違法建築の不動産を相続すると、さまざまな法的リスクに晒されます。
そもそも、違法建築の不動産は不動産中古市場で不人気なので、売却しようにも買い手が見つかりません。
また、相続した時点で所有者としての責任が生じるので、行政から指導・勧告・命令などの措置を下される可能性もあります。
ですから、違法建築の不動産が相続財産に含まれている場合、相続を回避するための策を講じるのが何より重要です。
そこで、この記事では、違法建築の相続リスクにお悩みの人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 違法建築の相続リスク
- 相続リスクが生じる違法建築の具体例
- 違法建築の相続リスクを回避するための対策
- 違法建築の相続リスクを抱えているときに弁護士へ相談するメリット
違法建築の不動産を相続するリスク5つ
まずは、違法建築の不動産を相続するリスクを5つ解説します。
- 安全性に問題があるので居住用物件として活用できない
- 行政上のペナルティの対象になる
- 近隣住民とのトラブルに巻き込まれる
- 不動産中古市場で売却しにくい
- 買い手が見つかっても低廉な価格で買い叩かれる
違法建築の不動産は安全性が低い
耐震性や構造的な問題を抱える違法建築の場合、建物の安全性に不安が生じます。
ですから、違法建築の不動産を相続しても、居住用物件として活用できないと考えられます。
また、もし、構造上の問題が原因で火災や倒壊などに見舞われた場合、その事故に巻き込まれた人に対する賠償責任が生じたり、刑事責任と問われたりする可能性があります。
違法建築の不動産は行政上のペナルティの対象になる
違法建築の不動産を相続すると、以下のような行政上のペナルティが科される可能性があります。
- 行政指導
- 是正勧告
- 是正命令
- 行政罰
- 行政代執行
行政指導や是正勧告・是正命令を受けた場合、建物の違法状態を解消するための工事などを所有者自身が発注しなければいけません。違法状態の内容次第ですが、相当の工費負担を強いられるでしょう。
また、行政指導などに応じず、危険な状態が継続していると、行政代執行が実施される可能性もあります。行政代執行は行政が主導して工事などをおこないますが、その際に発生した費用は、最終的に所有者が負担しなければいけません。
違法建築の不動産が原因で近隣住民との間でトラブルに巻き込まれる
違法建築の不動産を相続すると、近隣住民との間でトラブルが生じる可能性があります。
たとえば、日照権侵害、雨漏り、排水トラブルなどによって近隣に実害が生じると、損害賠償責任を問われます。
また、このようなトラブルが違法建築のせいだとご近所で噂になって住みづらくなってしまうこともあるでしょう。
違法建築の不動産は中古の不動産市場で売却しにくい
違法建築の不動産を相続しても、一般の不動産中古市場で売却しにくいです。
そもそも、違法建築は不動産中古市場で不人気の物件です。誰も安全性や合法性に問題がある不動産を買おうとはしません。
また、違法建築の不動産が目的物になっている売買契約では、購入者側が住宅ローンを組めないという点も問題です。購入希望者側に現金一括で購入できるだけの経済的余裕がなければ、売却は難しいでしょう。
さらに、違法建築の不動産を売却する際には、売買契約時に告知義務を果たさなければいけません。違法建築であることを隠して売却すると契約不適合責任を問われかねませんし、違法建築であることを告げると購入者が見つかりにくくなるのが実情です。
したがって、違法建築の不動産を相続しても売却の可能性が事実上閉じられているので、自分で改修するなどの具体的なプランがない限り、安易な判断で相続するのは避けるべきでしょう。
違法建築の不動産は買い手が見つかったとしても売却価格が低廉になる
仮に違法建築の不動産を購入したいという人が見つかったとしても、相場よりもはるかに低廉な価格で買い取られてしまうのが実情です。
購入希望者側も、「違法建築の不動産だから買い手が見つからなくて困っている」という売主側の事情をよくわかっているので、値段交渉も不利になってしまいます。
遺産相続でリスクが生じる違法建築の具体例9つ
遺産相続でトラブル原因になりかねない違法建築の具体例を紹介します。
- 建蔽率、容積率違反
- 斜線制限違反
- 採光義務違反
- 用途地域違反
- 接道義務違反
- 高さ制限違反
- 耐震基準違反
- 違法な増改築
- 登記手続きの未了状態
- 再建築不可物件:現在存在する建築物を取り壊して更地にしたあと、新しく建物を作ることができない土地・建物のこと。接道要件を満たさないケースが多い。
