愛人の子供に相続権はある?認知された隠し子が参加する遺産分割協議のポイントと想定されるリスクを解説

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パートナーと浮気相手との間に子供がいる場合、愛人の子供に相続権はあるのでしょうか。

愛人本人には相続権がないので、生前贈与や遺言書がない限り、被相続人の愛人が遺産を取得することはありません。

しかし、愛人の子供は被相続人と血縁関係があることから、遺産相続のルール上、愛人本人とは異なる扱いを受けるのが実情です。

そこで、この記事では、配偶者に愛人の子供がいる場合の遺産相続について不安を抱えている人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。

  • 愛人の子供に相続権がある場合とない場合の違い
  • 愛人の子供が相続権を有するときの遺産分割手続きの流れ
  • 愛人の子供に遺産を相続させたくないときの対処法
  • 遺産分割協議が成立したあとに愛人の子供が現れたときに想定される事態
  • 愛人の子供が相続権を有するときに弁護士へ相談・依頼するメリット

目次

愛人の子供に相続権はある?

愛人の子供が相続権を有するかは、認知をされているかどうかによって変わってきます。

まずは、愛人の子供の相続権に関する基本的なルールについて解説します。

認知されていない愛人の子供に相続権はない

愛人の子供は、婚姻関係にない父母の間に生まれた非嫡出子です。

そして、非嫡出子が相続権を主張するには、父親からの認知が必要です。

したがって、認知されていない愛人の子供には相続権は認められません

つまり、あなたの配偶者が愛人の子供を認知していないなら、愛人の子供が遺産を取得することはありませんし、遺産分割協議に参加させる必要もないということです。

認知された愛人の子供には相続権がある

非嫡出子である愛人の子供が認知された場合には相続権が発生します

そして、認知された愛人の子供の相続権は、実子と同じように、第一順位のものと扱われます

たとえば、相続人が【被相続人の配偶者、愛人の子供】という事案なら、配偶者と愛人の子供は遺産を半分ずつ分け合わなければいけません。

2013年(平成25年)12月の民法改正までは、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分と定められていました。しかし、最決平成25年9月4日によって、非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2と規定する旧民法第900条第4号は、法の下の平等を定めた憲法第14条に違反するとして、違憲判決が下されました。これによって、現在では、非嫡出子である愛人の子供も、嫡出子である実子と同じ法定相続分を取得できるようになっています。

なお、民法上、認知の方法は以下の2つに分類されます。

  1. 任意認知(認知届による認知、遺言による認知、胎児認知)
  2. 強制認知(裁判認知、死後の強制認知)

愛人の子供に相続権があるときの遺産分割手続きの流れ

愛人の子供が相続権を有するときの遺産分割手続きの流れについて解説します。

相続財産調査をおこなう

愛人の子供が相続権を有するかどうかにかかわらず、遺産相続が発生したときには、速やかに相続財産調査をおこないましょう

相続財産には、被相続人の財産に属した一切の権利義務が含まれます。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
引用:民法|e-Gov法令検索

たとえば、預貯金、不動産、現金、有価証券、貸金庫の中身などのプラスの財産だけではなく、借金、ローン、保証債務、滞納した税金などのマイナス財産も含まれるので、漏れのないように相続財産調査をおこなってください。

愛人の子供を含めてすべての相続人を洗い出す

相続財産調査が終わったら、相続人調査をおこない、法定相続人を全員洗い出します

連絡先がわかる相続人だけではなく、疎遠な相続人、行方不明の相続人、愛人の子供など、法定相続権を有するすべての人物に対して、被相続人が死亡したこと及び遺産分割協議への参加が必要であることを連絡する必要があります。

もし連絡先がわからない相続人がいる場合には、被相続人の戸籍謄本を取得して、相続人の現住所を割り出すなどの作業が必要です。また、どれだけ調査を尽くしても連絡先がわからないときには、不在者財産管理人制度を活用するなどの対応を強いられます。

愛人の子供が遺産分割協議に参加する必要があるかどうかは、隠し子が認知されているかによって異なります。愛人の子供が認知されているかどうかは、被相続人の戸籍謄本を取得し、戸籍謄本の身分事項欄に「認知」の記載があるかどうかをチェックすればわかります(被相続人の配偶者などの法定相続人は、戸籍法第10条に基づき、被相続人の戸籍謄本を請求することが可能です)。

