一部の相続人が被相続人から生前贈与を受け取っていた場合には特別受益が問題になります。
しかし、特別受益による持ち戻しが争点になると、深刻な遺産相続トラブルに発展する可能性が高いです。
というのも、生前贈与を受け取った相続人が特別受益の事実を認めないせいで、遺産分割協議が整いにくくなるからです。
ですから、特別受益が争点になるケースでは、持ち戻しを求める相続人側で特別受益を証明できる証拠を確保して、丁寧に遺産分割手続きを進める必要があると考えられます。
そこで、この記事では、特別受益を理由に不公平な遺産相続手続きを強いられている相続人のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
- ケースごとの特別受益の証明方法
- 特別受益が問題になった事案の遺産分割手続きの進めかた
- 特別受益が問題になる事案で弁護士に依頼するメリット
- その他、特別受益に関する基本事項や注意点
目次
なぜ特別受益の証明方法が問題になるのか
被相続人から特別に財産を譲り受けた相続人がいる場合には、特別受益者が取得した財産を遺産分割手続きで調整する必要があります。
まずは、特別受益に関する基本ルール、なぜ遺産分割手続きで特別受益の証明が問題になるのか、について解説します。
【前提】そもそも特別受益とは
特別受益とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が被相続人から受け取った特別な利益のことです。特別受益を受け取った人は、特別受益者と呼ばれます。
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
第九百四条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
引用:民法|e-Gov法令検索
特別受益を受け取った相続人がいると、ほかの相続人との間で不公平が生じます。
そのため、相続人間の公平を実現するために、遺贈・生前贈与された財産を遺産に持ち戻してから各相続人の相続分を計算するように制度設計されています。
特別受益者がいるケースの相続分の計算方法
特別受益者が存在するケースでは、以下の計算式に基づいて各相続人の相続分を算出します。
- 特別受益を受けた相続人:(相続時に存在する財産の価額 + 特別受益に該当する財産の価額) × 相続割合 – 特別受益に該当する財産の価額
- 特別受益を受けていない相続人:(相続時に存在する財産の価額 + 特別受益に該当する財産の価額) × 相続割合
たとえば、【法定相続人が長男と次男の2人、長男が特別受益を1,000万円受け取っていた、残された遺産総額は4,000万円】というケースについて考えてみましょう。
まず、特別受益者である長男の相続分は【(4,000万円 + 1,000万円) × 1/2 – 1,000万円 = 1,500万円】です。
次に、特別受益者ではない次男の相続分は【(4,000万円 + 1,000万円) × 1/2 = 2,500万円】と算出されます。
特別受益に該当する財産の具体例
特別受益に該当する可能性がある財産として、以下のものが挙げられます。
- 遺贈
- 婚姻のための贈与(持参金、嫁入り道具、結納金、挙式費用など)
- 養子縁組のための贈与(養子縁組の際の持参金など)
- 生計の資本としての贈与(進学資金の援助、不動産の無償使用、生命保険金、死亡退職金など)
どこまでの範囲の財産が特別受益に該当するかは事案ごとに判断されます。
たとえば、両親共に大学を卒業しており、子どもも大学に進学するのが当たり前の状況なら、大学進学費用は通常の支援に該当するため、大学の入学資金や学費などは特別受益には該当しない可能性が高いです。これに対して、子ども全員が高校を卒業してすぐに働いているような環境で、ひとりだけが大学院に進学し、そのときの費用を親が工面したというような事情がある場合には、大学院用の資金援助が特別受益に該当すると判断されることもあるでしょう。
