被相続人が土地・建物を所有したまま死亡すると、複数の相続人によって不動産が共有名義状態になることがあります。
もちろん、遺産分割協議をスムーズに終わらせるには、それぞれの法定相続分に応じて不動産を共有で取得するのも間違いではありませんが、不動産の共有名義状態が継続したままだと、将来的に深刻なトラブルが生じかねません。
そこで、この記事では、相続で不動産が共有名義状態になってしまった人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- 不動産の共有名義を解消する具体的な方策とメリット・デメリット
- 不動産の共有名義状態を放置したときに生じるリスク
- 不動産の共有名義を解消したいときに弁護士へ相談・依頼するメリット
目次
相続で不動産の共有名義を解消する方法7つ
遺産相続によって不動産が共有名義状態になると、後述するように、さまざまなデメリットが生じます。
まずは、遺産相続で共有名義になった不動産の権利関係を整理する方法について解説します。
- 共有名義人で不動産全体を第三者に売却する
- ひとりの共有者に他の共有持分全てを買い取ってもらう
- 自分の共有持分だけを他の共有者に売却する
- 自分の共有持分だけを第三者に売却する
- 自分の共有持分を放棄する
- 不動産を分筆して単独名義にする
- 共有物分割請求をする
共有名義人全員で不動産を第三者に売却する
不動産全体をそのままの状態で第三者に売却すれば、相続によって取得した不動産の共有名義状態を解消できます。
ただし、不動産全体を売却するには、共有名義人全員の同意を得る必要がある点に注意が必要です。
というのも、不動産全体の売却はいわゆる「処分行為」に該当するため、これをおこなうには共有者全員の同意が要件とされているからです。
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
引用:民法|e-Gov法令検索
共有者全員の合意のもと不動産全体を売却すれば、共有者全員が不動産の面倒な共有関係から離脱できるでしょう。
ただし、共有持分権者のうちたったひとりだけでも売却に反対すると、不動産全体の売却は諦めなければいけません。
| メリット | ・不動産の所有や管理コストから完全に解放される ・不動産を中古市場の相場どおりに売却できる ・不動産全体の売却なので不動産中古市場でも購入者を募りやすい ・売却によってある程度まとまった金額が手に入るので、さまざまな金策として役立つ |
|---|---|
| デメリット | ・共有名義人全員が売却やその他の諸条件について同意をしなければ売却できない ・共有名義人全員で不動産の売却手続きを進めなければいけない ・不動産を手放さなければいけないので、「実家を残したい」「将来的に活用したい」などの希望は叶えられない |
ひとりの共有者に他の共有持分全てを買い取ってもらう
ひとりの共有者に他の共有持分全てを買い取ってもらい不動産を単独所有にすることで、不動産の共有状態が解消されます。
不動産が単独所有状態になれば、所有権者だけの判断で不動産を自由に処分・活用できるでしょう。
ただし、不動産の共有持分を取得する費用を負担できる共有者が存在しない場合には、共有者のひとりの単独所有にするのは難しいです。
| メリット | ・実家などの手放したくない不動産を第三者に譲らずに済む ・不動産が単独所有になるので、所有者だけの判断で機動的に売却、賃貸、有効活用、リフォームなどがしやすくなる |
|---|---|
| デメリット | ・不動産を単独所有する共有者が購入資金を負担しなければいけない ・結果として、不動産の共有持分権者全員で話し合いをして合意を形成する必要がある ・共有者の人数が多いと売却条件で争いがや不公平が生じる可能性がある |
自分の共有持分だけを他の共有者に売却する
自分の共有持分だけを他の共有者に売却すれば、少なくとも自分だけは不動産の共有関係から離脱できます。
たとえば、ABCの3人で不動産を共有しているケースを想定してみましょう。