第十条 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
引用:戸籍法|e-Gov法令検索

愛人の子供を含む相続人全員で遺産分割協議をおこなう

相続財産調査・相続人調査が終了したら、相続人全員で遺産分割協議をおこないます

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の相続方法や割合などについて話し合いをおこなうことです。

(遺産の分割の協議又は審判)
第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
引用:民法|e-Gov法令検索

遺産分割協議の方法に決まりはありません。

たとえば、相続人全員が集まって話し合いをしてもよいですし、愛人の子供と直接顔を合わせるのが気まずいなら、手紙や電話、オンラインなどの方法で意思疎通を図ることも可能です。

相続人全員で合意形成に至った場合には、遺産分割協議書を作成します。

愛人の子供を遺産分割協議に参加させないと合意は無効になる

「愛人の子供に財産を譲りたくない」「愛人の子供と連絡を取り合うのも腹立たしい」などといった気持ちになるのは当然ですが、愛人の子供だとしても相続権を有する以上は、遺産分割協議に参加をしてもらう必要があります。

というのも、相続人の一部でも欠けた遺産分割協議は法的に無効と扱われるからです。あとから愛人の子供側から無効を主張されると、遺産分割協議のやり直しをしなければいけません。

ですから、どれだけ私怨が募っていたとしても、愛人の子供が相続権を有する場合には、必ず連絡を取り合って遺産分割協議に参加してもらいましょう

遺産分割協議がまとまらないときには遺産分割調停・審判を利用する

愛人の子供が遺産分割協議に参加すると、ほかの相続人との間で意見がまとまらず、遺産分割協議が不成立に終わる可能性が高いです。

また、こちら側がどれだけ連絡をしても愛人の子供が遺産分割協議に参加しようとせずに嫌がらせをしてくるケースも少なくありません。

このように、遺産分割協議が成立しなかったり、話し合いを進めることができなかったりする場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、遺産相続トラブルの解決を目指す必要があります。

(遺産の分割の協議又は審判)
第九百七条 2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
引用:民法|e-Gov法令検索

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が紛争当事者の話し合いを仲介する手続きのことです。各当事者の意見や提出された証拠などを活用しながら、調停委員のサポートのもと、法定相続人全員の合意形成を目指します。

遺産分割調停で当事者全員が合意に至った場合には、調停調書が作成されて、遺産相続トラブルは解決します

これに対して、遺産分割調停を経ても合意形成に至らないときには、自動的に遺産分割審判手続きが開始されて、裁判官が審判を下します

遺産分割調停を申し立てるのは、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所です。たとえば、被相続人の配偶者と愛人の子供が法定相続人の事案において、愛人の子供が遺産分割協議に参加しようとせず、また、調停をおこなう家庭裁判所についての意見も表明してくれないようなときには、愛人の子供の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをしなければいけません。申立先の裁判所の所在地・連絡先などについては、「申立書提出先一覧(家庭裁判所)|裁判所」をご確認ください。

また、愛人の子供を含む遺産分割調停を申し立てるときには、以下の必要書類や疎明資料などの提出を求められます(事案によってはさらに追加資料などを求められるので、詳細については家庭裁判所まで直接ご確認ください)。

  • 申立書1通及びその写し(相手方の人数分)
  • 事情説明書(遺産分割)
  • 進行に関する照会回答書(遺産分割)​
  • 法定相続情報一覧図の写し
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し・残高証明書、有価証券写しなど)
  • 被相続人1人につき収入印紙1,200円分
  • 連絡用の郵便切手​

【参考】遺産分割調停|裁判所

遺産分割手続きの結果を踏まえてそれぞれの財産を取得する

遺産分割調停などを経た結果、無事に遺産相続の方法・割合などが決まったら、その内容に基づいて財産を取得します

たとえば、不動産を取得した場合には、法務局で相続登記の手続きが必要です。

また、被相続人の死亡によって預貯金口座が凍結されていたなら、金融機関が定める所定の相続手続きを履践したうえで現金を引き出したり口座を解約したりするなどの対応をしなければいけません。

取得する財産によって相続手続きが異なるので、詳細については、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