特別受益はいつまでに主張するべき?消滅時効について
遺産分割協議自体に消滅時効制度は定められていません。
ただし、2019年7月1日から施行された改正民法では、被相続人が死亡して10年以上が過ぎてからおこなわれる遺産分割手続きでは、特別受益や寄与分の適用が排除されるようになりました。
ですから、一部の相続人が特別受益を受けた場合には、相続が開始してから10年以内に遺産分割協議をおこない、その場で特別受益について証明をする必要があります。
第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
引用:民法|e-Gov法令検索
特別受益を受けた人物が素直に認めない可能性が高いから
生前贈与などが特別受益に該当すると判断されると、特別受益者である法定相続人の取り分が目減りします。
これに対して、特別受益を受け取っていないほかの相続人は、特別受益が持ち戻されることで遺産の取り分を増やすことができます。
つまり、特別受益が問題になる事案では、相続人間で利害関係が生じますし、特別受益を主張された側は自分の取り分が減るので特別受益を認めようとしないということです。
そのため、特別受益が問題になる事案では、特別受益を証明できる客観的証拠を収集して、特別受益が認められる状況を作り出す必要があると考えられます。
特別受益に当たらない生前贈与との区別が争点になることが多いから
遺贈された財産は常に特別受益に該当するので、特別受益の該当性が問題になることはありません。
その一方で、婚姻のための贈与・養子縁組のための贈与・生計の資本としての贈与については、個別事情を踏まえて特別受益の該当性が判断されます。
たとえば、被相続人が数億円の資産・毎年数千万円の年収を得ている状況で、数百万円の大学進学費用をひとりの相続人に譲ったとしても、通常の範囲の贈与であると判断されて、特別受益への該当性が否定される可能性があります。
ですから、遺贈以外の方法で一部の相続人に財産が譲られたような事案では、特別受益に該当するほどの特別の贈与であったことを証明できるかがポイントになると考えられます。
特別受益の持ち戻しが認められないケースが存在するから
特別受益に該当するような贈与があったとしても、常に相続財産への持ち戻しがされるわけではありません。
というのも、被相続人が持ち戻しを免除する意思を示していた場合には、持ち戻しをせずに当該相続人が財産を取得できるとされているからです。
第九百三条
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
引用:民法|e-Gov法令検索
ここでのポイントは、持ち戻しの免除は以下のようなさまざまな方法でおこなわれるという点です。
- 遺言書による意思表示
- 契約書による意思表示
- メモなどによる意思表示
- 口頭による意思表示
- 20年以上連れ添った配偶者に居住用財産を贈与したときの意思表示の推定
- 黙示の意思表示
遺言書や契約書に特別受益の持ち戻しを免除する旨が記載されていた場合には、特別受益を持ち戻すかどうかが争点になる可能性は極めて低いでしょう。
これに対して、メモや口頭による方法で持ち戻しの免除が表明されている場合や、諸般の事情を総合的に考慮して黙示の意思表示があったかが争点になる場合では、メモが偽造されたものではないのか、被相続人が本当に口頭で免除する旨を発言していたのか、被相続人の生前の言動が持ち戻しの免除を示していたのかなどが争点になります。
特別受益の持ち戻しが認められるかどうかで各相続人の取り分が異なるので、特別受益の該当性や持ち戻しの可否を証明する方法が問題になります。
【種類別】特別受益の証明方法
ここからは、相続人のひとりが受け取った財産の種類ごとに、特別受益への該当性の証明方法について解説します。
- 現金・預貯金の生前贈与
- 不動産の生前贈与
- 不動産の無償使用
- 自動車の購入資金の援助、自動車の無償使用
- 生活費の援助
- 学費の援助
- 借金の肩代わり
- 事業用資金の援助