このうち、Bが不動産の共有持分を手放すのを反対しているなら、AがCに対して自分の共有持分だけを売却すれば、「Aは不動産の共有関係から離脱し、BCが不動産を共有する」という状態を作り出すことができます。
共有者全員で不動産の処遇について意見が噛み合わない場合には、一部の共有者に買取を打診してみるとよいでしょう。
| メリット | ・売主と買主との間で売却について合意があれば取引できるので、ほかの共有者の意見に影響されない ・見ず知らずの第三者が不動産の共有関係に入ってこなくて済む ・不動産中古市場相場をベースに売却価格が決められることが多いので、比較的高値での成約を期待できる |
|---|---|
| デメリット | ・共有持分の購入について合意してくれる共有者がいないと売却できない ・これまでの関係性などを前提として不当に廉価での買取を迫られかねない ・市場相場とかけ離れた低い金額で売却したり贈与したりすると、税務署から贈与税を支払うように求められる可能性がある |
自分の共有持分だけを第三者に売却する
自分の共有持分を第三者に売却すれば、少なくとも自分だけは不動産の共有関係から離脱できます。
たとえば、不動産全体の売却に反対している共有者がいる場合や、他の共有持分を取得したい共有者が存在しない場合には、共有名義人だけで不動産の共有関係を解消することができません。
このようなケースでは、不動産中古市場で共有持分だけを買い取ってくれる第三者を募ったり、訳あり物件買取業者に共有持分だけを引き取ってもらったりするしかないでしょう。
| メリット | ・他の共有者の同意を得ずに売却して共有関係から離脱できる ・不動産買取業者に依頼をすれば、数日から1ヶ月程度の短時間で売却できる ・不動産買取業者に依頼をすれば、契約不適合責任を問われることなく、そのままの状態で売却できる |
|---|---|
| デメリット | ・不動産の共有持分だけを購入したがる一般人は少ないので不動産中古市場で購入者を見つけるのは難しい ・仮に購入希望者が見つかったとしても、共有持分は買取価格が低額になる可能性が高い ・見ず知らずの第三者が不動産の共有関係に入ってしまうので、残された共有者との間でトラブルが生じかねない |
自分の共有持分を放棄する
共有持分の放棄とは、自分の共有持分を無償で手放して他の共有者に帰属させる法的手続きのことです。
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
引用:民法|e-Gov法令検索
共有持分の放棄をする際には、他の共有者の同意は必要ないので、好きなタイミングで不動産の共有関係から離脱できます。
共有者のひとりが放棄をすると、その共有持分は他の共有者に移転します。ですから、他の共有者がいる状況でなければ、共有持分の放棄は認められません。
| メリット | ・他の共有者の同意を得ずに自由に放棄できる ・他の共有者や第三者との間で売却交渉などをしなくて済む |
|---|---|
| デメリット | ・他の共有者に贈与税などが課される ・対価を得ることなく不動産という高額な資産を手放すことになってしまう ・登記手続きを進めるには他の共有者全員の協力が必要になる ・ほかの共有者が存在しないと共有持分を放棄できない(早い者勝ちになってしまう) ・放棄をした年の固定資産税は支払わなければいけない可能性が高い |
不動産を分筆して単独名義にする
共有名義状態の不動産が土地の場合には、分筆して単独名義にする方法が考えられます。
分筆とは、登記簿上の一つの土地を複数の土地に分けて登記をする手続きのことです。
分筆をすれば、分筆後のそれぞれの土地が単独所有状態になるので、各所有者が自由に土地を処分・活用できるようになります。
ただし、分筆をするには以下のような手続きを経るなどの負担を強いられます。
- 土地家屋調査士に依頼する
- 法務局や市役所で、登記記録、公図、地積測量図、都市計画図、道路査定記録などの資料を収集する
- 現地確認をおこなう
- 土地の分筆案を作成する
- 測量結果と資料を照合する
- 隣地所有者や役所の現地立ち会い
- 境界標を設置して確定図を作成する
- 法務局で分筆登記手続きをおこなう
また、建物は分筆できないので注意が必要です。