遺産総額が相続税の基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数)を超える場合には、被相続人が死亡したことを知った日(通常、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告・納付が必要です。もし、相続税の申告・納付義務があるにもかかわらず、愛人の子供が相続税を適切に申告・納付しなければ、あなた自身が連帯納付義務者としての責任を問われかねません。ですから、被相続人の遺産が高額の場合には、相続税の納付可能性なども考慮したうえで遺産分割協議をする必要があると考えられます。テクニカルな遺産分割協議になるので、必ず弁護士などの専門家までご相談ください。

愛人の子供に相続させたくないときの対処法4つ

「愛人の子供にだけはどうしても相続させたくない」と考えるのは当然です。

ここでは、愛人の子供の相続分をできるだけ減らし、あなた自身が取得できる遺産を増やすための4つの方法を紹介します。

  1. 愛人の子供に相続放棄をしてもらう
  2. 愛人の子供に遺留分を放棄してもらう
  3. 愛人の子供の相続分を減らすような遺言書を作成してもらう
  4. 生前贈与、資産の圧縮などの方法を駆使して、相続財産自体を減らしてもらう

【前提】愛人の子供の相続権は実子と同じ

まずは前提知識の確認です。

2013年(平成25年)12月の民法改正によって、愛人の子供であろうが、実子であろうが、相続分は等しいとされました。

たとえば、法定相続人が【配偶者、長男、次男、愛人の子供】というケースの場合、配偶者は1/2、長男・次男・愛人の子供はそれぞれ1/6ずつの相続分を取得します。

「愛人の子供と自分の子供の相続分が同じなのは許せない」「愛人の子供が相続権を主張するのは納得できない」などと感じるのは当然ですが、民法のルール上、実子も愛人の子供の同じ扱いを受けるとご理解ください。

【前提】愛人の子供の遺留分は侵害できない

もうひとつの前提知識を確認しておきましょう。

兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分という最低限の保障額が存在します。

(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
引用:民法|e-Gov法令検索

遺留分は生前贈与や遺言書などでも奪うことができない権利なので、愛人の子供に遺留分を主張されると、必ず遺留分だけは保障しなければいけません

愛人の子供に相続放棄してもらう

愛人の子供に相続させたくない場合には、相続放棄をしてもらえるか打診をする方法が考えられます。

相続放棄とは、被相続人のすべての財産を取得しない旨の意思表示のことです。

愛人の子供が相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったと扱われるので、遺産分割協議に参加させたり遺産を相続させたりする必要がなくなります

相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所への申述が必要です。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
引用:民法|e-Gov法令検索

どうしても愛人の子供に相続をさせたくないなら、被相続人が死亡した事実を連絡する際に、相続放棄について検討するように打診をするとよいでしょう。

相続放棄は被相続人が死亡する前にすることはできません。たとえば、生前に”相続放棄契約”のような合意を締結していたとしても無効です。愛人の子供が事前に相続放棄に合意をしていたとしても、将来的な紛争を防止するために、必ず家庭裁判所の申述手続きを履践してもらいましょう

愛人の子供に遺留分を放棄してもらう

愛人の子供が遺留分を放棄すれば、遺産を愛人の子供に渡さずに済みます。

(遺留分の放棄)
第千四十九条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索

被相続人が存命中であったとしても、家庭裁判所の許可があれば、遺留分の放棄は認められます

裏を返せば、“遺留分放棄の念書”のようなものを作成してもらうだけでは、遺留分の放棄は効力を発さないということです。

ただし、遺留分を放棄するように打診をする際の話し合いが拗れると、被相続人が死亡したあとの遺産分割協議が難航する可能性が高まります。

被相続人が愛人の子供を直接説得するのも間違いではありませんが、冷静な交渉を希望するなら、弁護士に相談・依頼をするのが適しているでしょう。

【参照】遺留分放棄の許可|裁判所

遺言書で愛人の子供の相続分を減らしてもらう

相続放棄や遺留分放棄は、愛人の子供側の協力がなければ功を奏しません。

もし、被相続人が存命中であり、かつ、愛人の子供が相続放棄・遺留分放棄に同意をしてくれないときには、愛人の子供の相続分を減らす(配偶者や実子の相続分を増やす)ような内容の遺言書を作成してもらう方法が考えられます。

たとえば、相続財産が預貯金1,000万円で、配偶者と愛人の子供の2人が法定相続人の場合、「配偶者に700万円の預貯金を譲る」という遺言書を残しておけば、配偶者が法定相続分よりも多い遺産を受け取ることができます。

