立てる
一人の相続人が遺産分割協議に反対をしたり参加を拒否したりする場合、協議を継続しても何の実益も得られないでしょう。
遺産分割協議の進捗を望めないときには、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのがおすすめです。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が紛争当事者を仲介して合意形成を目指す法的手続きのことです。紛争当事者の意見を聴取したり、提出された証拠を確認したりしながら、相続人全員が合意できる妥協点を探ってくれます。
遺産分割調停の手続きの流れ
遺産分割調停を利用する場合には、相手方のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所への申し立てが必要です。
住所地を管轄する家庭裁判所の連絡先などについては「申立書提出先一覧(家庭裁判所)|裁判所」からご確認ください。
遺産分割調停の申し立てをすると、約1ヶ月〜2ヶ月後を目安に、第1回調停期日が設定されます。そして、各調停期日は約1ヶ月〜2ヶ月の間隔を空けて実施されることが多いです。
調停期日は1回あたり約2時間程度で、基本的に相手方と直接対面することはなく、調停委員を介して交互に話し合う方法がとられます。
そして、遺産分割調停で調停委員を介しての話し合いがまとまったときには、調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同一の効力を有します。
遺産分割調停の必要書類
遺産分割調停を申し立てるときの必要書類は以下のとおりです。
- 申立書1通及びその写し(相手方の人数分)
- 事情説明書(遺産分割)
- 進行に関する照会回答書(遺産分割)
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の住民票又は戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券写し等) など
また、遺産分割調停を申し立てるには、被相続人一人につき1,200円分の収入印紙と連絡用の郵便切手が必要です。
さらに、申立人の立場や相続関係次第では、さらに疎明資料を求められる可能性があります。詳しくは、申立先の家庭裁判所まで直接確認をしてください。
相続人の一人が反対して調停が不成立なら遺産分割審判を利用する
遺産分割調停を経ても相続人同士で合意形成に至らないときには、自動的に遺産分割審判手続きに移行します。
遺産分割調停については調停前置主義が採用されていません。ですから、遺産相続トラブルが生じたときにはいきなり遺産分割審判を申し立てることも可能です。ただし、実務的には、先に遺産分割調停を利用して調停委員による仲介で合意形成を目指すのが一般的です。
遺産分割審判では、調停などを通じて当事者から提出された証拠資料や家庭裁判所が把握した当事者の意見などを前提として、裁判官が遺産分割方法について審判を下します。調停期日とは異なり、審判期日では、遺産相続トラブルの当事者が集まって、証拠や意見の確認などがおこなわれます。
遺産分割に関する裁判官の判断は、審判書の送付という方法で当事者に周知されます。審判の内容に不満があるときには、審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間以内に即時抗告をして争うことができます。
遺産分割審判の内容が確定すると、その内容にしたがって遺産分割手続きをおこなわなければいけません。たとえば、強制執行や登記手続きなども可能になるので、速やかに遺産相続手続きを進めましょう。
遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に相談・依頼する
相続人の一人が遺産分割協議に反対をしているときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
というのも、遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるからです。
- 遺産分割協議に反対している相続人との話し合いを代理してくれるので、相手方の冷静な対応を期待できる
- 丁寧な相続財産調査によって遺産の隠蔽や使い込みなどを明らかにしてくれる
- 遺産分割調停・審判といった裁判所関係の手続きを代理してくれたり必要書類を準備してくれたりする
- その他、遺留分侵害や生前贈与、寄与分などの遺産相続トラブルにも丁寧に対応してくれる
相続人の一人が遺産分割協議に反対をしていても、弁護士が代理人として就任するだけで、これまでの態度を翻して丁寧な姿勢に転ずる可能性があります。
家族・親族間の直接的な話し合いでは感情的になって交渉がまとまりそうにないなら、スポット的に弁護士の力を借りるだけでも十分な成果を期待できるでしょう。
相続人の一人だけ反対して遺産分割手続きが進まないときには弁護士へ相談しよう
一人の相続人が遺産分割協議などに反対をして相続手続きがまったく進まないときには、速やかに遺産相続トラブルの経験豊富な弁護士に相談・依頼をしてください。
弁護士の力を借りれば頑なに反対をしていた相続人が遺産相続手続きに協力的になる可能性がありますし、これによって、遺産分割協議の早期成立や各種手続きのスムーズな進捗を期待しやすくなるでしょう。
遺産相続相談弁護士ほっとラインでは、さまざまな遺産相続トラブルの実績豊富な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほど遺産相続トラブルの早期解決を期待できるので、できるだけ早いタイミングで信頼できる法律事務所までお問い合わせください。