さらに、分筆をすると土地ごとに条件が異なる可能性が高いため、共有名義人間で分筆方法について争いが生じることが多いでしょう。
| メリット | ・分筆によってそれぞれの土地が単独所有状態になる ・単独名義になることによって、各所有者が自由に処分・活用方法を決めることができる ・不公平感なく土地を分けやすい |
|---|---|
| デメリット | ・土地の分筆について共有者の過半数の同意が必要になる ・分筆すると土地面積が小さくなるので、資産価値が低下する ・境界争いが生じると分筆するまでに相当の期間を要する |
共有物分割請求をする
不動産全体の売却について他の共有名義人の同意を得られない場合や、共有持分の売却などが難しい場合には、共有物分割請求をおこなうもの選択肢のひとつです。
共有物分割請求とは、他の共有者に共有状態を解消するために分割方法などの諸条件についての協議を求める法的手続きのことです。
共有物分割請求は各共有者固有の権利なので、他の共有者は必ず応じなければいけません(共有物分割禁止特約が付されている場合は不可)。
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
引用:民法|e-Gov法令検索
また、もし共有者間の協議がまとまらない場合には、共有物分割請求訴訟を提起して、裁判所の介入によって終局的な解決を目指すことができます。
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
引用:民法|e-Gov法令検索
共有物分割訴訟を提起すると、判決によって現物分割・代償分割・換価分割のいずれかの方法が選択されます。共有者全員が不満のない方法で共有物を分割したいなら、競技段階での解決を目指すべきでしょう。
| メリット | ・共有物の分割に反対する人物がいても手続きを進めることができる |
|---|---|
| デメリット | ・裁判に発展すると相当の費用・時間がかかる ・自分が希望する方法で共有物を分割できるとは限らない |
相続で共有名義を解消せずに放置したときのデメリット3つ
遺産相続で取得した不動産が共有名義状態のままだと、以下3つのデメリットが生じる可能性があります。
- さらに相続が発生して不動産の権利関係が複雑になる
- 不動産を適切に管理できなくなる
- 第三者が不動産の共有関係に入ってくる危険性がある
これらのデメリットを被らないようにするには、できるだけ早いタイミングで不動産の共有関係を解消したり自分だけでも離脱したりするべきでしょう。
共有名義を解消しないとさらに相続が発生して不動産の権利関係が複雑になる
不動産の共有名義人のひとりが死亡すると、さらに相続が発生し、共有持分が複数の相続人へと細分化するおそれがあります。ひとつの不動産に相当数の共有名義人が存在する事態になり、権利関係が複雑化してしまうでしょう。
たとえば、ABCの3人で不動産を共有している状態で、Cが死亡したとします。Cには3人の法定相続人XYZがいて、法定相続分に応じてCの共有持分を取得した場合、不動産はABXYZ5人の共有名義状態に陥ります。
不動産の売却といった処分行為をするには共有名義人全員の同意が、短期賃貸借契約のような管理行為をするには共有名義人の過半数の同意が必要ですが、これらの同意を取り付けるのも苦労するでしょう。そもそも、共有名義人がどんどん遠縁の人間になってしまうので、連絡先がわからなくなってコミュニケーションを取り合うのさえ難しいという事態にもなりかねません。
共有名義を解消しないと不動産を適切に管理できなくなる
不動産の共有名義状態を解消できないままだと、誰が不動産の管理をするかが不明確になるリスクに晒されます。
すると、以下のように、不動産の維持・管理に甚大な支障が生じかねないでしょう。
- 誰が固定資産税や公共料金の基本料金などの維持費を支払うのかがわからなくなり滞納が生じる
- 庭木の剪定、屋根や壁の補修、敷地の清掃などが行き届かず、不動産が荒廃してしまう
- 不動産が適切に管理されない結果、資産価値が低下して、売り手が見つからなかったり売却価格が大幅に下落したりする