現金・預貯金を生前贈与された場合
被相続人が一部の相続人に贈与した現金・預貯金が特別受益に該当することを証明する方法として、以下のものが挙げられます。
- 贈与契約書など、金銭や預金を譲る旨を記載した契約書
- 一部の相続人に対して金銭や預金を贈与する旨の意思が記載された書類(日記やメモなど)
- 一部の相続人に対して贈与する動機があることを示す証拠資料(日記、メール、メモ、第三者の証言、生前の人間関係など)
- 預貯金が送金された事実を示す証拠(被相続人と相続人の預金通帳の控え、振込票の控えなど)
- 被相続人や相続人の資力を示す証拠
- 現金を手渡しで受け取ったとされる相続人の生活状況を示す証拠・証言 など
まず、預貯金を送金する方法で生前贈与された場合には、通帳などの物的証拠が残っているので、少なくとも金銭が授受された事実は証明できます。
ただし、預貯金通帳の送信履歴だけでは、贈与、貸与、売買代金の支払いなどの区別がつかないので、別途、生前贈与である旨を示す契約書やメモなどを用意するとよいでしょう。
また、現金の生前贈与は直接手渡しでおこなわれるケースも少なくありません。
この場合、預貯金通帳の送金履歴などの直接的な客観証拠は存在しないので、預貯金通帳の引き出し履歴、現金を受け取った相続人の経済状況、相続人側が高額の買い物や借金の一括返済などをしているかなどの物証を積み重ねる必要があります。
不動産を生前贈与された場合
居住用・事業用のどちらであるかにかかわらず、不動産を生前贈与された場合には、特別受益に該当する可能性が高いです。
不動産の生前贈与が特別受益に該当することを証明するときに役立つ証拠として、以下のものが挙げられます。
- 売買契約書や贈与契約書など、不動産を贈与する旨を記載した書面
- 一部の相続人に対して金銭や預金を贈与する旨の意思が記載された書類(日記やメモなど)
- 被相続人から相続人に購入資金が融資された事実を示す証拠(預貯金通帳の履歴など)
- 登記事項証明書
- 被相続人や相続人の資力を示す証拠
- 固定資産評価証明書
- 不動産査定書 など
不動産が生前贈与された場合には、登記事項証明書を確認すれば、贈与された事実を証明できます。
ただし、不動産が生前贈与されるケースでは、不動産売買の形式を借りながら、被相続人が相続人に融資をして不動産の購入資金に充てるというケースが存在します。
ですから、不動産の生前贈与が特別受益に該当すると主張する際には、登記事項証明書だけではなく、贈与の意思を示す契約書などの証拠書類を用意するのがポイントです。
不動産を無償使用していた場合
一部の相続人が被相続人名義の土地を無償で使用していた場合には、被相続人の財産から経済的恩恵を受けていたと考えられるので、特別受益に該当する可能性が高いです。
これに対して、被相続人名義の建物の無償使用は、標準的な扶養の範囲内のものなので、特別受益には該当しないと判断されます。また、相続人と被相続人が同居していたケースでは、少なくとも土地・建物の無償使用については特別受益には該当しません。
土地の無償使用が特別受益に該当することを証明する方法として、以下のものが挙げられます。
- 土地の使用貸借契約書や覚書
- 被相続人と相続人の資力を示す資料(預貯金通帳、家計簿など)
- 無償の使用貸借の経緯を示す資料(日記、メール、第三者の証言など)
- 固定資産評価証明書、路線価図、不動産業者による査定書
- 住民票や郵便物 など
不動産の無償使用の事案では、不動産市場で土地を貸し出したときの標準的な賃料相当額を基準に算出するなどの作業が必要です。
現金や預貯金の生前贈与のように目にみえる形でプラスの財産が移転しているわけではないので、特別受益の金額を算出するのが難しいと理解しておきましょう。
自動車の購入資金を援助されたり無償使用していた場合
被相続人に自動車の購入資金を援助してもらったり、被相続人名義の車両を無償で使用していたりする場合には、特別受益に該当する可能性があります。
自動車の購入資金の援助や無償使用が特別受益に該当することを証明する方法として、以下のものが挙げられます。