ただし、遺言書でも愛人の子供の遺留分を侵害できない点に注意が必要です。愛人の子供の遺留分を侵害するような遺言書を残してしまうと、愛人の子供に遺留分侵害額請求権を行使されるなど、深刻な遺産相続トラブルが生じかねないでしょう。

生前贈与や資産の圧縮によって相続財産自体を減らす

被相続人が生きているのなら、生前贈与や資産の圧縮によって相続財産を減らして、愛人の子供の相続分を少なくするという方法が考えられます。

たとえば、被相続人が何の対策も講じずに死亡した場合の遺産総額が1,000万円だったとしましょう。このケースでは、1,000万円分の相続財産について、愛人の子供を交えて遺産分割協議をおこなわなければいけません。

これに対して、被相続人が死亡する前に1,000万円を家族に贈与しておけば、遺産分割協議の対象になる相続財産は0円になるので、愛人の子供に財産を引き渡さずに済みます。

ただし、生前贈与については、遺留分との関係で注意が必要です。

というのも、無制限な生前贈与は一部の相続人の遺留分を侵害するおそれがあるため、一定期間内の生前贈与は遺留分を計算するときの算定根拠に含まれるとされているからです。

第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
引用:民法|e-Gov法令検索

たとえば、被相続人が相続人に対しておこなった生前贈与は、被相続人が死亡したときから10年以内の分について、遺留分の算定根拠に含まれます。また、相続人以外に対する生前贈与については、死亡する前1年以内のものが算定根拠の対象です。

ですから、被相続人が死亡する直前に生前贈与をしても愛人の子供の相続分・遺留分を減らすことができないので、生前贈与などの方法で遺産の圧縮をおこなうなら、長期的な計画を立てる必要があるでしょう。

遺産分割協議が成立したあとに愛人の子供が登場したらどうなる?

本来は、遺産分割協議をおこなう前に愛人の子供に連絡をして、愛人の子供を含めて遺産分割手続きを進めなければいけません。

しかし、不倫の事実がひた隠しにされていた結果、遺産分割協議が終了してから愛人の子供の存在が明らかになるという事態も想定されます。

ここでは、遺産分割協議が成立したあとに愛人の子供が登場したときに想定されるトラブルについて解説します。

愛人の子供に遺産分割協議の無効を主張される

相続権を有する愛人の子供を除いて遺産分割協議をおこなった場合、その合意は無効です。

ですから、遺産分割協議が成立したあとに愛人の子供が登場したら、遺産分割協議の無効を主張されて、遺産分割手続きのやり直しを強いられます

愛人の子供に遺留分侵害額請求権を行使される

愛人の子供以外で成立した遺産分割協議は、愛人の子供の遺留分を侵害する内容になっています。

そのため、愛人の子供が被相続人の死亡及び遺産分割協議の存在を知ったときには、遺留分侵害額請求権を行使する可能性が高いです。

(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
引用:民法|e-Gov法令検索

愛人の子供に遺留分侵害額請求権を行使されると、遺留分侵害額に相当する金銭を支払わなければいけません。手元に不動産や有価証券などしか残っていないときには換価して支払いに充てなければいけませんし、遺留分侵害額請求権を無視すると財産などが差し押さえられるリスクに晒されます。

なお、遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者である愛人の子供が「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与・遺贈などがあったことを知ったときから1年間、または、相続開始のときから10年間」を経過したときに、消滅時効が完成します。

たとえば、愛人の子供に遺産分割協議への参加を促す書面を送付したのに無視されて1年以上が経過した場合や、被相続人が死亡してから10年以上が経過した場合には、遺留分侵害額請求権を行使されても消滅時効の完成を主張できます

愛人の子供に相続回復請求権を行使される

遺産分割協議が成立したあとに愛人の子供が登場すると、相続回復請求権を行使される可能性があります。

遺留分侵害額請求権を行使されると遺留分相当分の金銭の支払いだけで済みますが、相続回復請求権を行使されると、相続財産の引き渡しなどをしなければいけません。

たとえば、愛人の子供の存在を知らずに遺産分割協議をおこない、自らが正当な相続人であると信じて遺産を承継した表見相続人は、相続回復請求権に応じる必要があります(最判昭和53年12月20日)。

(相続回復請求権)
第八百八十四条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。
引用:民法|e-Gov法令検索