- 管理不全空き家や特定空き家に指定されると、固定資産税や都市計画税が最大6倍に跳ね上がる
- 土地・建物の荒廃が原因で治安が悪化するなどして周辺住民との間でトラブルが生じる など
第三者が不動産の権利関係に入ってくる
不動産の共有関係を解消しない状態が続くと、共有名義人のうちのひとりがいきなり不動産買取業者などの第三者に共有持分だけを売却するという事態が想定されます。
すると、不動産の共有関係に見ず知らずの第三者が介入して、さまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
第三者が共有関係に入ってくることで生じるトラブルの具体例は以下のとおりです。
- 第三者が嫌がらせ目的で売却などに反対するせいで不動産が塩漬けになってしまう
- 第三者が購入した共有持分を買い取るように強気な交渉をしてくる
- 第三者が勝手に建物の鍵を付け替えたり土地を占有したりする
- そもそも第三者の連絡先がわからず処分・管理などについての話し合いができない など
他の共有名義人に先手を打たれると残された共有名義人がさまざまなデメリットを強いられるので、できるだけ早いタイミングで共有名義人全員で解消方法について話し合いをするか、自分だけでも共有持分を手放してしまうのがおすすめです。
相続で不動産の共有名義を解消したいときに弁護士に相談・依頼するメリット3つ
相続で不動産の共有名義を解消したいときには、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
遺産相続トラブルや不動産の登記実務に詳しい弁護士の力を借りれば、以下のメリットを得られるでしょう。
- 個別具体的な状況を考慮したうえで、不動産の共有名義状態を解消する最適の方法を提案してくれる
- 遺産分割協議段階からサポートに入ることで不動産の共有名義状態の回避を目指してくれる
- 不動産の売却や有効活用などのサポートをしてくれる
不動産の共有名義を解消する具体的な方法を提案してくれる
共有名義の解消方法として何が適切かは事案の状況によって異なります。
たとえば、共有名義人の関係性が良好で、全員が不動産を所有し続けることにこだわりがない状況なら、全員で不動産を売却するのが合理的でしょう。
これに対して、共有名義人同士で不動産の処遇について考えが分かれており、円滑な話し合いも難しい状況なら、自分の共有持分だけを第三者に売却したり共有物分割請求権を行使したりするべきだと考えられます。
遺産相続実務に詳しい弁護士は、個別具体的な状況を総合的に考慮したうえで、不動産の共有名義状態を解消するための方法を提案してくれるでしょう。
遺産分割協議段階からサポートしてくれるので不動産の共有名義を回避できる
今回したように、相続で不動産が共有名義状態になってしまうと、さまざまなデメリットやリスクに晒されます。
そのため、本来であれば、不動産の共有名義状態が発生しないように遺産分割手続きを進めるべきだと考えられます。
遺産分割協議の段階から弁護士がサポートをすれば、各法定相続人の考えや希望、遺産の構成内容などを総合的に斟酌しながら、現物分割・換価分割・代償分割から適切な方法を提案し、共有分割を避けてくれるでしょう。
不動産の売却手続きなどのサポートをしてくれる
不動産の共有名義状態を解消する際には、売却や放棄、共有物分割請求訴訟の提起など、さまざまな専門的な手続きに対応する必要があります。
しかし、法務局や裁判所関係の手続きは、実務に詳しくない一般の人だけで対応するのは難しいです。
共有名義の解消を目的に弁護士に依頼をすれば、これらの実務的な手続き全てを代理してくれるので、依頼者は時間・労力を割かずに不動産の共有関係から離脱できるでしょう。
不動産の共有名義状態を解消したいときには弁護士に相談・依頼をしよう
不動産の共有名義状態を放置するのは危険です。
早期に共有関係を解消・離脱するための策を講じなければ、不動産の維持・管理コストの負担を強いられたり、第三者が法律関係に介入することによってさまざまなデメリットを強いられたりしかねないでしょう。
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