- 自動車の贈与契約書や覚書
- 被相続人と相続人の資力や送金履歴を示す資料(預貯金通帳、家計簿など)
- 無償の使用貸借の経緯を示す資料(日記、メール、第三者の証言など)
- 車検証
- 車両購入明細書
- 自動車の売買契約書 など
生活費の援助を受けていた場合
被相続人から親族として通常の扶助範囲を超える生活費の援助を受けていた場合、特別受益に該当する可能性が高いです。
生活費の援助が特別受益に該当することを証明する方法として、以下の証拠が役立ちます。
- 金銭の贈与契約書、生活費援助に関する覚書
- 被相続人と相続人の資力や送金履歴、これまでの援助総額、関係性を示す資料(預貯金通帳、家計簿、振込票の控えなど)
- 生活費の援助の経緯や実態を示す資料(日記、メール、第三者の証言など)
- 援助を受けた相続人の生活実態がわかる資料 など
学費の援助を受けていた場合
被相続人から一部の相続人が学費の援助を受けていた場合には、特別受益に該当すると判断される可能性が高いです。
学費の援助が特別受益に該当することを証明する方法として、以下のものが挙げられます。
- 金銭の贈与契約書、覚書
- 被相続人が相続人や学校に送金した事実を示す証拠(預貯金通帳、振込票の控えなど)
- 学費の援助の経緯や実態を示す資料(日記、メール、第三者の証言など)
- 援助を受けた相続人の生活実態や家計状態がわかる資料(家計簿など)
- 被相続人の社会的地位や経済状況に関する資料
- 被相続人と相続人などの学歴に関する資料
- 学費納入の領収書 など
借金を肩代わりしてもらった場合
被相続人が一部の相続人の借金を肩代わりすると、被相続人は経済的な支出をする代わりに、相続人に対する求償権を取得します。
そして、被相続人が一部の相続人の借金を肩代わりし、求償権を放棄したと認められる場合には、特別受益に該当する可能性が高いと考えられます。
借金の肩代わり、及び、求償権の放棄が特別受益に該当することを証明する方法として、以下のものが挙げられます。
- 肩代わりに関する契約書や覚書
- 被相続人が相続人に送金した事実を示す証拠(預貯金通帳、振込票の控えなど)
- 被相続人が直接債権者に返済した事実を示す証拠
- 完済証明書
- 被相続人と相続人の資力を示す資料(預貯金通帳、家計簿など)
- 借金を肩代わりした理由や動機がわかる資料(日記、メール、第三者の証言など)
- 求償権の放棄を示す資料や状況(求償権を放棄する内容を記載したメールや手紙、長年求償権を行使しなかったという事実関係、求償権を行使するどころか生活費の援助をしていたなどの実態) など
事業用の資金を援助してもらった場合
被相続人から事業用資金を援助してもらった場合、特別受益に該当する可能性が高いです。
事業用資金の援助を示す証拠として、以下のものが挙げられます。
- 贈与契約書などの合意書面
- 被相続人が相続人に送金した事実を示す証拠(預貯金通帳、振込票の控えなど)
- 被相続人と相続人サイドの資力を示す資料(預貯金通帳、貸借対照表など)
- 事業用資金を融資した動機や経緯(メモ、日記、第三者の証言など)
- 援助を受けた相続人の開業届
- 法人登記事項証明書 など
特別受益を主張するときの遺産相続手続きの流れ
遺産相続手続きのなかで特別受益を主張するときの流れについて解説します。
- 特別受益の証明に役立つ証拠を収集する
- 遺産分割協議で特別受益の持ち戻しを主張する
- 遺産分割協議が整わない場合には遺産分割調停を申し立てる
- 遺産分割審判に対応する
特別受益を証明する証拠を収集する
特別受益の主張を検討しているなら、遺産分割協議がスタートする前に、特別受益に関する証拠を確保してください。
ここまでで紹介したように、被相続人からの援助の内容によって、収集するべき証拠の種類は異なります。
被相続人の預貯金通帳などの証拠は収集しやすいですが、特別受益を受けた相続人の預貯金通帳など、特別受益者の手元にある証拠を集めるのは簡単ではありません。