相続回復請求権の消滅時効期間は、相続権を侵害された事実を知ったときから5年、または、相続開始のときから20年です。

愛人の子供の存在を知りながら、あえて遺産分割協議についての連絡をしなかったときには、不当利得返還請求権を行使される可能性が高いです。この場合には、悪意の受益者に該当するため、愛人の子供が取得するべき相続分に加えて利息の支払いも必要です。

愛人の子供の相続権で遺産分割協議が難航しそうなときに弁護士へ相談・依頼するメリット3つ

愛人の子供に相続権が認められるせいで遺産分割協議が難航しそうなときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

というのも、遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士の力を借りることで、以下3つのメリットを得られるからです。

  1. 愛人の子供を含む遺産分割協議を代理してくれる
  2. 遺産分割調停・遺産分割審判といった裁判所関係の手続きを代理してくれる
  3. その他の遺産相続トラブルへのフルサポートを期待できる

愛人の子供の意向を確認するなど協議を代理してくれる

認知された愛人の子供は相続権を有するため、遺産分割協議に参加をしてもらい、遺産の相続方法や取得割合、相続放棄をするのかどうかなどについて、話し合いをしなければいけません。

しかし、不倫相手との間に生まれた子供と顔を合わせたり連絡を取り合ったりするのは、双方のとって気持ちのいいものではないはずです。

場合によっては、双方が感情的になって遺産分割協議が円滑に進まなくなったり、嫌がらせ目的で連絡を無視されたりしかねないでしょう。

遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に依頼をすれば、こちら側の代理人として愛人の子供と連絡を取り合ったり遺産分割協議で意見を主張してくれたりするので、感情的なストレスを回避しながら希望どおりの遺産相続を実現しやすくなります

遺産分割調停・審判などの裁判所関係の手続きを代理してくれる

愛人の子供と連絡が取れなかったり、愛人の子供が遺産分割協議に前向きに参加をしてくれなかったりすると、いつまでも遺産分割協議がまとまらないので、遺産分割調停・遺産分割審判を利用せざるを得ません。

しかし、遺産分割調停・審判を進めるには、期日に出席をして意見を陳述したり、調停委員・裁判官に提出する証拠書類を用意したりする必要があります。仕事や家事と両立しながら遺産分割調停・審判手続きを進めたり、遺産相続実務に詳しくない人が調停委員を説得できる証拠を用意したりするのは、簡単ではないでしょう。

遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士は、遺産分割調停・審判の手続き進行や書面の準備などをすべて代理してくれるので、依頼者が負担を感じることなく有利に手続きを進めやすくなるでしょう。

その他の遺産相続トラブルもフルサポートしてくれる

愛人の子供が相続権を有すると、さまざまな遺産相続トラブルが生じる可能性があります

たとえば、この記事でも紹介したように、遺留分侵害額請求権や相続回復請求権を行使されると、利益調整のために相手方との交渉が必要ですし、場合によっては、訴訟にも対応しなければいけなくなります。

また、愛人の子供の取り分を減らすために遺言書を用意していたとしても、被相続人が死亡したあとに、遺言無効確認訴訟を提起されるリスクもゼロではありません。

さらに、被相続人が不動産を所有していたときには、不動産の相続方法(換価分割、共有分割、代償分割など)について争いが生じて、手放したくない不動産の処分を迫られることもあるでしょう。

遺産相続実務に詳しい弁護士は、愛人の子供が相続権を有するせいで生じる可能性があるトラブル全てに対応してくれるので、円滑な遺産相続を実現しやすくなるでしょう。

愛人の子供の相続権が問題になりそうならすぐに弁護士へ相談しよう

被相続人に愛人の子供がいることが発覚したときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼をしてください

もし被相続人の子供が認知されていて相続権を有するなら、遺産分割協議への参加を求めたり、相続放棄・遺留分放棄などの交渉をしなければいけません。しかし、被相続人の不倫という心情的に納得できない事態を飲み込みながら愛人の子供とやりとりをするのは難しいですし、双方が感情的になってしまうと遺産相続トラブルが深刻化しかねないでしょう。

遺産相続相談弁護士ほっとラインでは、愛人の子供が相続権を有するような深刻な遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士を多数紹介中です。弁護士に相談するタイミングが早いほどスムーズに手続きを進めやすくなるので、速やかに信頼できる法律事務所までお問い合わせください。

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