- 既存不適格建築物:建築当時は適法だったが、その後の法改正や都市計画の変更などによって現行の法令基準などを満たさなくなった建物のこと。違法建築とは異なり、直ちに是正命令などの行政的な措置がとられることはないが、将来的に増築・改築・用途変更などをおこなうときには、現行の法令基準に合わせなければいけない。
建蔽率、容積率違反
建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積が占める割合のことです。建蔽率は、火災時の延焼を防止したり、風通しを確保したりするために、建築基準法などにおいて、用途地域ごとに建蔽率の基準が設けられています。
また、容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことです。容積率は、地域の過密状態を回避するために、用途地域ごとに上限基準が設定されています。
たとえば、実家を建てたあとに、あとから無断でサンルーム・物置・ガレージなどを増築したようなケースでは、建蔽率・容積率に違反が生じる可能性があります。
斜線制限違反
斜線制限とは、建物の高さ制限のことです。斜線制限は、以下3種類に区分されます。
- 隣地斜線制限:隣の風通しと採光環境を保護するための基準。
- 北側斜線制限:北側に位置する家の日照権確保を目的とした基準。
- 道路斜線制限:道路の通風・採光を確保するため、また、歩行者への圧迫感を軽減するための基準。
たとえば、実家のリノベーションで増改築をしていた場合などでは、斜線制限違反が生じる可能性があります。
採光義務違反
建築基準法第28条及び建築基準法施行令第19条では、建築物の居室の種類に応じて、窓の開口面積の基準を設けています。
たとえば、一般住宅の居室は、原則として【居室の床面積 × 割合 < 窓の開口面積 × 1/7(採光補正係数)】の採光義務を果たさなければいけません。 リフォームなどのタイミングで窓を小さくしたような場合には、採光義務違反が生じる可能性があります。
用途地域違反
用途地域違反とは、都市計画法・建築基準法で指定された全13種類の用途地域において建築してはいけない種類の建物を建築・使用することです。
たとえば、第一種低層住居専用地域などにおいて無許可で飲食店や大型店舗などを営業した場合や、市街化調整区域で許可なく一般住宅を建てる場合などが挙げられます。
接道義務違反
接道義務とは、原則として土地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければいけないというルールのことです。
たとえば、接道部分が2メートルに満たない袋地や、旗竿地、単なる通路や私道にしか接していない土地などは、接道義務違反の状態にあると考えられます。
高さ制限違反
建築物には、その地域ごとに絶対的な高さの上限が設けられています。
たとえば、第1種低層住居専用地域では、10メートルまたは12メートルが基準です。
また、軒の高さが7メートルを超える中高層建築物などについては、一定時間隣接地に影を落とさないようにするために、日影規制が設けられています。
耐震基準違反
建築基準法では、建物の安全性を確保するために、定期的に耐震基準が見直されています。
実家が相当古い建物の場合には現行の耐震基準を満たさない可能性があるので、古い実家が遺産に含まれているときには、耐震調査などを実施することを強くおすすめします。
違法な増改築
床面積の合計が10平方メートルを超える場合や、防火・準防火地域に建物が所在する場合、改築・大規模修繕の際に柱・梁・床などの主要構造部の過半に手を入れる場合などでは、建築確認が必要です。
建築確認申請をせずに無断で実家を増改築をしていた場合には、建築基準法違反でペナルティを科される可能性があります。
登記手続きの未了状態
すべての建物は登記をする必要があります。
実家が未登記のままだと、不動産登記法違反の状態です。
たとえば、実家を建てるときにローンを組まず全額自己資金から捻出していた場合には、未登記になっている可能性があります。
登記手続きが未了のままでは相続・売却などを進めることができません(解体するだけなら未登記のままで問題ありません)。
違法建築の相続リスクを回避する方法4つ
さいごに、違法建築の不動産を相続するリスクを回避する4つの方法を解説します。
- まずは不動産に関係する公的資料を調査する
- 遺産分割手続き中なら相続方法に注意する