特別受益が遺産相続手続きの争点になると相続人同士で意見がまとまらない可能性が高いので、証拠収集段階から弁護士に依頼をするのがおすすめです。
遺産分割協議で特別受益の持ち戻しを主張する
特別受益に関する証拠が揃ったら、遺産分割協議で特別受益の持ち戻しを主張します。
遺産分割協議とは、相続人全員が話し合いをして、誰がどの財産をどのような割合で取得するのかについて協議することです。
たとえば、財産の譲り渡しが特別受益に該当するのか、特別受益の金額はいくらなのか、どの範囲が特別受益に該当するのか、持ち戻しが免除されるかどうかなど、相続人同士で話し合いをし、合意形成を目指します。
財産を譲り受けた相続人を含めて、すべての相続人が特別受益の処遇について納得すれば、遺産分割協議書を作成し、合意内容どおりに遺産分割をおこないます。
しかし、特別受益が争点になる事案では、相続人同士で利害関係が衝突するため、スムーズな合意形成は難しいのが実情です。遺産分割協議が不成立に終わると、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てなければいけません。
そのため、遺産分割協議の段階での解決を目指すなら、協議段階から弁護士に依頼をして交渉を代理してもらうとよいでしょう。
遺産分割調停を申し立てる
特別受益について遺産分割協議で合意に至らない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員のサポートを借りながら相続人全員で合意形成を目指す法的手続きのことです。
各相続人は、調停期日に出席をして、特別受益に関する証拠を提出したり意見を述べたりします。調停委員は、提出された証拠や意見を確認したうえで、相続人全員が合意できるような折衷案を提案するなどのサポートをしてくれます。
遺産分割調停で特別受益について有利な解決を目指したいなら、有力な証拠や説得的な証言を準備する必要があります。遺産相続実務に詳しくない一般の人では適切な対応が難しいので、必ず弁護士に相談・依頼をしながら手続きを進めましょう。
遺産分割審判に対応する
遺産分割調停で特別受益について相続人全員が合意に至った場合には、調停調書が作成されて、調書の内容どおりに遺産分割がおこなわれます。
これに対して、遺産分割調停を経ても特別受益についての争いが終わらないときには、自動的に遺産分割審判に移行します。
遺産分割審判では、これまでに提出された証拠や証言などを総合的に考慮して、裁判官が特別受益の取り扱い遺産分割方法について審判という形式で終局的な判断を下します。
被相続人から財産を受け取った相続人がどれだけ持ち戻しを拒否していても、特別受益に関する証拠をしっかりと揃えれば、特別受益の持ち戻しが認められる可能性が高いです。
特別受益の証明方法を弁護士に相談・依頼するメリット6つ
特別受益の証明方法を弁護士に相談・依頼する6つのメリットについて解説します。
- 特別受益を主張できる状況かを丁寧に説明してくれる
- 特別受益を示す直接的な証拠がなくても間接証拠を駆使してくれる
- 弁護士会照会制度を利用できる
- 裁判所の調査嘱託・文書送付嘱託を活用してくれる
- 特別受益者との間の協議を代理してくれる
- 遺産分割調停・遺産分割審判などの裁判所関係の手続きを代理してくれる
特別受益を主張できる状況かを丁寧に説明してくれる
被相続人から一部の相続人に生前贈与をされた事実があったとしても、常に特別受益に該当するとは限りません。
たとえば、毎月相当な金額の生活費を援助されていたとしても、病気や障害などが原因でその相続人が仕事をしてお金を稼ぐことができず、かつ、被相続人側に相当の資産・収入があったような事案では、特別受益の該当性は否定される可能性があります。
特別受益を主張する余地がない事案において、一部の相続人が被相続人から援助を受けていたことを理由に特別受益の持ち戻しを求めたとしても、いたずらに遺産分割手続きが長期化するだけです。
遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に相談・依頼をすれば、相談者・依頼者が置かれた状況や被相続人による生前贈与の内容などを総合的に考慮したうえで、特別受益を主張する状況かどうかを丁寧に判断してくれるでしょう。
特別受益を示す直接的な証拠がなくても間接証拠を積み上げてくれる
特別受益への該当性を理由に持ち戻しを求めるには、生前贈与が特別受益に該当することを証明しなければいけません。
しかし、特別受益が問題になる事案では、贈与契約書のような直接証拠が見つからないケースが相当多いです。
このような事案では、被相続人の預貯金通帳から一度に高額が引き出された履歴を見つけ出したり、ある時点から相続人の生活が急に豊かになったという第三者の証言を集めたりする必要があります。
遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士に依頼をすれば、特別受益に関する間接証拠を丁寧に積み上げてくれるので、持ち戻しが認められる可能性が高まるでしょう。
弁護士会照会を活用して特別受益を証明してくれる
特別受益の証拠を相続人が個人で収集するのは簡単ではありません。
弁護士に依頼をすれば、弁護士会照会によって特別受益に関するさまざまな証拠を確保しやすくなるでしょう。
弁護士会照会とは、弁護士会を通じて、弁護士が受任した事件について、証拠・資料の収集や事実の調査のために、公務所や公私の団体に対して必要な情報も申し出を求める制度のことです。
第二十三条の二 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
引用:弁護士法|e-Gov法令検索
たとえば、弁護士会紹介を活用すれば金融機関に対して被相続人の口座の有無や取引履歴の開示を請求できるので、不自然な生前贈与の形跡を見つけやすくなるでしょう。
また、生命保険会社、証券会社、公証役場、不動産管理会社、学校など、特別受益の可能性がある各種団体に対する問い合わせも可能です。
裁判所に対して調査嘱託・文書送付嘱託を申し立ててくれる
弁護士に依頼をすれば、特別受益に関する証拠を確保するためにさまざまざ策を講じてくれます。
たとえば、裁判所に調査嘱託・文書送付嘱託を申し立てることによって、金融機関などから証拠書類の送付を受けたり調査を促したりできます。
特別受益を受けた人物との協議を代理してくれる
特別受益が争点になる事案では、遺産分割協議で相手方との交渉が難航する可能性が高いです。
そして、遺産分割協議が不成立に終わると、家庭裁判所に調停を申し立てるなどの対応を強いられるので、遺産相続手続きが長期化してしまいます。
遺産相続手続きの早期解決を希望するなら、遺産分割協議の成立を目指すしかありません。
弁護士に依頼をすれば、代理人として遺産分割協議に参加してくれるので、利益相反の関係に立つ特別受益者とも冷静に交渉を進めて早期の合意成立を期待しやすくなるでしょう。
遺産分割調停・審判といった裁判所関係の手続きを代理してくれる
特別受益に関する争訟が遺産分割調停・審判にまで発展すると、家庭裁判所の手続きに対応しなければいけません。
しかし、家庭裁判所の手続きに対応するには期日への出席が必要ですし、申し立ての書類・証拠などの準備にも追われます。一般の人だけでこれらの作業をおこなうのは簡単ではないでしょう。
弁護士に依頼をすれば、裁判所関係の手続きの大半を代理してくれるので、依頼者は定期的に法律事務所で打ち合わせをするだけで済みます。
特別受益の証明方法で悩んでいるなら弁護士に相談しよう
特別受益の証明方法がわからず困っているならできるだけ早いタイミングで弁護士に相談してください。
弁護士に依頼をすれば、個別事案の状況を踏まえて特別受益への該当性を判断したうえで、必要な証拠を確保してくれるでしょう。
遺産相続相談ほっとラインでは、特別受益などの複雑な遺産相続トラブルへの対応が得意な弁護士を多数紹介中です。遺産相続トラブルは初回の相談料を無料に設定している法律事務所も多いので、速やかに信頼できる弁護士までお問い合わせください。