- 相続後に違法建築であることが判明したときには是正などの措置を講じる
- いずれにしても速やかに弁護士へ相談する
不動産に関係する公的資料を調査する
相続財産に不動産が含まれている場合、必ずその不動産がどのような状態のものなのかを正確に調査してください。
たとえば、建築確認、台帳記載事項証明、図面、登記簿、固定資産税納税通知書などを調査すれば、不動産が違法建築なのかどうかが判明します。
ご自身で判断するのが難しい場合には、土地家屋調査士や建築士などの専門家に相談するのもおすすめです。
遺産分割手続き中なら違法建築の不動産の相続方法に注意する
遺産分割手続き中に不動産が違法建築であることが判明した場合には、相続方法を工夫することで、違法建築に起因するさまざまなトラブルを回避できます。
違法建築の不動産を換価分割する
遺産に不動産が含まれている場合、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割のいずれかを選択する必要があります。
相続財産に含まれている不動産が違法建築の場合、換価分割がおすすめです。
換価分割とは、相続財産の不動産を売却して現金化して、得られたお金を相続人同士で分け合う方法のことです。
換価分割をすれば違法建築の不動産自体を相続せずに済むので、所有者としての法的責任を問われずに済むでしょう。
ただし、違法建築はそもそも高額での売却が難しいので、換価分割を選択しても、思ったほどの金額を手にすることはできません。
違法建築の建物を解体して更地に戻す
違法建築の状態のままではさまざまなリスクが付きまとうので、思いきって建物を解体して更地に戻すのも選択肢のひとつです。
土地だけの状態にすれば違法建築のリスクを回避できるので、不動産中古市場で土地を売却して換価分割したり、代償分割によってひとりの相続人に取得させたりするなどの多様な対応が可能になります。
ただし、違法建築の建物を解体する際には、数百万円単位の解体費用が発生する点に注意が必要です。
相続放棄をして違法建築を含むすべての財産を相続しない
相続放棄とは、プラスの財産・マイナスの財産を問わずすべての財産を相続しない旨の意思表示のことです。
相続放棄をすると最初から相続人ではなかったと扱われるので、違法建築に起因する法的リスク・負担を回避できます。
ただし、相続放棄をするとプラスの財産も取得できないので、違法建築以外に相続したい財産がある場合には不向きです。
また、相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述をしなければいけません。
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
引用:民法|e-Gov法令検索
参照:相続の放棄の申述|裁判所
すでに違法建築の不動産を相続したなら早期に是正などの措置を講じる
すでに違法建築の不動産を相続してしまった場合には、いつ行政から指導などの措置がとられるかわからない状態です。
ですから、違法状態を是正するために、改修や建て替え、解体、建築確認申請などの措置を検討してください。
できるだけ早いタイミングで弁護士に相談する
相続財産に違法建築の不動産が含まれている場合や、相続で違法建築の不動産を取得してしまった場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください。
遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得られるでしょう。
- 登記簿などの資料を確認して、不動産の何が違法なのかを精査してくれる
- 不動産の違法状態を解消するための具体的な方法を提示してくれる
- 行政指導や是正勧告などに対するアドバイスをくれる
- 依頼者の代理人として遺産分割協議に参加してくれる
- 遺産分割協議がまとまらず、遺産分割調停・審判に移行した場合にも、手続き遂行を代理してくれる
- 提携している司法書士や土地家屋調査士、不動産業者などのサポートも期待できる など
違法建築の相続リスクについて悩みがあるなら弁護士に相談しよう
違法建築の相続リスクについてお悩みの場合には、すぐに弁護士に相談をしてください。
弁護士に相談をすれば、違法建築の現状をするに調査をしたうえで、講じるべき策や遺産分割協議に向けたアドバイスを提供してくれるでしょう。
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